第53号 08.4月号
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『筋肉は必要に応じて作られた』
折田 充
ヒトはその起源を10万年前のアフリカのホモサピエンスに遡るようですが、他の生命物と同様に、生命を維持し子孫を残す本能に従い、そのことに必要な筋肉と脳を発達させながら進化をしてきました。命を守るために、狩をし、漁をし、採集をおこないながら、ヒトは身体をその目的に合わせて筋肉を進化させながら生活してきたのです。筋肉を進化は筋肉だけではなく脳の発達と同時進行で行なわれたのではないでしょうか。もっと高度に筋肉を動かせないかと考えて訓練をしていったのでしょう。獲物をより上手に捕らえる方法を考えて身体を訓練したり、より多くの作物を得るように工夫したりしてきました。
現在のヒトは過去のヒトのそのような努力の証としての身体を受け継いでいます。
 21世紀の現代からヒトの進化を考えると、過去に例のないほど急激な行動パターンに変革が起きています。科学技術の発展にともなう“楽な生活”に負うところが大きいのですが、ヒトの日常生活で使う筋肉に、使う筋肉と使わなくなった筋肉との格差が大きくなってきています。ヒトの筋肉にも格差問題がおこっているのではないでしょうか。この後何万年かすると、ヒトの体型は大きく変わると思います。
さて、数万年先のことはさて置き、体調が思わしくなくて困っているのは現在のヒトの我々なので、それをどう解決するか考えなければなりません。
 筋肉の大原則に「使わない筋肉は衰えて硬くなる」という、廃用性萎縮の原則があります。脳梗塞などでマヒが生じ、動かさなくなると手・腕や脚が細く硬くなるのが端的な例でお分かりになると思います。脳梗塞のような症状がなくとも廃用性萎縮は軽いですが起きています。日常生活の中で15年・20年前と比べて急激に使わなくなった筋肉に起きます。どのような筋肉を使わなくなったかは、依然していた動作で今日どのような動作をしなく無くなったかを考えればいいでしょう。若い年代のヒトには生まれた時から今と同じような生活様式だったのでしょうが、中高
年以上のヒトには思い当たる動作がたくさんあると思います。脳も使わなくなると痴呆が早く起こると言いますので、筋肉と同様に毎日ちょっと働かせることが元気で長生きするために大切なことです。
 例えば、腕を上に上げる動作では、はたき掛け、窓の掃除、鴨居の掃除、洗濯物を竿竹に干す、などがあります。しゃがむ動作には、和式トイレ、洗濯板を使った洗濯、かまどの火越し、などがあります。足の指を使う動作には、鼻緒の付いた下駄や草履で歩く動作があります。また、団扇を使う動作や上を見上げる動作もなくなりました
 日常生活の中でこのような動作がなくなり使わなくなった筋肉をどのようにして運動させるかを考えなければなりません。運動するといってもジムやスポーツセンターなどに通ってアスリートのように鍛えるという意味ではけっしてありません。日常生活の中で毎日少し動かす程度でいいのです。筋肉は毎日少しずつ動かしていると急激に衰えることはありませんし、筋肉のスジが硬く突っ張ることもありません。1週間に一度一時間連続して動かすよりも、毎日10分動かす方が筋肉やスジにとっては良いのです。脚が硬くなった方で、運動不足を注意されると1時間もウォーキングしようとされる方がいますが、硬いままの筋肉の状態で長時間動かすと、さらに疲労物質が溜まりさらに硬くなって逆効果になります。硬い状態はもう血行が悪くなっていることを示していますので、まず足湯や腰湯で温めてたり、ふくらはぎ・膝裏までの足もみやマッサージをしたりして血行を改善することが先です。ある程度筋肉が柔らかくなってからから運動を短時間から始めましょう。
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簡単な家の中でできて普段動かさない筋肉を使う動作を次に紹介します。
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