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『最大酸素摂取量を高める』
《元気で老後も過ごす秘訣》
最近読んだ本で『いつまでも老いない脳をつくる10の生活習慣』(石浦章一著、WAC出版)がありますが、とても分かりやすいことが書いてありますのでご紹介します。
20歳をピークに人の身体はどんどん老いへ向けて進んでいきます。これは誰でも同じです。しかし、普段の心がけで健康を維持して、脳がフルに発揮できるような生活が送れます。その秘訣を10の基本として挙げてあります。
 1.週に2・3回以上、一回30分以上運動をする。
 2.食生活のバランスに注意し、食べ過ぎない。
 3.ストレスをうまく受け流す。
 4.人とのコミュニケーションのある生活をする。
 5.好奇心をもって、新たなことに挑戦する。
 6.学習習慣を続ければ記憶力は保たれる。
 7.目標を持つ。
 8.自分に報酬を与える。
 9.本を読む習慣を維持する。
 10.意識的に段取りする。
だれでもピンころりと死を迎えることを望むと思いますが、そのためには日頃の生活の心がけが大切です。
 その第一の基本に、「週に2・3回以上、一回30分以上運動をする」があげてありますが、体力を維持することが体はおろか脳にもいいのです。
体力には@「行動体力」とA「防衛体力」があります。
@は筋肉の力、敏捷力、柔軟性、持久力などです。普通に言う体力のことです。Aは病気に対する免疫力、精神的なストレスなどに対する抵抗力です。
「行動体力」の基礎は「全身持久力」、「スタミナ力」ですが、この基礎の力を支えているのが「最大酸素摂取量」なのです。
日常生活で、通勤・通学で電車やバスでもし長い間経っていたり歩いたり、階段を上り下りしても、疲れを感じずに持ちこたえる力は全身持久力です。この全身持久力が寿命につながります。健康で長生きできるのは全身持久力がある人です。逆に長生きできない人は全身持久力がない人です。「全身持久力」が高ければ、呼吸循環系の機能も高く、さらには内分泌系の機能も優れていて、免疫力などの防衛体力も高いことになります。
まず、大切なものがその全身持久力を支える「最大酸素摂取量」であり、もう一つが「筋力」です。この最大酸素摂取量と筋力の二つの共通点は、放っておけば年齢とともにどんどん下がっていくことです。体力が落ちるだけでなく、脳力も下がることになります。まず、年をとっても体力を維持することは、体も脳も老化させないために必要なことです。
最大酸素摂取量とは、体重1キロあたり1分間に最大何ミリリットルの酸素摂取量であるかということです。この値が大きいほど「全身持久力が優れている」ことになります。酸素は血液に含まれて体内を運ばれますが、心臓から1回送り出される血液量(心拍出量)が多いほど酸素量は多くなります。心拍出量は運動時に最大となり、最大酸素摂取量も増えることになります。
最大酸素摂取量が少なくなることは、車に例えるとエンジンのパワーが落ちるようなものです。しかし、人と車のエンジンの違いは、人の体は日頃運動をしていると、落ちても日頃運動をしていない人と比べて高水準に維持できることです。その運動は最大酸素摂取量の50〜60%の強度でいいのです。そして1日おきに週に3回程度の運動がもっとも効果的です。最低でも15分、効果的には30〜60分おこなうことです。血糖コントロールやインスリン感受性の改善効果は1回の運動で47〜72時間(2日から3日間)維持するといわれます。高血圧の改善、高脂血症の予防、動脈硬化、骨粗しょう症の予防、脳卒中の予防にもなります。
最大酸素摂取量とともに大切なのが筋力です。年とともに筋力は衰えますが、一番衰えるのは脚の前面の筋肉(大腿四頭筋)です。歩いたり階段を上るなど、太腿を前に出したり膝を上げたりするときに使う筋肉です。次に腕の筋肉ですが男性の方が極端に落ちます。しかし、高齢になっても筋力は鍛えれば強くなります。(森光子さんを例にとると分かるでしょう)3ヶ月程度の筋肉運動を続けると筋力は増えます。筋力は80才代になってもいくつになってもふやすことができます。逆に寝たきりでいると若い人でも動けなくなります。2週間で7%も衰えるのでベッドから起き上がれなくなるわけです。現代生活で寝たきりと同じような状態があります。それは一日中パソコンの前で座りっぱなしの姿勢です。恐いことです。
日常的に、歩いたり、筋肉運動をしたりするなど体を動かすことをどの位しているかで、老いない脳、老いない体をつくることができるかが決まります。その時に問題となるのが気力です。年をとるに従って体を動かそうとする気力は薄れてきます。骨折、脚や腰の手術、内臓の手術の後に必要なリハビリを行なう時には特に気力が必要です。車椅子生活になったり寝たきりになってしまうと、ますます筋力は落ちますし、最大酸素摂取量もどんどん低下し、体だけでなく脳の血流も悪くなります。若いときもそうですが、転んで骨折をしたり寝つくような病気にならないように極力注意することです。
お坊さんに長生きでボケない人が多いですが、お坊さんはあえて運動をしているわけではありませんが、日頃の生活で自然に体を使っているのです。朝早く起きて庭掃除、草取り、お経を読み、座禅を組んだり、する日常生活をしています。高齢になっても定年などなく死ぬまで現役生活をしています。高齢になって一番悪いことは、家から外へ出ず歩かなくなってしまう、体を動かさなくなることです。
石浦章一
1950年、石川県生まれ。
東京大学教養学部基礎科学科卒業、理学博士。
遺伝性神経疾患の分子細胞生物学研究を通して難病の解明を研究中。
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