308/408のピニオンベアリング
前のページで出てきた308および408のピニオンベアリングについて整理しておきましょう。
308のピニオンベアリング ミッチェル308のピニオンギアは現在のリールのようなベアリング会社のベアリングではなく、自家製のベアリングで支持されていました。 大きく分けて3種類あります。写真は2番目のイラストのものに当たります。 なお408も同じですが、ピニオンが細いのでベアリングレースに互換性がありません。 |
70年代までのダブルスラストベアリング
A:ローターナット(鉄?にクロームメッキ仕上げ)
B:D穴ワッシャー(薄いほう:ローターの上)
C:D穴ワッシャー(厚いほう:ローターの下)
D:玉押し調整ネジ(鉄系にメッキ仕上げ)
E:ベアリングレース(ステンレス?)
F:ボール(各17個)
G:ベアリング本体(ステンレス?)
H:ピニオンギア
70年代まで使われていたダブルスラストベアリングです。BとCの間にローターがきます。Dの玉押し調整ネジでベアリングの隙間をぎりぎりまで攻めた後、ローターに切られたネジ穴にねじ込み、Aのナットで固定します。
自転車のハブみたいな構造になっていますが、Eのレースはハブのようにネジになっておらずピニオンギアの軸部に対してフリーです。
ベベルギアのころ使われていたものです。作られた時期やロットにもよるようですが、ベアリングからサーっという感じのノイズがするものがあります。しかし、さすがに摩擦が少なく回転は軽くなります。
80年前後のダブルスラストベアリング
A:ローターナット(クロームメッキ仕上げのち真鍮のままに変更)
B:玉押しネジ(真鍮)
C:調整ワッシャー(調整によって枚数や厚みは変わります)
D:ベアリングレース(ステンレス?)
E:ボール(各17個)
F:ベアリング本体(ステンレス?)
G:ピニオンギア
少しコストダウン(?)したものです。ピニオンギアの面加工とローター前後のD穴ワッシャーが廃止されています。Aの下にローターがきます。
Bの六角ナットが玉押し調整ネジですが、調整するのではなくいっぱいに締めたときちょうど良いすき間になるようになっていて、特殊な工具で締めてありました。おそらくそれまでのものではユーザーのローターナット緩めによって調整が狂い、ギアの破損などにつながっていたからでしょう。
ベベルギアのころだけでなくフェースギアになったころ(80年代中ごろ)まで使われていました。
80年代後半以降のシングルスラストベアリング
A:ローターナット(真鍮)
B:玉押しネジ(真鍮)
C:調整ワッシャー(調整によって枚数や厚みは変わります)
D:ベアリング本体(ステンレス?)
E:ボール(17個)
F:ベアリングレース(真鍮)
G:ピニオンギア
最終形というか、もっともコストダウンの進んだものです。Dの内径がそれまでのものより小さくなり、ブッシュとしてGのピニオンギアの軸部を支持しています。フェースギアになってしばらくしてからこのタイプになりました。これもAの下にローターです。90年代になるとBとローターの間に糸巻き調整用と思われるワッシャーが入ります。
Dは黒い表面処理がされていましたが、90年代に入るころステンレスの肌そのままになりました。
ベアリングはラインによってローターが前にに引っ張られる力を受けるだけです。比べないとわからないレベルですが、やや回転はねっとりします。しかし、もともとオンセンターのギアは効率がいいので、負荷時の巻き上げは十分軽いです。
上の2タイプのようなベアリングのシャーっという音は出にくいようで、かえって静かかもしれません。
本体の向き 本体には向きがあります。セットスクリューの溝は本体の後ろ寄りにあるので、向きを間違えるとギアが深くかみすぎて壊れてしまいます。注意。 70年代の終わり(?)くらいから前のほうに目印のラインが入っています。 |
ダブルスラストのものは、シャーっというやや耳障りな音がするものが多いようです。いまどきのベアリングなら玉が錆びたときのような音です。そう考えると事実上のブッシュになった90年代のものが意外に一番気にならなかったりします。
ところが、人から譲り受けた60年代モノらしき408だけは例外で、ほとんどそういった音が出ません。昔の部品は良かったということなのか、何年も使い込むうちにベアリングまでなじんで音が消えるということかは不明です。
さて、仮に308や408を今作るとしたらどのベアリングにしましょうか・・・。でも、いまなら既製品のベアリングでしょうね。規格品ですから半永久的に入手できます。滑らかさ、静かさもずっと上です。
でも、ベアリングの玉調整ができる仕組みなどは面白いですね。自転車マニアの中にはハブをばらしてグリスアップする人もいますし私もやりましたが、これはこれでなかなか楽しいものです。ミッチェルはそんなマニアのことを考えたのではないかもしれませんが、同じことができてしまうリールというのも面白いですね。
(2006/5/17)
MITCHELL spinning reels
[注意]
・・・と、いうようなことを書くと、ベアリングをばらしたくなってしまうかもしれませんが、慣れない人はやらないほうがいいでしょう。中古品で前のオーナーがローターナットを緩めてしまい、それが原因で玉が遊んでしまっているようなケース以外は触らないのが無難です。どうしても必要な場合は「中古リールはココに注意」のページを見て十分注意してやってください。
[さらに注意]
その場合でもばらせるのは一番上のタイプだけです。2番目以降は玉押しの六角ナットがロックしてありますし、3番目はネジにゆるみ止め剤がついていてローターからも取れません。無理にばらそうとすると壊れます。