レブロス
 プアマンズセルテート !?

レブロス1500
 今年の秋登場のニューモデルです。クセの強いデザインのKIXから一転して素直なデザインで登場。サイ(Cy.)をベースに、ハンドルを変更、カラーをシルバーに。ちょっとボディーラインがイグジストみたい。

 1500はスプール径41mm、ギア比4.7:1、カタログ自重240g。2000とはスプールの大きさがわずかに違うだけのようで、カタログ上の自重は共通です。

 メイドインチャイナです。

軽い軽い
 サイとは別物と言いたくなるほど自重が大幅に軽減されています。サイの1500が265gなのに対し、レブロス1500は237g(実測)しかありません。これだけ違えば、使用感はぜんぜん違うはずです。

 セルテートの1500と2000のカタログ上の自重が235gですから、ほぼ同等。得した気分。

 さらに、上位機種のフリームスKIXとの自重まで逆転、ええのか?

軽い理由は・・・
 自重を大幅に軽減したのはハンドルです。サイの亜鉛ダイキャストワンタッチからアルミ削り出しに。

 逆に言うと、サイのハンドルはなんと重かったのかということにもなります。フリームスKIXとの自重逆転を防ぐために、あえてああいうハンドルを付けていたのかも。(参考までにサイ2500のハンドルは62.5g)

 固定はキャップを締める「共回り式」。安っぽいですが、価格を考えればこんなところでしょう。クランクとギアの間に入るカラーは樹脂にメッキ仕上げですが、これも軽量化に貢献していると言えます。

 ハンドルはリールの回転部品の中で唯一バランスが取られていないものです。だから、軽さが一番重要なのです。

 世の中には、固定スクリューと防水キャップを独立させ、ワンタッチ折りたたみ機構を持っていても、肝心のクランクが亜鉛ダイキャストのリールもあるわけで、そう考えるとコストの使い方としては正道かなというところ。

ハンドルノブ
 ノブはゴムですが、形状はルビアスなどのコルクコアノブと同じ。すなわち握ってもつまんでもいい優れた形状。

 しましまがちょっとくどいですが、つまんだときの安心感は増しています。

 でもやっぱり少し気持ち悪いな。快傑ライオン丸のデボノバの顔を連想してしまうのだが・・・。


このヒトとの差は?
 興味がわいたのは、以前買ったフリームスとの重さの差。買ってはみたものの、重さのためにあまり使わず。クラス的には近いはずなので、どこが変わってこんなに重さに差が出たのか、調べてみましょう。

 リールを、スプール組、ローター組、ボディー組、ハンドル組の4つのパートに分け、それぞれ、フリームスと比べてみましょう。

 フリームスは2000ですが、カタログ上の自重と巻き上げ速度が共通なので、おそらく1500と2000はスプールの深さ違いのはずです。

機種/部分 スプール組 ローター組 ボディー組 ハンドル組 合計自重
レブロス1500 45.5 47.0 111.5 33.0 237
フリームス2000 57.5 53.5 117.5 44.5 273

 結果はこの表のとおり。ダイキャストから鍛造になったスプールが大幅軽量化。ローターが軽いのは回転慣性軽減に貢献しそう。ドライブギアが大きくなっているのにボディーも軽量化。フリームスのハンドルクランクはアルミのようですが、それでも10g以上の差があります。

スプール
 ダイワHPには「アルミ鋳造」とありますが、切削していない部分の面を見ると鍛造に見えます。

 どっちにしてもスカートの裏側も薄く削って軽くなっています。

爪でこすると・・・
 ちょっと気になるのは表面の切削仕上げ。爪でこういうふうにこすると・・・。

 爪が削れた磨耗粉が出ます。旋盤目を残してつや消しっぽい表面にしているためです。高級感はありますが、ちょっと気持ち悪いな。

 もちろん、そんな表面をスプールエッジに持ってくるようなことはありません。金色の部分はダブルアルマイト処理によるスプールリング(?)部です。

 シルバーアルマイトをかけた後、金色にしたい部分を切削し、ゴールドアルマイトをかけています。このとき、ゴールドにする部分の切削はシルバー部分よりも旋盤目を細かくして、表面仕上げを良くしています。

 ダブルアルマイト処理とは、1色目のアルマイトをかけた後、2色目をかけたい部分を切削して地金を出し、再びアルマイトをかけること。詳しくは知りませんが、アルマイトの上にアルマイトが乗らない性質を使っているようです。チヌ用片軸リールやスピニングのスプールでそうした処理をこう呼んでいます。正式名称かどうかは知りません。

 ダブルアルマイト処理をうまく使って、つや消しシルバーと滑らかな金色部分を同時に作ったとも言えます。

 でも、スプールは大切なラインを巻くところです。影響がない部分とはいえ、爪が削れるような表面には抵抗があります。スプールリング部にしても、フリームスに比べるとまだ旋盤目が爪でわかります。

 実害はないかもしれませんが、ちょっと気になります。

 実害がなくてもやっぱりヤダ。(2007/1/11こっそり追記)

ベールトリップ
 ベール返しレバーはベールアームの反対側に。フリームスではベールアーム側でした。これも軽量化に有利でしょう。

 ベール反転は軽くスムーズ。

ボディー前部
 フリームスKIX以上のモデルで採用しているローターブレーキは不採用です。初心者こそ基本操作を覚えるのが大切ではないでしょうか。(まあ、水野裕子の持ち方をいまだに直させんくらいやからな)

 ストッパー切り替えレバーの先などは露出を抑えています。

ストッパーレバー
 ストッパーレバーはお尻に付いています。イグジストは首下にもっていってしまいました。シマノやピュア・フィッシング系など、ほとんどのスピニングもレバーを首下につけています。

 しかし、操作性を考えたらこれが本当でしょう。

 私の場合を言えば、ローターブレーキがなくてもここにレバーがあれば、キャストとリーリングをしている間はストッパーをオフにする「ミッチェル使い」ができます。

フローティングシャフト
 ローターナットに樹脂ブッシュが入っていて、ピニオンの口とメインシャフトの摩擦を減らしています。シマノの98モデルは最初同じように樹脂ブッシュを入れていましたが、なぜか途中で廃止しました。実はダイワの特許だったのか !? もしそうなら採用した上でクレームつけなよ・・・。


ピニオンベアリング
 ピニオンベアリングは、フリームス(下)の2個から後ろの1個のみに変更。これはセルテート以降のリールに共通です。

 ドライブギアが大きくなっていますが、上の表のようにボディー組の重さも軽くなっているのは、このへんが理由かもしれません。

ピニオン後端支持
 ピニオンベアリングが1個になった替わりに、ピニオンギアの後をボディーの穴で受けます。ただし、フリームスKIX以上のモデルがこの部分に樹脂ブッシュを入れているのに対し、ボディー材料でじか受けです。

 ただ、これが直ちに耐久性低下につながるかというと、わかりません。アルミボディーの他社リールでも、アイディール、カーディナル600/700はじか受け、カーディナル500ALBはブッシュ入りと、いろいろあります。

 昔S社でダイワBG60(アルミの海用大型スピニング)の耐久テストをしたことがありますが、ブッシュなし(ちょっと記憶があいまい)でも特に異常はなかった記憶があります。

 でも、ローターナットにブッシュがあってここがじか受けというのも・・・。

ピニオンベアリング配置
 1個になったピニオンベアリングはストッパーの後ろ。ベアリングとピニオン後端支持部の距離を稼ぐには、ベアリングを前に出したほうが有利で、ガタが出にくいはず。

 しかしあえて逆にしたのは、安定した穴加工のせいではないかと思います。剛性(たわみにくさ)の高い部分で加工したほうが精密に切削加工できるからでしょう。

 じっさい、ローターにほとんどガタがありません。

小オフセットギア
 オフセットを小さくすることでギアの効率を上げるというのが、ダイワの主張。オフセットとはピニオンギアとドライブギアの中心線間の距離です。

 オフセットを究極まで大きくとると、ピニオンがドライブギアからはみ出てカーディナル33などのスクリューギア(ウォームギア)となり、オフセットを究極まで小さく、つまりゼロにするとミッチェル308や408のベベルギアや、ダイナファイトのオンセンタースパイラルフェースになる・・・少し乱暴ですが、こう考えるとこのギアの特性が理解できそうです。

 じっさい、後者に近いこのギアは、ぬるっとした滑らかさではなく摩擦感のない軽さを持っています。

 オフセットを小さくすると、ドライブギア右の平歯車がメインシャフトに当たってしまうため、ドライブギアが抜けません。

 これに対しては、ボディー右のベアリング穴を通し穴にし、ベアリングは軸に六角スプリングで固定することで対処。

 このとおり、六角スプリングを外すとベアリングが外に抜け、ドライブギアが外れます。

 オシュレーションスライダーをメインシャフトに固定するネジの頭が見えませんが、ボディーの上方向から入っています。ネジが緩んで歯面に当たる事故を防ぐためか、ネジの長さを十分に取るためでしょう。

 ドライブギア右のベアリングをこういう固定法にしたのは、この状態でオシュレーションスライダーがメインシャフトから外せないからでもあります。

知恵の輪みたい・・・
 そのオシュレーションスライダーの付いたメインシャフトをどうやって取るかというと、ストッパーとピニオンギアを外してしまい、このようにごっそり外すのです。

 ようこんなこと考えはったなあ。

S字カム
 平行巻き機構はシンプルなS字カム。死点のコツンを殺すため、ギアのボスにOリングが入っています。ドライブギア右の軸にOリングを入れたところといい、神経質な人対策のようです。

 でもたしかに、音はしません。

サイドカバー
 サイドカバーは樹脂。ちょっと意外。でも、メーカーは巻き上げ強度テストをクリアするように設計するわけですから、強度は十分だったということでしょう。

 なんだ樹脂かというのは少し間違ってます。材料は目的ではなく手段だからです。

ラインローラーベアリング
 KIX系ではブッシュだったローラー支持部にベアリング。「ベアリングが入ってなきゃヤダ!」っていう人のほうが多かったのでしょうか。

タッピングスクリュー
 このへんはやはり低コストモデル。サイドカバースクリューは普通のネジではなく、それ自体がネジを切っていくタッピングスクリューです。

 私は某誌の取材でときどきセルテートを借りることがありますが、レブロスの回転感はセルテートそっくりです。軽量化された部品と効率のいいギアが、回転フィーリングを向上させているようです。

 自重もセルテート同等。価格は4分の1以下。最近のダイワリールの使用感を味わいたい人によさそうです。

 これであとピニオン後端のブッシュとローターブレーキがあったら・・・。

 それならフリームスKIXにすれば・・・といっても、カタチがねえ・・・。それまでにないデザインを思い切って採用した精神がいいとかなんとか言いつつ、実際自分が選ぶとなるとこうなっちゃうわけで。

 評論家がほめるクルマが売れないのはこういうことか・・・。(2006/10/10)

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