Back number 83

 これはですね、現在発売されている『シーバスハンティング』に載っているがまかつシーバスロッドのカーブ写真を撮っているところです。前は三重県の霞埠頭まで行って撮っていましたがバック紙を買ったので室内で撮ってます。つくづく今まで10数年なんということをしていたのかというところ。 (2017/4/2)

 霞埠頭で撮っていたときは片道2時間かかっていました。行きに2時間、撮影2時間、帰りに2時間、帰ってきて画像を合成するのに2時間で1日仕事でした。しかも、メーカーの都合で竿が一時にそろわないと2回3回に分けて行くとか大変でした。

 風も脅威でした。朝出発するときによくても日が上がって気温が上がると(小学校で習った海風陸風の原理で)たいてい風が出てきます。現地に着いたころから風が出て糸がキーンと鳴りはじめます。撮影は時間との戦いで、焦って穂先にラインが絡んだまま巻いて磯竿の穂先を折ってしまったこともありました。ルアーロッドを飛ばされて傷をつけてしまったこともありました(もちろん両方とも自首しました)。

 で、ようやく昨年だったか一昨年だったかに買ったのがこれ。磯竿やアユ竿はともかくチヌのイカダ竿くらいはなんとかならんかとネットで探しました(カメラ屋さんで相談すればよさそうですがデジタル化の波で当時デジイチを買ったところもなくなっちゃいました)。最初はこれでも外で撮っていました。ところが、これが竿単体以上に風に弱い。ちょっとでも風が吹くと大変なことになってしまいます。

 で、こないだのタイラバの本から室内で撮るようになりました。室内だと被写体までの距離が取れないため写真の98のシーバスロッドになると焦点距離が35くらいになってしまいます。肉眼に近いのは焦点距離50くらいのはずなので、35では広角過ぎて絵が歪んでいることになります(屋外撮影は85とか135とかレンズのいちばん望遠側を使います)。上の写真で柱がまっすぐに写っていないのはそのためです。でも、誌面を見てもわかる通り、カーブの傾向はわかりますし、実用上はいいんじゃなかろうかと。

 思えばカーブ写真を撮り始めたのはかれこれ16、7年前、『磯釣りスペシャル』の連載が始まるときでした。今だから言いますが(と言いつつ前書いたような記憶もあるが)、最初連載の話が来てテーマが磯竿と聞いたときどうやって断ろうかと思いました。

 私は基本ルアーの人で磯の釣りはやりません(たまに磯もチヌもやると思っている人がいるので本当はこんなことを書くのはヤバいのだが)。ロッドの製造のことは工場を見たこともありますし、ある程度は知っていますが、完成したロッドの中身がどうなっているかは作っているメーカーにしかわかりません。リールならバラせば分析できますが(これも最近はできないが)、ロッドはそうはいきません。

 でもやっぱり断るわけにもいかないので考えたのが、せめてカーブを写真で見てもらおうということです。で、うちに転がっていたベニヤ板をノコギリで切って作ったのが、写真に写っている竿立て器でした。

 ここまできたところで困ったのが撮影場所でした。5mの磯竿を斜めに伸ばしてバックになにもない所、しかも被写体からある程度距離をとれる所というのがないんです。最初はうちの前にある金生山の上で撮ろうと思ったのですが、カメラを水平にセットすると、当然のことながらカメラよりも高い位置にあるものはすべて写ります。標高数十メートルの金生山から東にカメラを向けると御嶽山か何山か知りませんが遠くの山脈がバックにばっちり入ります。

 なにか倉庫みたいな建物の壁は、と考えてみたものの、これまた5mの竿を斜めに置いて窓ひとつないフラットな壁をもつような建物はありません。唯一根尾川・揖斐川合流点にあるごみ焼却場の塀みたいなところでなんとか撮れそうでしたが、やっぱり美しくありません。

 そして行き着いたのが当時シーバス狙いで通っていた(思えばいまだチヌとコチとメッキしか釣ったことがない)霞埠頭の先端だったのでした。こうして業界初(?)のカーブ写真が生まれたのでした。

 磯スぺの連載はけっこう続いて、写真データも残っています(全然関係ないけど今どき資料はこういうふうにデータ化するのに森友関係の資料が全部破棄されてるってよくあんなウソが通るもんやね)。だから作ろうと思えば『TACKLE RESEARCH [スピニングリール編]』の磯竿版みたいなのも作れます。でもあのシリーズは基本タックルが現行品のときに見ないと仕方ないです(だから長さの割に価格を落として読み放題にもしているのね)。ロッドはリール以上にサイクルが短いのでなおさらです。それに、『TACKLE RESEARCH [磯LBスピニング編]』、『TACKLE RESEARCH [チヌリール編]』のセールスがとんでもなく悪い(読み放題でもほとんどDLされない)のを見てもまず売れないでしょう。

 キンドル本の話が出たついでに次は『ユキ』の大ゴケにもめげず『アキ』というのを書いておるのだが、表紙が描けんので困っとるんだ。個人の書いた電子本小説は供給過剰でとんと売れんのでとても外には出せんのだわ。

 渓流解禁はとっくに過ぎたのにいまごろスイミングフックを巻いています。前も書いたけど、3月って釣れないもんね。同じ釣れないなら話のタネに九頭竜川とかもありですけど、最近釣れない釣りに行く気がなくなってきまして。あの最初で最後の67cmは2010年でした。あのときはクルマをかえてETCがついたんで1000円高速で行ったんだったっけ。 (2017/3/25)

 いつも行っている釣り具店でチヌバリは黒、銀、金だけだったと思うのですが、最近行ったら赤がそろっていたので、赤いのを巻いてみました。銀と黒だと黒のほうが実績があり、スプーンの尻で振り回されているはずのフックをかなり高い確率で口にくわえて上がってきます。赤は管釣りで使うと明らかに強いので、スイミングフックも赤で作ったらかなり期待できるのではないかと。

 フックはがまかつ製。がまかつといえばこないだとんでもないところで名前を聞きました。BSフジにプライムニュースという番組があって、たまたまチャンネルを合わせたら北朝鮮問題をやっていました。

 この日は民進党の石井一代議士が出ていて、90年代の金丸訪朝団のことを話していました。石井氏は当時の金日成主席(まだ初代だったんだ)に手土産として釣り竿を持って行ったと言っていました。

 「釣りが好きやて聞いていたから、あの、なんや、がま、がまなんとかいう高級品の、一番高いの買ってこいいうて15万くらいの買ってこさせて、持ってったんや」

 「がまかつですか?」

 「がまかついうんか。あんた釣り詳しいんか」

 「いやまあ、ここで釣り談義してもしょうがないんでお話を続けてください」

 てな具合でした。90年代の初めで15万円の竿というとたぶんアユ竿でしょう。アユ竿は数ある竿のなかでも軽量化命で作ってありますし、まして高級品は上級者がわかって使う竿ですから、それこそ限界設計。素人にいきなり使わせたら、すぐ折れちゃうんじゃないでしょうか。それ以前に8mも9mもある竿をプレゼントされても、普通の人は使えんぞ。

 ところで、ここで知ったのは石井一氏は金丸訪朝団の中心だったということです。

 で、思い出したのは、何年か前村木厚子氏という女性官僚が無実の罪で1年近く拘留された郵便不正疑惑です。あのとき検察が狙っていたのは、背後にいる石井一氏だったという説がありました。

 で、芋づる式に思い出したのは、アメリカ様にはむかった政治家は検察&マスコミにはめられるということ。田中角栄、金丸信、小沢一郎、いずれも中国もしくは北朝鮮と関係を改善しようとした政治家です。ロシアと近かった鈴木宗男も同じパターンでしょう。そして、石井一氏も同じ理由ではめられかけたのかなと思えてきます。

 アメリカから見れば日本が適度に隣国と対立していてもらわないと基地を置いておけません。しょせん敗戦国・属国たる日本の検察やメディアをコントロールするのも可能のはず。じゃまな政治家はつぶしますわな。

 で、最近思うのは、最初メディアがガン無視していた森友問題がここのところいきなりトップニュースになったこと。あれは、アメリカが安倍政権を見切ったせいじゃないかなんてのは陰謀妄想でしょうか。

 アメリカから見ればタカ派安倍政権は都合のいい存在だったはず。でも、あの幼稚園問題を見ると、このままいくと日本は70年前と同じ方向に走ってアメリカでもコントロールできなくなるんじゃねえかって思っても不思議はないでしょう。いまなら野党政権にはならないから、こりゃいったんつぶして石破あたりに首挿げ替えるかみたいな結論に達して、メディアにGOサインでも出したんじゃないですかね。

 さすがに70年前みたいにはなるまいっていう人もいそうですが、昨日明らかになった道徳教科書の検定で「パン屋」が「和菓子屋」に書き換えさせられたのを見たって、「ストライク」や「ボール」を「よし」「だめ」に置き換えていた戦時中そっくりです。そらアメリカでなくてもヤバいと思うでしょう。

 2017年3月5日美浜のメバルです。この日は揖斐川上流漁協の年券を買いに行ったのですが、いままでの記録を見ると3月中はほとんど釣れていないので、年券だけ買ってそのまま峠を越えて日本海に行きました。 (2017/3/19)

 一応暗くなる前にこの倍くらい(でも十分小物じゃが)のが釣れたのですが、カメラを車に忘れていて撮れませんでした。渓流はフィッシングベスト、海や管理釣り場はウェストバッグを使っていて、この日は川もやるかもしれないと持参したフィッシングベストのほうに防水コンデジが入れっぱなしになっていました。

 ラインカッターやプライヤー、PE用のノッターなど、ときどきこういうことがあるのが困ったもんです。さすがにラインカッターとプライヤーは両方に付けていますが、カメラを両方に入れるのは難しい。

 タックルはこの前朽木渓流魚センターで使ったのと同じFS53Jと308です。明るいうちにきた15cmくらいのメバルでも満月になってなかなかのもんでした。それにしても、ようここまでめためたな調子の竿を出したもんです。

 308に巻いてあるのはラパラのナイロン0.5号2.5lbです。去年408を持っていったときには同じスプールにスモールゲームFC0.5号1.5lbを巻いていました。今回ナイロンに替えたのは、フロロを巻いた釣行のあとスプールを見たらエッジにラインが叩いてできた跡がぐるっとついていたからです。

 傷というほどのものではありませんが、やはり比重が高くて重いフロロカーボン(比重1.7はマグネシウムと同じだから言いようによっては金属並みに重いということにもなる)はスプールにダメージを与えるのだなあと思い、ミッチェルに巻くのはやめました。

 フロロは、サンクチュアリの安藤マネが最近使っていると言っていました。仕事柄毎日池に出て使うため、ナイロンは吸水ですぐダメになってしまうそうです。でもフロロは吸水性がないためずっと使えるとのこと。ただしトラブルが多いため1.5lbくらいでないと難しいとも。

 でも、ミッチェルは仕方ないので、ナイロンにラインコートスプレーを吹いて吸水を抑えつつ使うことにしました。めんどくさいけど、それなりにもつし。

 これはなにかと言いますと、ミッチェル308に取り付けた304のラインガイドを外すために作った冶具です。普通の人にはなんのこっちゃわかりませんわな。 (2017/3/11)

 何年か前、308に使うため304の固定式ラインガイドをアメリカのミッチェルパーツドットコムというサイトから数本取り寄せました。なぜ本来のタングステンカーバイドではなく真鍮に硬質クロームメッキしたこちらにしたかというと、硬質クロームメッキのほうがラインに優しかろうと思ったからです。

 爪を立ててひっかいてみるとわかりますが、タングステンカーバイドは明らかに摩擦が大きいです。固定が甘い個体だと高負荷巻き上げで固定部がスリップしてギーッと音がすることがあるほどです。

 で、70's308とか60's408にはこの硬質クロームガイドをつけていました。ただ、先端が太くて308につけると少し食いこんでしまいます。それで、これまで外すことができませんでした。外せないと糸溝ができたとき当たり面を変えられないのでそのまま終わってしまいます。

 そんなわけで、いままであまり使っていなかったのですが、なんとかならんかとない頭をひねって作ったのがこれ。金属ではラインガイドを傷つけてしまう恐れがある(硬質クロームは硬くても下地の真鍮がへこむ)ため、エポキシ接着剤に付属しているヘラのお尻を使いました。

 これに金ノコの歯で切れ目を入れて3mmの丸ヤスリで間隔を広げてラインガイドの細い部分がぎりぎり入るようにしました。これを差し込んでぐりぐりやるとラインガイドは外れ、部品も大丈夫。これなら溝ができてもラインガイドを回してずらせばまた使えるし、定期的に当たり面を変えてやれば溝ができるのを遅らせることができるはず。

 なぜ固定式ラインガイドのほうを使いたいと思ったかというと、回転バランスとローターの軽さではこのタイプが一番いいからです。

 このあと、70's408などは同じようなワンピースベールに回転式ラインガイドをつけたものになりますが、回転バランスがかなり悪くてアップストリームキャストしてフルスピードで巻くと、ロッドティップが10cmくらいぶれるほどです。

 80年代以降はその後最後まで使われた分割式のベールになります。このタイプはきわめて初期の308Aを除いてローターのカウンターウェイトが大型化されていてバランスは改善されます。しかし、総重量が増えてしまい、巻き感度のみならず振りバランスまで悪くなっています。

 固定式だとラインが心配になりますが、ロッドのガイドは全部「固定式」なんだし、負荷の小さい釣りなら大丈夫のはず。硬質クロームメッキは爪でひっかいた感じだとSiCよりスムーズで、溝さえできなければラインには相当優しいのではないかと思います。


 2017年2月25日朽木渓流魚センタールアーフィールドのニジマスです。先週載せたイワナの前に釣った魚です。このサイズになるとFS53Jでは完全にコントロール不能で飛びまくり走りまくられました。 (2017/3/6)

 フェンウィックを買うとまたまたガイドを換えたくなりそうですが、前に書いたようにこのロッドに関しては1本目でさんざんやりまくったのでその心配はありません。

 その改造で不思議だったのはニューコンセプトにするとかえって投げにくくなったことです。いままでもスローテーパーで軟らかいロッドで同じことを何本か経験しています。

 理由を考えてみたところ、ロッドブランクの慣性の問題ではないかと思えてきました。

 キャスティングは、バックスイング時にルアーの重みでロッドを曲げ、曲がりによって蓄えたエネルギーでルアーを飛ばします。この曲がりが、スローテーパーのロッドの場合できにくいのかもしれません。

 3gのルアーを投げるときバックスイングで瞬間的に50gの力がロッドにかかるとします。50gのオモリをロッドにぶら下げたならば、ファーストテーパーのロッドもスローテーパーのロッドも、50g分の曲がりを示すはずです。

 しかし、これがキャスティングの最中だと、スローテーパーのロッドは全体に曲がるぶんロッドブランク全体の慣性が抵抗になって、バックスイングを止めた瞬間に50g分曲がり切らない、という仮説が成り立たないでしょうか。

 昔のロッドの場合ガイドが大きく重かったため、ルアーの重さではなくガイドの重さで曲がり込み、うまくタイミングを取ればスローテーパーのロッドでも投げられていたのですが、ガイドを小さくしてしまうとその作用がなくなってロッドが曲がらず、ルアーが飛ばなくなってしまうのではないかと考えられます。

 1本目のFS53Jを改造しまくったとき、一番ましだったのが富士のカタログのニューガイドコンセプト標準位置のとおりガイドをつけたもので、ジョイントより先にバットガイドがあるというかなり変則的なものでした。これで投げられたのも先ほどの仮説で説明がつきます。ガイドサイズが小さくてもガイド全体(特に大きなバットガイド)が先寄りにあることで、バックスイング時の曲がりが生まれたのではないかということです。

 それで思い出されるのが、写真のFSのふたつあとに出たSiCニューコンセプトモデルです。写真のFSはこのあとやや暗いブランクカラーとクロススレッドによるバットの飾り巻き付きにマイナーチェンジしたあと、149、53、61の3本だけSiCニューコンセプト仕様のものが発売されました。

 このうちのFS61Jを持っていますが、スローテーパーのロッドなのにガイドが富士の標準位置とほぼ同じ、つまりかなり先寄りにあります。大型魚がかかるとリールの中心とバットガイドが大きくずれ、明らかにガイドが先にあり過ぎるように見えます。

 ティムコでSiCニューコンセプト版を試作したとき、常識的な位置にガイドをつけると私がFS53Jでやったみたいに投げられず、最終的に先寄りのセット位置になったのではないでしょうか。

 同シリーズのFS53Jはどうしていたのだろうとググってみましたが、写真のバージョンがたまに中古ショップやオークションで出てくるだけで、SiCバージョンは見たことがありません。どんなガイド位置だったんだろう……。

 2017年2月25日朽木渓流魚センタールアーフィールドのイワナです。え? いつも渓流魚でやっているのと違って水から出して撮影してるじゃないかって? 朽木はキープして持って帰っちゃうんで……。 (2017/2/25)

 ロッドはフェンウィック・クラシックグラスFS53J。最近ヤフオクで新品を買いました。実は2本目で、1本目はリアルタイムで買って『マイナーリールの紳士録2』に載っています。

 とにかくべろんべろんで、グラスへら竿の1番と2番でルアーロッドを作ったらこうなるんじゃないかくらいの感じです。とにかく投げにくいので、1本目はガイドやグリップを変えたらなんとかならないかと改造しまくりました。

 まず、トップ込み5個のガイドをSiCニューコンセプト総数7個に改造。フジのカタログにあるガイド間隔のとおりにするとバットガイドが遠くなってしまうので、バットガイドを元の位置にしてあとを比例配分しました。しかし、ガイドが増えてかえって重くなったのか、依然べろんべろんで投げられませんでした。

 次に最初にガイドがついていた位置(トップ込み5個)にニューガイドコンセプトのガイドから小さめのものを選んで装着しました。でもやっぱり投げられません。最後に富士のカタログにある通りの数と位置にしたらちょっと投げられましたが、ジョイントより先にバットガイドがあるへんてこりんなものになりました。

 ガイドと同時にグリップ部分もスライドリングシートに改造してリールとのバランスを良くしようとしましたが、これも効果なし。そして、ほかの改造ロッド同様グリップを変えてしまったことで元のイメージがなくなってしまい、長年竿袋に仕舞い込むはめになりました。

 そんなわけで、今度は素で使いこなしてやろうと、あらためて買ったのでした。ガイドが1本目の非富士アルミナガイドではなくマイナーチェンジされたJモデルのハードロイになっていますが、基本同じロッドです。

 20年近くぶりに使った感じは、一応は投げられるかなというものです。しかし、安定して投げるのはやっぱりむちゃくちゃ難しいです。カーボンと違って自重だけで大きくしなるため、それにルアーを同期させるのがきわめて困難です。

 しかし、魚をかけたときのばかばかしいくらいの曲がりは当時の記憶どおりで、きわめて痛快なものでした。写真くらいの魚ならばバットの中ほどまで絞り込まれてしまいます。この楽しさのためにその他の面が犠牲になっているならば、それはそれでいいんじゃないかと思うことにしました。

 なんとか今年これで自然渓流の魚も釣ってみたいと思いますが、フッキングするか?(なにやらオチが『マイナーリールの紳士録2』と同じようなものになっちまった)

 こないだラジオを聴いていたら、本を読んでいるとき頭の中で文章が声になって聞こえるかどうかという話をしていました。わしゃあそんなもん聞こえたことないぞと思っていたら、ある調査によると8割だか9割だかの人は読んでいる文章が声になって聞こえているのだそうです。私は1〜2割の少数派だったことを初めて知りました。 (2017/2/20)

 でもって、最近めっきりキンドルでしか買わなくなった本のうち、お姉ちゃんの写真集を除いた(おい)主なものがこれ。

 いきなりですが『言ってはいけない格差の真実』は著者名の「橘玲」を戦場ジャーナリストの志葉玲氏と間違えて買いました。経済格差は知能の差であるみたいな、本当かもしれないけれど言ってはいけないことが書いてあります。

 このなかに、子供が小さいころから教育に力を入れても、その効果は一時的であり思春期になるころには効果はほとんど消える、だから教育投資はムダだというのがありました。つまり、英才教育で最初賢くなったようにみえても中学高校くらいになったら地金が出てあほになるからムダだということです。

 わしのことやないか。

 私は、英才教育されたわけではありませんが、小さいころ本を読むのが好きでした。だから、親の買ってくれた子供百科とかをかなり幼いころから眺めたおして、保育園(今でいう幼稚園)に上がるころには字がふつうに読めました。科学的なことも好きで、乾電池と豆電球をつないで直列と並列がどうしたみたいなこともやったし、生き物も好きで辞典で名前を調べたりしました。

 字がスラスラ読めるだけでも、小学校ではスタート地点でリードしているわけですから当然成績ええですわな。

 ところが、中学くらいからついていけない教科が出てきました。思えば小学校のころから漢字の読みテストは満点なのに書き取りはいまいちとか九九がなかなか覚えられなかったとか予兆はあったのですが、中学では地理歴史のような暗記教科がダメになってきました。

 それでも、「頭の良さは生まれつきの能力よりも努力で決まる」という今にして思えばおめでたい思い込みによって、自分の成績が落ちるのは周りが自分以上に勉強しているからに違いないと勉学に励み、朝井リョウの母校へと入学、その後もふらつきながらも京都の某私大まで進みました(国立大はこないだ書いたように「愛欲の波止場」と「変態縄縛り」で落ちました)。

 大学に入って周りの連中の話を聞くと、あのクラスの大学で私くらい勉強しまくって入った奴っていませんでした。このころようやく人間の頭も生まれつきいい悪いがあって遺伝で決まるんだということに気がつきました(あほや)。だいたい両親とも高卒やのに、トンビがそうそうタカを産むわけがないわけで。

 でも、もし私が小学生のころ『言ってはいけない――』みたいな考え方に出合ってしまっていたらどうだったのかなとも思います。あほなりに高校までたくさん勉強したおかげで、遠心ブレーキのブレーキ力はF=mrω2だとか、力のベクトル図でフック形状の違いによるフッキング力を説明するとかして、賢そうな文章をでっち上げることができたわけで(それだけか)、そう考えるとこれはかなりよくない本なんじゃないかと思います。

 『言ってはいけない――』みたいに言うべきでないことを言うのがカッコいいみたいな風潮が生んじゃったともいえるのがトランプ大統領でしょうか。そのアメリカで現在リバイバルヒットしているのが『1984年』です。名作だということになっているのでいま読んでますが、ピンときませんねえ。

 以前紙版で『動物農場』も読んだことがありますが、基本著者は反共産主義の人で、どちらも革命で生まれた独裁国家を描いています。『動物農場』なんかもろ労働者が実権を握るとよけいひどい社会になるぞって本です。『1984年』もそういう著者の意図がありありと感じられます。プロパガンダのために書かれた本が面白いわけがありません。そもそも、全体主義って革命だけで生まれるものじゃありませんよね。言い古されてますけどヒトラーだって選挙で民主的に政権とったんですよ。

 いまの日本を見てみなさいよ。一応民主主義の仕組みだけはあって選挙も行われるのに、半分の国民は棄権して、一部の人たちの意向だけで物事が決まっていきます。睡眠障害だと言って逃げた人も、白紙領収証が山のように出てきた人も、防衛関連株をたくさん持っている防衛大臣も、パンツ泥棒も、9割引きで国の土地を買った人も、与党にいる限り安泰で、マスコミもぜんぜん追及しません。

 向こう隣りには兄貴を暗殺するようなイカレた国があって、やっぱ世襲制の前近代国家はどうしょうもねえなあってことですけど、わが国では民主選挙が行われているのに、どいつもこいつも二世三世の世襲政治家ばかりです。

 そんなの普段の生活に関係ないじゃんって日本人の大半は思ってるんだろうけど、この国の労働者は経営者団体から献金を受けた政治家が企業を野放しにしているおかげで過労死するまでこき使われるわけです。にもかかわらずテレビで日本スゴイ番組を見せられて自国をこの世の楽園だと信じ込み、はみ出した人は脱落者です。一日3時間の睡眠でこき使われた女優が宗教(まあカルトだが)に走ったら、そんな待遇が放置されてきたことには目もむけず違約金どうするんだ身勝手だとみんなでバッシングするわけです。

 この奇怪極まりない国に比べたら『1984年』なんてステレオタイプのぺらっぺらですよ。

 長くなって疲れたので次は簡単にいきますが、『日本会議の研究』はいままさしく進行中の9割引きで国の土地を買った学校法人を運営している人達の組織の本。「昔陸軍いま総評」てな言葉がありましたが、いまは「昔陸軍いま日本会議」。やりたい放題です。たぶんあれもうやむやになっちゃうんじゃないですかねえ。

 ガラッと変わって『金色天化』。これを金色テンガと読んでしまうのはつボイノリオ先生の影響。著者は以前取り上げたとおり吾輩の著した『ユキ』をブログで取り上げてくれた新聞記者の人です。面白いです。面白いというのは大変なことで、ちゃんとした出版社が出した紙の本でも面白くないのいっくらでもありますもん。ますます(物理的な)本は難しくなるでしょうね。

 わたくしは『ユキ』のあまりの売れなさに冷温停止中ですが、興味をなくしたわけではないので読んでみたのが『エンタテインメントの作り方』。基本的なことがきれいにまとまって書いてあります。語りおろしの本で理路整然としているのは編集者の力もあるかもしれませんけど基本著者が賢いからやろな。たしか京大の人やもん。レビューを見ると基本的なことしか書いてねえじゃねえかなんてのがありますが、基本部分より先はその人の才能なり感性なりであって、本を読んでどうこうなるもんじゃないでしょう。

 最後は『釣れんボーイ』。アマゾンで「サツキマス」で検索すると、わたくしの『川マス』とともに出てくる数少ない本です。釣りにとりつかれた漫画家(たぶん著者)の日常が淡々と描かれていて、特に起承転結もオチもありませんが、なんかいいです。

 2017年2月4日、根尾川のアマゴです。カワウを呼ばないためか成魚放流の回数が減って、かつルアーが投げやすい広い所に放さなくなったためなかなか難しいです。なんとか夕方ルアーフライ専用区で1匹釣りましたが、ここも魚がスレると流化した虫しか食わなくなるのでルアーで釣れるのは最初だけです。 (2017/2/11)

 こうして横たえると、魚は目を下に向けて怒ったような顔になります。でも、この時期の魚は低水温で目玉を動かせないのか釣り上げた直後でも死んだような表情です。これを見てもやっぱ2月解禁って基本ムリなことですな。

 横たえられた魚が目を下向きにするのは、水槽で飼われているアロワナの目が下を向いてしまうように、魚の精神状態が悪いときの表情だと思っていましたが、こないだ釣りビジョンの「五畳半の狼」を見ていたら司会の菅原氏が、あれは魚が平行を取り戻そうと目を傾かせるのだと言っていました。

 となると、体の下側になっているほうの目は反対に上を向いているのでしょうか!? そういえば、こうして横たえたときの地面側の目は見たことがありません、というか見られません。あえて言えばビニール袋にでも入れて下から見れば確かめられそうですが、もし本当に上を向いていたらあまり気持ちのいい表情ではなさそうなので、あえて見たくないです。

 「五畳半の狼」といえばいつだったか世界を釣り歩いている人の回で、フェラいやヘラチョウザメという魚が出ていました。

 この回について、知る人ぞ知るが知らない人のほうが圧倒的に多い名古屋のタレントつボイノリオ先生が、京都のラジオ番組で「ヘラチョウザメなどというおいしい名前の魚が登場したのに、なぜアシスタントの柳野玲子ちゃんに読ませたらんのや」と言っておられました。以前なにも知らない女子アナに4Kテレビを英語読みで連呼させた先生から見たら菅原氏の司会ははがゆいばかりだったようであります。なに、最近下ネタが多い?

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