最後のトーナメント
 いまさら、ルビアス?

ルビアス2004
 もともとはTD‐Z・Cだったもの(でしたよね)がトーナメントエアリティーになり、ルビアスになりました。ローターとハンドルクランク(TD-Z・C)がマグネシウムからアルミになっているのと、ベアリング入数を除くと、ほとんど同じものが半額以下で買えてしまう恐ろしいモデルです。

 1985年登場のウィスカートーナメントSSに始まるウォームシャフト機構を持つ一連のシリーズの、おそらく最終モデルとなるはず。最近は最後のおつとめとばかり、色とギアを変えたプレッソや月下美人にもなってがんばっています。

逆テーパースプール
 97年から採用している逆テーパースプールです。私は学生時代、ダイヤモンドマイコンSSの巻き形状を逆テーパーにしてライントラブルを防いでいました。80年代終わりに在職したシマノにも、逆テーパーにしておくとトラブルが減ると言っている人はすでにいました。

 でも、それはあくまで裏技的な意識でした。まして当時トーナメントSSの順テーパースプールが常識化しつつありましたから、まさか製品にしようとするところが出てくるとは思っていませんでした。

 これを製品化してしまったあたり、ダイワスピニングはすごいわと思います。

エアスプール
 ABS樹脂の応力割れをメッキで防ぐ軽量スプール(と、人から聞きました。詳しい質問は送ってこないように)。スプールリングはエアリティーのチタンナイトライドからステンレスになっています。

 最初にこういう極端な浅溝スプールを出したのはTD-Xだったはず。あまり細いラインを流行らすのはいかがなものかという気もしますが、釣り人のニーズに応えているといえば言えるのかな・・・。

スプール受け部
 工具なしでばらせるスプール受け部。こういうの好きです。なんでシマノはこの部分に六角穴付きネジなんぞを使うんでしょう。特許の関係でやむを得ず変な設計になっちゃうこともありますから、あれはそういうケースなのかな。

 と、なると、こんな些細な支持部まで、ダイワは特許をとって目を光らせているのか・・・怖・・・。

エアベール
 ステンレスパイプの「エアベール」。太目ワイヤーのアブやミッチェルのインスプールモデル、極太樹脂ベールのカーディナル800やミッチェルクォーツなど、スピニングの先人が目指したのと同じ方向を向いています。非常に正しい。

 「しょせんパイプだから弱い」なんてことを言う人がいますが、なことはありませんで。釣り竿や自転車のフレームがなぜパイプなのかを考えればわかることです。

コイルベールスプリング
 日本で最初にこのタイプを出したのがウィスカートーナメントSSでした。もっとも、コイルスプリングの特許(リールを作っていないアメリカの会社が特許だけ持っていた)が切れたのがこのころだっただけで、同時期にシマノはアメリカ向けに使ってました。

 それはさておき、スプリングが異常に強いのが気になります。写真はすでに3巻きカットしていますが、まだ強め。両手でロッドを振り回す人のベール返りクレームを防ぐため?

 いまさらですが、スプリングが強いのはベールが開くのを防ぐためのようです。普通のベールはラインに引っ張られれば閉じようとします。ところが、ツイストバスターの場合、ローラーのフランジ部に当たったラインによってベールを開く方向の力が生じます。「開く」といっても閉じ気味の角度のベールが水平になるところまでなので、使っていてわかるようなものではありませんし、障害もありません。PEラインをスプールに巻くとき通常より強いテンションをかけると、やや後ろ巻きになるのはこのせいです。(2006/1/24追記)

シュアトリップベール
 いわば、半内蹴り機構です。80年代終わりの輸出用ロングスプールPR-Hやその国内版スポーツラインGS-Hから使われています。でも、感触は完全に外蹴りです。懐かしい外蹴りの味を残している・・・なわけないか。

 その点はいただけませんが、ベールアームの反対側の腕にベール返し機構を仕込むのは、ローター軽量化において有効で、まじめな設計だと思います。これを含めてローターを軽くしようという基本方針も、実に正しい。


ハンドル
 コルクコアの軽量ノブです。ローターと並んで回転慣性を減らそうという考え方がこれまた実に正しい。しかも、慣性モーメントに一番きくのは最外周にあるノブです。まったくもって、正攻法。

 いっちゃあなんだけど、04ステラってハンドル軽量化のためにクランクを中空にしながら、ノブは昔のまま・・・。

 ハンドルノブの支持軸(ダイワではハンドルリベットというらしい)も軽量化のために軽合金です。シマノは耐蝕性のためにステンレスを使ったモデルが多い(軽合金は記憶にない)ですが、常識的な使用を考えたら軽いほうがいいと思います。

 余談ですが、シマノはハンドルノブ支持軸に真鍮を使いません。耐蝕性なら真鍮で十分のはずなのですが、実はこれ「同質は焼き付く」という社内迷信に縛られてるんですね。真鍮の支持軸は真鍮パイプを使ったウッドノブ(最近あまりないけど)との間で焼き付くはずだというのです。でもさ、真鍮系同士が悪いなら、ベイトのギアなんてもろ真鍮系同士でしょ・・・。実際、ダイワには真鍮のハンドルリベットと真鍮パイプのウッドノブのリールもありましたしね。昔偉い人が言ったとか、そういうのがけっこう残ってるんですね。


ノブの握り心地
 私はミッチェルのほうが好きですが(これはヘンタイのたわごとなので無視してください)、いまのダイワのノブはとてもいいと思います。

 上の写真のようにぎゅっと握ったときにも下の写真のようにつまんだときにも安定しています。

 これは全体の形状がよく考えられていることのほかに、上下にフラットな面があるからです。これはこのタイプ(シマノでいうパドル型、ダイワでいうT型)で重要なことです。

 欲を言えば、もう少し薄いといいのですが、軸受け部、コルク部、外皮の3層構造ですから仕方ないところでしょうか。

メインシャフトとパッキン
 メインシャフトとピニオンのすき間に異物が噛み込まないようにするパッキンです(写真は浮かせています)。これは以前雑誌の記事のために借りたトーナメントエアリティーにも付いていました。メインシャフトは軽合金のようです。

 これに限らず、ほとんど装備面はエアリティー同等。お得というか、エアリティーオーナーの立場は・・・というか。

防塵ボディー
 この前の型(トーナメントZ・Cなど)と変わっているのがここ。ストッパー切り替えレバーやワンウェイクラッチが露出していた部分を、すっぽり覆っています。

 「この前」もなにも、このてのモデルそのものがもうすぐ終わりやろとか、突っ込まないように。

ピニオン支持
 ABSシリーズで特徴的なのが、ピニオン支持。2個のベアリングをピニオンギアの前に配置しています。ワンウェイクラッチをベアリングではさんでいるのも、異物やグリスの侵入防止によさそうです。

 ピニオンギア後部のボスが不要でボディーがコンパクトになります。ローターが長いロングスプールリールのローター内に軸受けを配置しているわけで、合理的だと思います。


ウォームシャフト平行巻き機構
 トーナメントの象徴といっていいと思います。ただ、一部、耐久性が悪いという人もいるようです。だからイグジストやセルテートなどS字カムに移行するのだと雑誌などで言っている同社プロもいます。

 でも、普通に使っていていってしまうようなものではないはず。一部の人が思っているほど弱いものではありません。ウォームシャフトが弱いというのは、ちょっとでも音が出たら我慢できない人か、逆に荒っぽく扱って(落下など)メインシャフトを通じてウォームシャフトに衝撃を加えてしまうような人の、両極端の話が合わさった風評のような気がします・・・。ただ、このリールに関してはほとんど使っていないうちからグリスの濁りが激しいのが少し気になります。

 それでも、S字カムなどシンプル低コストで重量バランスにも優れた新方式が出てきたいま、ウォームシャフトが消えていくのは必然でしょう。20年間ご苦労さん(高いリールを買わされた釣り人も?)というところでしょうか。

 それと、写真に撮り忘れましたが、サイドカバー用スクリューになぜゆるみ止め剤を塗るのでしょう? しかも、べらぼうに強い。このリールも1本頭をなめてしまいました。必要あるかな?(だ、だ、だから、去年某誌のために借りたインパルトのネジもなめちゃったんだ。ぼ、僕は悪くない・・・)

デジギア
 難しいことはわかりません。パス。

 でも、エアリティーと(たぶん)同じものを変わらず装備。軽合金製なので当然軽量。

リアカバー
 ウィスカートーナメントSS以来のリアカバーです。最初はウォームシャフトを組むためだったのでしょう。分解しにくいロングスプールリールのルーブポートにもなります。

 いわば最後のトーナメントです。つくづく僕って、「最後の」とか「かつての」に弱いのね(なんといいますか、いまのセルテートなどのようにギアの効率がどうのといってないところとか、内蹴りより原始的な半内蹴りとか、ちょっと華奢な感じとかがある意味クラシックなスピニングのイメージなのね・・・)。でも、たしかにダイワのトーナメントシリーズは、ひとつの時代を作ったリールですね。

 大きなスプールとコンパクトボディー、ライントラブル防止を優先させたスプール、堅牢なベール、低慣性な回転特性のための軽いローターとハンドル、手になじむハンドルノブやフェザリングしやすいスプール位置などの操作性・・・どれも非常に正攻法で、基本にのっとっているように感じます。

 ちょっと怖いのはいま挙げたうちの何点かはシマノがわざわざ反対をやっているということ・・・。

 さらに、自ら始めたこのラインを捨て去って、イグジストやセルテートなどの新しいラインに変えていこうという思い切りの良さに、脱帽です。モデルごとにデザインが思いっきり違うのも個性的です。

 ただ、ルビアスのように数年前のトップエンドが、あまり性能を落とさずに安くなって出てくると、前の高級品オーナーは泣くんじゃないでしょうか。もっと言えば、何年か経ったら、イグジスト版ルビアスみたいなモデルが出てくるだろうと思って、それを待って買おうという人も出てきませんですやろか。

 一方のシマノはこういう「パラシュート作戦」的なことは(いまは)やっていません。前のオーナーを大切にしていると言えそうです。モデルごとのデザインイメージも統一感があります。でも、あちらはあちらで、最近のモデルはどれも同じに見えちゃうという面も・・・。

 難しいところですね(なんだこの傍観者のような締めくくりは・・・)。 (2006/1/6)

Daiwa