07ルビアス
 カーボンリールふたたび。

07ルビアス2506
 TD-Zの金型を使った(?)初代ルビアスに代わる07ルビアスです。初代と同じパターンならもう2、3年経ってイグジストが古くなってからというところでしょうけれど、意表をついてカーボンボディーで登場です。

  2506はスプール径48mm、ギア比4.8:1、カタログ自重200gです。めちゃくちゃ軽い。

 メイドインタイランドです。ときどき●ンプレネットなるサイトをのぞくと「台湾製」と書いとる人がおるがTHAILANDはタイ王国やで。大丈夫か日本の中学生諸君。

カーボンボディー
 ボディーとローターはカーボン繊維強化プラスチックだそうです。ダイワは「ザイオン」といっていますが、ネット検索しても引っかかりません。昔のシマノ「チタノス」のように商品名みたいなものなのでしょう。

 こうしてみると、左のレブロスのローター(たぶんガラス繊維強化ナイロン)より肉が薄くなっています。カタログでうたうとおり、剛性(たわみにくさ)の高い材料なのでしょう。

 いつかも書いたけど「剛性」というのは「物体の、ねじれや曲げに対する弾性の強さ」ですぞ。釣り関係のブログなどを見ているととんちんかんな意味に使っている人がいーっぱいいます。

苦労の跡かも
 カタログには「実用化は困難を極めた」とものすごいことが書いてありますが、この辺もその跡かな。ローター正面にある丸い跡は(たぶん)金型から成型品を押し出す押出ピンの跡でしょう。07ルビアスは実に13個もあります(あらためて写真を拡大すると小判穴のところにも小さいのが2個あります。そうなると合計15個ですね)。レブロスは8個ですし、ふつうは4個か6個くらいです。

 亜鉛ダイキャストのドライブギアの腹側にも押出ピンの跡がありますが、押出ピンの少ない金型はギアが面ブレしてしまいます。

 同様に考えると、「ザイオン」を歪ませずに成型するにはこれくらい押出ピンを付けないといけなかった、それだけ成型しにくい材料だということではないかと思います(違うかな?・・・ISO-Zの取材のついでにダイワの人に聞いたら違うそうです)。

 昔、シマノにツインパワーBB-Xというモデルがあって、これもカーボン入りのボディー材だったのですが、「足が曲っとる」というけったいなクレームが時々あったものです。リールを真上から見ると、足とボディーが微妙にねじれているのです。カーボン繊維はガラス繊維より細くしなやかなので金型から出したときの歪が大きかったのです。BB-Xはブレーキレバーのために足の付け根に切り欠きがあってよけいに歪んだのですね。さすがにルビアスはまっすぐです。

 ん、足が曲がってるといわれたのはチタノスBB-Xで、TP-BB-Xは改良したんだったっけ? もう20年も前の話だからなあ・・・。

スローオシュレーション
 スプール往復はハンドル2.6回転(目測)で1往復です。1.6回転で1往復の05バイオが「スローオシュレーティングシステム」とローターに書いていますから、その基準でいけば07ルビアスもスローオシュレーションです(?)。

 オシュレーションが遅くなったのはドライブギアの軸が細くなってオシュレーションギアを回すための平歯車が小さくなったからで、別にシマノに擦り寄ったわけではありません(たぶん)。

 遅くなったからといってトラブルにはつながっていないようです。写真は1.5号を100m巻いていますが、この状態で使ってトラブルは皆無でした。

 なお、「リアル4」になってからウォームシャフトシリーズよりややショートストロークになっていて旧ルビアスと互換性はありません。ただ、前のモデルよりいいのは深溝浅溝スプールに互換性があることです(前のモデルが不親切すぎただけか)。

スプール受け
 スプール受けの部品やローターナットは真鍮製です。旧ルビアスはアルミでした。イグジストは見たことがありませんが、よもや真鍮ではないでしょう。

 イグジストとの自重逆転を防ぐため !?


ベールシステム
 ベールスプリングとベール反転レバーは別々の腕に仕込んでいます。重量を分散して軽量化する考え方。

 でも、私の買ったリールはベール返し不良でした。ベールを開いてからローターを持ってゆっくり回していくと、ベールが閉じきらずに止まってしまいます。

 シマノなどがやっているベールアーム側にすべての部品を入れる方式に比べると、ベール形状などの要素が加わる分、こういうことが起きやすくなります。

 どっちがいいかは難しい問題です。きっちりできていればダイワ式のほうが軽くできるでしょうし、シマノ式は不良率が低く、ユーザーがベールを曲げても作動不良になりにくいといえます。ダイワは理想主義、シマノは現実主義ともいえます。

 インスプールで例えれば前者は大森式、後者はミッチェル式です。

 私のリールのベール反転不良は、ベール返しレバーとベールパイプをわずかに曲げて直しましたが、あらためて見るとベールアーム反対側支持部のガタ(穴が大きいみたい)も理由のようです。異常に気づいた人は素直に修理に出したほうがいいでしょう。

ベール返し
 ベール返しはいまひとつ。ガチャンというショックがきます。ベールスプリングを2巻き切ってもまだ重い。ミッチェルアイディールみたいにアタリのスロープを長ーく取って「シュパッ」と返るようになったらもっと気持ちいいリールになるのになあと思います。

 そうするとベールを左向きに開くような人が嫌がるかもしれません。でも、おかしな使い方の人が増えたのはローターブレーキもない内蹴り&瞬間ストッパーのリールを延々作り続けたメーカーのせいなんですけどね。

ローターブレーキ
 そのローターブレーキです。初代フリームスは効きがいまいちでしたが、セルテート以降は方式を変更、しっかり効きます。

 01までのシマノのフリクションリング(ブレーキリング)はオイルで伸びてしまうことがありますが、ダイワはどうなんでしょう。

ラインローラー支持
 右をベアリング左をブッシュで支持しています。ベアリング(CRBB)はパッキン付きです。

 ネジは緩み止め剤が塗ってあるため、外すなら緩み止め剤(TIPS参照)を用意します。でも、運悪く工場組み立て時の緩み止め剤ががっちり付いていたりするとベールアームとラインローラーサポートのかみ合わせ部が割れることがあります。やっぱり外さないほうがいいでしょうね。

 なぜそんなことを知っているかというと、このまえ雑誌の撮影用に借りたトーナメントISO-Z LBをそのパターンで壊したからです。ごめんなさい。

メインシャフト
 カタログには「極細メインシャフト」と書いてあります。私はメーカーの宣伝文句に不感症になっているので、きっと一般的な4mmのものをシマノが2000番以上に使っている4.5mmよりは細いからこういっているだけだろうと思っていました。ところが現物を見てビックル一気飲み((C)きっこ)、なんとこのメインシャフト、3.2mmしかありません。

 落下させたら曲がるのでは、と思ってしまいましたが、200gしかないならそれも大丈夫か。でも、これを見ちゃうと2500Rというモデルがあるのもわかるような気もします。

 「落下」なんぞということを真っ先に考えるのは、昔テストの仕事をしたからです。「落下なんて落すやつが悪いのに、こんなのまじめにテストすることないやん」と思っていた私は、初代ナビ1000をさらっとテストし・・・。ごめんなさい。

サイドカバー
 サイドカバーはアルミです。剛性を持たせたのかもしれませんが、カタログによると「ザイオン」はマグネシウムに近い剛性があるとのことです。おそらく、「エンジンプレート」を止めるネジをタップネジにしたくなかったからではないかと思います。もし緩んだらギアが浮いてしまいますからね。

タップネジ
 タップネジがBタイト(上)からPタイト(下)に変わっています。私のリールではエンブレムやTD-S・CまではBタイトでしたが、フリームスからPタイトになっていました。

 Pタイトのほうがプラスチックをネジバカにしにくいのですが、緩みにくいのはBタイトのはず。世の中にはカーディナル33のベール固定ネジをねじ切る人までいますから、ネジバカ対策かもしれません。でもちょっと緩みが不安。特に「ザイオン」は硬いせいか締めていったときカツンと止まり食い込み感がありません。この点からも、必要以上にばらすのはやめたほうがよさそうです(ねじ山がなじんでしまい緩みやすくなるかもしれません)。

 タップネジはつぶれるという人がいますが、Bタイトでもちゃんと使えば大丈夫です。いきなりねじ込んだら2条も3条もねじ山を作ってしまいいつかつぶれるかもしれませんが、いったんネジを逆転させて先に切られた山を探してからねじ込み、適度なねじ込みにとどめれば、まずつぶれません。なお、シマノは昔からPタイト、ミッチェルやアブはBタイトです。(後で気づきました。シマノは少なくとも95モデルからサイドカバーのみBタイトに変えています。 2008/11/21追記)

 もしかすると作業性のために変更したのかもしれません。作業する人は機械でとはいえ1日何千本と締めるわけですから軽視できない問題です。リールとは違いますが、フェンウィックのジム・グリーンは作業者の手に刺さるためボロンロッドに反対だったという話もあります。

 そうそう、「Pタイト」は昔シマノが使っていたから間違いないと思いますが、「Bタイト」のほうは当時現物を見たわけではないので、ひょっとすると違う名称のネジかもしれません。間違ってたらゴメンね。

 

内部機構
 最近のダイワリールですから、S字カムによるシンプルな構造です。ドライブギアの軸を細くしてオフセットを小さく取っています。ドライブギアの歯面はアルマイト加工後に仕上げ削りしているようです(これは旧ルビアスのギアをダメにして取り寄せたパーツも同じでした)。

 S字カムは神経質な人のクレームを防ぐためかオシュレーションギアのピン先にOリングが付いています。クリアランスもほとんどありません。

 サイドカバースクリューはなぜか1本だけ緩み止め剤らしき赤いものが付着していました。

 
ピニオン支持
 ピニオンギアは前後をベアリング支持。メインシャフトはローターナット内の真鍮ブッシュ(ベアリング支持)とピニオンギア後端の樹脂ブッシュで支持され、ピニオンギアの内面とは接触しない設計。ここの2個とラインローラーの1個がCRBBのようです。

 カタログによるとCRBBは4個だそうです。となるとローターナットの中のもCRBBかな。

なぞのワッシャー
 赤丸の部分とローターの下に取り説のパーツリストにない薄いステンレスのワッシャーが入っていました。赤丸のほうは気づいたときすでにピンセットに付いていたので、写真の位置が正しいかどうかわかりません。で、付けずに組みましたがなんともありませんでした。まあいいか。

 こういうことがあるので、部品を外したら必ず裏を確認しましょう。やっぱり無意味にばらすのはやめたほうがいいです・・・。

ハンドル
 ねじ込まれハンドルです。オスメス逆なので折りたたみはできません。ドライブギアの軸が細いので仕方ないでしょう。折りたためないかわりにリール袋は大きいものが付いています。

 ダイワのこの部分はスカートが太いですが、中は空洞です。見た目が重そうですね。

レッグ
 足首は前が丸く後ろがフラット。やや後ろから中指が掛かるため、前側を丸く作ったわけです。でも相変わらず取り説で人差し指が掛かっているのは困ったもんです。

 くどいようやが水野裕子の持ち方もええかげん直させなあかんで。こないだの「THEフィッシング」なんか、ゲストの女子アナにちゃんとしたグリップの指導をしておいて、水野裕子は相変わらずの人差し指はさみの右投げ右巻きやんか。ゴルフやテニスのイメージキャラクターが基本のグリップもできてへんかったら、そんなメーカーは信用されんやろ・・・。

 Q&Aのページに「07ルビアスはイグジストの型を使ったのではなくカーボンボディーの新型」と書いておいたら複数の人から「知らなかった」というメールが来ました。

 私としては2007年2月5日のHP表紙にカーボンルビアスを予言するかのようなことを書いておるわけで、こっちをすごいなといってほしかったのやけどな。

 ダイワさん、みんな広告やカタログの「ザイオン」のところをちっとも見とらんみたいやで。なわけはないと思うけどね・・・。

 ま、そんなことはどうだっていいんだ。

 私が今興味があるのは、これに対してシマノがどう出るかです。

 ダイワのS字カムによるシンプル構造に対し、シマノはナビ改めナスキーやエアレックス改めエルフまでウォームシャフト(クロスギア、エアロラップ)にして対抗しているというか、よりかたくなになったというか、小沢のISAF参加表明みたいというか・・・。この調子だと結局動かなかったりして・・・。

 軽くするなら、材料ではなく構造でというのはどうでしょう。私が思い出すのは投げリールのエアロキャスト7000EXです。(たしか)当時すでにマグネシウムのリールも出てきていましたが、エアロキャストはスカートレス構造を採用することで、それ以上の軽さを誇りました。ボディーはアルミでしたし、ドライブギアだって亜鉛でした。

 小さいリールでスカートレスにしてもそれほど小さくなりませんし、糸落ちも完全には防げないでしょう。ならばインスプールはどうでしょう。これならスプール後部にモールをつけるなど糸落ちを防ぐ方法はあります。私より頭のいい人が考えれば、(私はいらんと思うが)手で閉じられるベールもできるかもしれません。

 私なら、いっそ瞬間ストッパーもBB入りの大口径ラインローラーもやめますね。

 金型代? そんなのステラなどのメインラインのモデルライフを倍にすればいいだけです。3年なんて短すぎでしょう。

 と、いうのを万が一やっておおごけしても、僕のせいじゃないからね(おい!)。 (2007/12/25)


 おお、あらためて読み直したら、最後のまとめがぜんぜんルビアスの話になってないぞ。

 なんといってもこのリールの注目点は「カーボン」をあえて採用したところでしょう。金属イコール高級というイメージ(を誰が作ったのかはおいといて)が主流を占める中である意味これは冒険でしょう。でも、このリールも品切れ続きでようやく12月中旬に手に入れましたから、相当売れているようです。

 考えてみれば当然で、こと小型モデルで金属のメリットなんてもともとそれほどなかったわけです。気分を悪くする人もいるかもしれませんが、「金属リールのほうが剛性が高い」なんていっている人のうちかなりの人は(上でちらと書いたように)「剛性」の意味すらわかってないわけで・・・。

 新しい材料の不安は・・・たぶんないでしょう。もちろん当時のものとはいろいろな面で変わっているはずですが、もともと25年ほど前に登場した樹脂リールはカーボンだったのですから。それがいつの間にかチープなものになってしまったのは、名前は「カーボン」「チタノス」のままでガラス入り材料にしてしまったからです。もし釣り具業界がこういう体質をまだ残しているなら、仮にこのリールがカーボン第二世代のスタートになったとしても、また同じことを繰り返すでしょうけれど、それはおいておきましょう。

 あえてひとついえば硬い材料にPタイトの耐緩み性(特にベールまわり)が不安で、個人的にはBタイトにするか欲をいえば初期のカーボンリールのように金属ネジのインサートがあると愛着もわきそうです。でも、いまはばらしてメンテナンスする時代でもなさそう(?)なので、商品とすればこうなるのでしょう。硬い樹脂材料は寒冷時のもろさが気になります(89ナビの経験者は語る・・・)が、このリールは樹脂分ではなく繊維で硬くしているので大丈夫でしょう。

 で、使った感じは・・・もちろん何の文句もありません。軽いしトラブルもないし。ただ、逆に特に印象がないと言えばないんですね。もっともこれは私がひとくせもふたくせもあるリールばかり使っている人だからで、ステラやイグジストを使っても同じでしょう、たぶん。

(2007/12/26追記)

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