スプール割れ
 スプールの割れについてです。

樹脂スプール
 たまに「割れる」といわれることがあるのは、主に樹脂スプールです。どんなものが割れるのか、割れる原因は何なのかを書いてみます。

シマノBB-2
 シマノが最初(70年代)に作ったベイトリール・スピードスプールBB(旧BM)の2番のスプールは樹脂材料でした。これは、割れてしまうことがあります。原因は糸を巻いたときの圧力です。もちろん、開発時には強度テストをします。にもかかわらず・・・。

 3年くらい経ったある日、スプールエッジが振れているように見えたので糸を解いたら、亀裂が走っていました。

 樹脂スプールは時間をかけて亀裂が成長して、割れるのです。だから、メーカーの強度テストでわからないことがあったのです。

 もちろん、高温に放置したりして促進試験もしますが、なかなか何年か先のことは再現できないものです。

カーディナル
 これも時々「割れる」という人がいます。伝え聞いたところでは、ごく初期のものにポリアセタール(日本ではジュラコンの商品名が一般的)を使っていて、それが割れたようです。

復刻44
 昔の44は持っていないのでわかりませんが、復刻44(90年ころ)は対策がしてあったようです。一見樹脂の黒に見えますが、よく見ると表面のつやのある黒は塗装です。

ガラス入りナイロン
 塗装の回っていない裏を見ると、ガラス繊維が浮いているように見えます。おそらく一般的にスピニングのスプールやボディーに使われるガラス繊維入りナイロンを採用することで、対策していたようです。

 これなら割れないはず。割れるというのは70年代の初期モノの話のはずです。割れるんじゃないかと、高いアルミスプールを買った方・・・読まないほうがよかった?

いろいろあったのよ
 学生時代に買ったカスタム1000です。これを持っているとシマノに入社した当時言ったら「ほー、まだ割れとらんのか」と同じ部署の人に言われました(おい!)。

 この手の「カーボンスプール」も、初期にジュラコンやABS樹脂を使って割れが生じたことがあったそうです。BBのところで書いたとおり、樹脂の耐久性は時間をかけないとわからないから、大メーカーでもこういうことがあったのです。

 私が入社したころはすでに、ガラス繊維入りナイロンになっていて、問題は解決していました。もちろん現在店頭にあるモデルは、すべて問題なしです。

エアスプール
 ダイワのエアスプールはABS樹脂(アンチ・バックラッシュ・システムじゃなくてアクリロ二トリル・ブタジエン・スチレン樹脂)のはずです。上に書いたとおり、普通に使うと割れてしまう樹脂です。

 でも、これ割れないのね。ABS樹脂が割れるのは、力を受けたとき表面に微細な亀裂が走る性質からなのだそうです。ところが、その特殊な表面組織ゆえに、樹脂でありながらメッキが乗るのです。

 でもって、メッキしてしまうと力を受けても表面に亀裂が走らなくなる。すなわち、エアスプールはABS樹脂の特性を知り尽くした人の発明だというわけです。

注:以上はすべて人からの受け売りなので、難しいこと聞かないでね。

割らないためには
 現在のリールは大丈夫とはいえ、守ったほうがいいのが糸の太さです。細い糸ほどスプールにかかる力は大きくなります。メーカーは、一番細い表示ラインでの使用を保障するように、強度テストしているはずです。

 表示より細い糸を使わないこと、使うにしても下巻きは太目のものにすることが大切です。

自分で巻きなさい
 私がシマノにいたころ、カーディナルCシリーズのスプールがアメリカで割れているという話がありました。でも、これは「割れる」んじゃなくて「割って」たのです。

 原因はショップによる機械巻き。アメリカでは、リールを買うと、スプールをモーターに付けて、店員が巻いてくれるのだとか。店員は手が熱くなるのでタオルで糸を持ちます。当然テンションがむちゃくちゃかかります。

 アメリカは糸が安いですから、下巻きなしで4LB(ストレーンなら1.2号)を300yds(C3の場合)巻くこともありえます。そんなことをされたら、スプールはひとたまりもないでしょう。

 日本でも、似たような「サービス」をする店があるみたい。リールを買ったらショップで糸を巻いてもらうのが当然と思っている人もいるとか。

 知りませんよ、スプール割れても。スプールは割れなくても、糸はつぶれてヨレヨレでしょう。

 自分の指でつまみ、熱を持たない程度のテンションで巻きます。そもそも、自分のリールに自分で糸を巻かないなんて、釣り人として・・・。

 復刻33は、同44のようにガラス入り材料になっていませんが、それでも私のリールは割れていません。90年ころに買って、ずっと糸を巻きっぱなしのスプールもありますが、なんともありません。上に書いたシマノ・カスタム1000も割れていません。太目(3号前後)の糸を下巻きに使い適度なテンションで巻けば、そうそう割れるようなことはないということです。

 細すぎる糸を(下から)巻かない、適度なテンションで巻く、この2つを守れば樹脂の特性がわからなかった大昔のリール以外は大丈夫ということです。

 44のスプールの例を見ても、「壊れる」という風評はあてにならないものです。メーカーとしても「材質変えました」といったら、前のものが割れるということを認めるようなものですから、おおっぴらに宣伝するわけにもいきません。難しいところでしょう。

 それと、スプール割れに限りませんが、誰もが情報を発信できるネットでは特に、「壊れた」と言っている人がどんな扱いをしたのかを、十分見極める必要があります。(2005/8/8)

Break ? Broken ?