メインシャフト
 メインシャフトというか、スプールシャフトというか、ま、小ネタですわ。

60年代の4枚爪
 恐らく最も古いタイプです。シャフト先端の爪が4枚です。

 シャフトそのものはメッキされた鉄です。シャフト後端はこれ以降のものより1mmくらい長く、少しでも後端支持部の磨耗やガタを防ごうとしています。

70年代の2枚爪
 爪が2枚になりました。コストダウン? とんでもない。このタイプのほうがスプール受けがカチリと止まり、この部分の軸方向ガタもほとんどなくなっています。

 細かいことですが、少しでもスプールの軸方向方ガタを抑えたいプラナマティックには、こっちのほうが安心のような気がします。

 上で述べたように、スプール軸後端は1mm短くなっていて、部品のばらつきや回転不良に対応しています。やや量産を意識して遊びをもたせているということですが、特に不具合はありません。

80年代
 「フランス製」の最後期に樹脂部が黒色になりました。それだけのことですが。

 シャフトはここまで鉄のメッキ仕上げです。

真鍮製シャフト
 80年代後半にシャフトが真鍮(といっても恐らく硬いもの)になりました。理由は不明。理論上は鉄よりたわみが大きく、ピニオンギアの支持剛性は落ちるはずですが、実用上は変わりません。

 最初真鍮粉が出ますが、その後のピニオン内面や後端支持部とのなじみはいいみたいです。

 古い308や408の中には、シャフトが錆びたものもあります。海用モデルの302は70年代から真鍮シャフトでした。そう考えると、錆対策だったのかもしれません。

308プロ・プラナマティック
 これは日本専用に作られた308プロ・プラナマティックのメインシャフト。それまで樹脂だった部分が真鍮削り出しになっています。当時308などの生産は台湾に移管されていました。それで、フランス製部品の割合を増して「メイドインフランス」と書くために、わざわざフランスで作ったのではないかと推理します。

 金属イコール高級と思っている人も多そうですが、樹脂の3〜4倍の比重の材料をわざわざ使うのは、合理的ではないですね。スプール軸にラインを落としたときも、ラインを傷つけやすいですし、残念ながらメリットなしです。

エラー品です
 これはとほほなエラー品。308Aプラナマティックのシャフト(下)です。プラナマティックに対応して、巻き上がりを前巻きにするべく、スライダーリテーナーの穴をずらしています。
 ところが、何がどうなったのか、反対にずらしてしまいました。グラインダーで削ったようなバリ取りといい、何をやっとるんやという感じの部品です。

 悲しい・・・。

 もちろんエラーコインのような価値は、ありません(エラーコインに価値があるほうがおかしいような気もするが・・・)。

 アブやミッチェルは、古いものほど凝っていて、後はだんだんせこくなる・・・そう思ってとにかく古いものがいいという考えに陥っている人もいそうです。でも、メインシャフトの爪の例を見ても、そう一概に言えるわけではありません。

 また、シャフトの樹脂部に限らず、金属の1/4〜1/3の比重の樹脂部品を合理的に使うのは、私は賢い設計だと思います。たとえばカーディナル33/44のベールアーム(アームカム)が樹脂なのも同じことです。

 と、いうようなことを、スピニングリールの背骨から、考えてみました。(2005/1/4)

MITCHELL spinning reels