しぶとく308X
 バカな子ほどかわいい !?

私のミッチェル308X
 PFJの正規輸入が始まる前に買った並行品の308Xです。初期ロットだったからか元々こんなもんなのか、あっちもこっちも磨耗しまくりました。

 以下はそれをどうやって修理(?)して使っているかという記録です。


ベールアーム支持部
 私のリールは5回も釣行しないうちにベール反転機構が働かなくなりました。ベールアームの角度も明らかに内向きになりました。

 原因(の一部)は、Aのベールスプリングガイド(亜鉛ダイキャスト)の先とBのボスが磨耗したことです。

 Aは下の写真のベールアーム裏の穴にマイコンのラインローラースリーブ(昔交換してあまっていたもの)を押し込みました。

 Bは最初ボスの磨耗した側だけに0.1mmの真鍮板をエポキシで貼っていましたが取れてしまったので、全周をサンドペーパーで削ってから(もしするなら粉が他の部分に付かないようにしてください)、0.1mmの真鍮板をまきつけて接着しました(このときはセメダイン・スーパーXを使用)。

 ベールアーム角度修正のため、Cにコの字型に折った真鍮板をはめています。

ベール反転レバー
 これもベール反転不良の原因(というよりこっちが主原因)。レバーの先がごっそり減っています。亜鉛のレバーが相手側のボディ材に入っているガラス繊維で削られたようです。

 対策は、下の写真のようにアタリの部分に0.3mmの真鍮板を接着しました。

ウォームシャフトポール(PAUL=爪)
 このリールは使わないうちからウォームシャフトのグリスがガンメタリック色ににごりました。そして1回の釣行でウォームシャフトポールが摩滅しました。PFJからパーツを取り寄せてしばらく使ったものの、今年また回転に引っ掛かりが出てきました。

 そのウォームシャフトポールがこれ。やっぱり磨耗していました。このまま使ったら溝から脱線してウォームシャフトまでダメにしてしまう可能性があります。

 アイディールはこの部品に耐磨耗処理が施されています(*)が、部品取りにするわけにもいかず・・・。

*パーツナンバーは共通なので308X/300Xもロットによっては耐磨耗処理されている可能性があります。シマノのクロスギアピン(ウォームシャフトポール)と同じ黒っぽい色をしています。おそらく同じ処理だと思います。

とりあえずの修理
 とりあえず入れているのは98バイオマスター2000のクロスギアピン(ウォームシャフトポール)とカラーです。このままではカラーが薄いので「アブガルシア/03年版33の巻き上がり調整」で使ったウィルコのワッシャーの1mm厚を足しています。

 爪の部分はシマノのほうが短いですが、カラーで後ろから押しているため、長さはいっぱいに入っているはず。シマノのリールはその状態で使われているわけですから、十分のはずです。シマノのこの部品が磨耗した話は聞いたことがないから大丈夫でしょう。私のリールはまだ入れてみただけの段階なので、「大丈夫」というのはあくまで推測です。

 なおウォームシャフトポールを押さえる板とメインシャフトを止めるネジには「TIPS/ゆるみ止め」に載せている「こねじのゆるみ止め」を塗ります。


ちょっとした訂正(2007/8/29追記)
 上でシマノの部品でも「長さはいっぱいに入っているはず」だから十分だろうと書いていますが、やっぱりやばいかもしれません。というのは、ウォームシャフトの径が違うからです。確かめてから組めよ。

 上はシマノの98モデル2000/2500、下は308Xのウォームシャフトです。ノギスで測った外径/溝底径はそれぞれ、5.8mm/4mmと5mm/3mmです。シマノは現行品もこの寸法です。

 したがって、308Xに現行シマノのウォームシャフトポールを入れると、先のアールが違う分設計どおりの接触面積が得られないことになります。

 シマノでも現行でなければ外径5mm/溝底径3mmのウォームシャフトはあります。下の写真がそうで、89年のエアロビーストマスター#4〜8Aのものです(私のリールにはこのウォームシャフトポールを入れました)。80年代のモデルはこの寸法だったのです。

 したがって、308X、300Xを直すには、釣具屋さんに行って「86ツインパワーか87バイオマスターか88エアレックスか89ナビ2000のクロスギアピンとカラーください」と注文すれば・・・来るわけないやろ。

 というわけで、現行シマノのパーツを使うのは、残念ながらリスクがあると言わざるを得ません。ウォームシャフトポールの表面仕上げの差を見てもシマノの部品を使いたいところですが・・・。

 PFJにパーツを注文すればって? 私が最初に送ってもらった部品も在庫のリールをつぶしたとかでしたからね・・・。

 関係ないですが、下の写真の硬質クロームを省略したクロスギアにOKを出した品管担当者が私だったということは口が裂けても言えません(ハイ水か)。

スプールのがた止め
 私のリールはスプールの軸方向がたがひどく大きかったので、ウォームシャフト後端のブッシュのところにワッシャーを入れました。これも前出のウィルコのワッシャーが使えます(真鍮のワッシャーはもともと入っていたものです)。

ドライブギアベアリング
 これは対処しようがありません。亜鉛のドライブギア軸に直接ハンドルがねじ込んであるため、軸部がクリープを起こして太くなり、ベアリングが取れなくなっています。海水を入れたまま使わない限り大丈夫でしょうけど、せいぜいさびさせないようにしましょう。

 ベイトリールの中にはベアリングをスプールにはめ殺しにしているものもありますから、そう悲観することもないか・・・。

 これは亜鉛の軸だから起きるのであってねじ込みハンドルでもこれ以外のリールでは起きません。

糸掛かり対策
 308XはAのところに糸が掛かったまま巻いてしまうことがあります。ベールワイヤが内向きに寝ていると起きるので、この部分が水平になるようにBのところに真鍮板をかませます。真鍮板は両端を曲げてカバーを取り付ければ接着などは必要ないでしょう。

 ベールアームとこちら側が同時にアタリに当るようにワイヤを調整しますが、全体をやんわり曲げるようにします。決して90度曲げの部分を変形させてはいけません(かしめを回すのはいい)。

 それにしても、ひでえリールだなあ・・・と思うでしょうね、普通の人は。

 これに対して新しい300Xeシリーズは、ほぼすべての点が改良されています。ベール反転機構に磨耗しやすい亜鉛は使ってありませんし、ベールアーム支持部は日本のリールでも入れていない真鍮ブッシュが入っています。平行巻きもS字カムですから、故障もまずないでしょう。

 それでも私は308X、300Xのほうに魅力を感じます。

 ちょっとクセが強いものの、時間とともに納得させられるデザインは、シトロエンなどフランス車のようです。この画一的になったリール界において、こんな生まれた国(生産は中国ですがデザインはフランスでしょう)らしさを持つものが存在したこと自体、奇跡のようだと思います。

 軽いベール返しやハンドルデザインなどかつての味を残しているのも特筆すべきことでしょう。

 なんだか耐久性に不安があるのも、フランス車みたいでいいでしょう。よくないか。(2007/8/28)

MITCHELL

 わしのシトロエンAXもがたがたじゃわい。21万キロも乗れば仕方ないが。

 ベールアーム支持ボスの磨耗は、材料か成型状態に異常があったのだと思います。日本のリールは樹脂対樹脂で支持してもひどい磨耗は起きないからです。なお同じトラブルは(工場が同じ)カーディナルC602でも起きました。

 修理に使う接着剤を途中でエポキシからスーパーXに変えているのは、私がエポキシに対してアレルギーのような症状を起こすためできれば使いたくないからです。

 エポキシにせよスーパーXにせよ、ナイロンは接着できません。おそらくリールのボディーはガラス入りナイロンなので本来の強さは出ないかもしれませんが、ガラスは付くはずなので使っています。心配なのは接着剤自体の耐油性ですが、これは長く使わないとわかりません。

 どの修理(改造?)も、ご自分の責任において行ってください。関係ないですが、私は「自己責任」という言葉は使いません。この言葉は(小泉にそそのかされたとはいえ)日本人の醜さが露呈した事件でさかんに使われた言葉だからです。何年か前、私の書いた記事の見出しに「自己責任」が使ってあったことがありましたが、あれは編集部でつけたものであります。