ソリハシセイタカシギ

 アボセットはソリハシセイタカシギ・・・って、ギジー8月号で読んだんだろって? ちがわい。アングリングファン5月号でそう書いたけど、レイアウトの関係で削ったんだもんね。日本で最初にこう書いたのは僕だもんね。どうでもいいか・・・。

アボセットG500UL
 ミッチェルの新型アボセットです。待っててよかった、並行品より安かった。

 このデザインは300Xシリーズから300っぽさを取り去ったものです。でも、このリールはミッチェルのサイトによると、 " Styled after the famous Mitchell 300 " だとか。どこが? アフター300じゃなくて300Xということか?

 GはゴールドのG。あちらではスタンダードなS(シルバー)もあります。

 メイドインチャイナです。

中身は・・・
 中身はカーディナルC300シリーズと共通です。でもそれは、滑らかで優秀な駆動系を得たということ。歓迎すべきことでしょう。欲をいえばピニオンの後ろにブッシュが欲しいところですが、特に極端な磨耗は生じないみたいです。シマノ・ナビやダイワ・エンブレムのLBモデルも直受けですから、ボディ樹脂の成型状態がよければ問題ないのかもしれません。

 スプール往復は普通のリダクション。ただしカーディナルC300シリーズと同じく、1000番以上はS字カムになります。特に1000は500と同じボディでカムを変えて、スプールをロングスプールにしています(C301がそうだからおそらくそのはず)。S字カムのストロークが増える特性(「アブガルシア/C300の平行巻機構」のページ参照)を利用しているわけで、スプールの深さだけ変えた日本メーカー品とは違います。

 面白いのはスプール軸。スプール受け部は4mm径ですが、ピニオンに入る部分は3.5mm径に落としています。ピニオンを小さくしてハイスピードにするためでしょう。

ギアが同じで悪いか
 なんだ、カーディナルC300と同じリールかという人もいそう。でもさ、いまどきギアの滑らかさなんて、どこも十分でしょ。いまギアにこだわるなんざ、時代錯誤、重箱の隅ですやん(それなのになんで日本メーカーはいまだデジギアだの3Dギアだのっていってるんだ?)。

 ギアが共通なのは、シトロエンがプジョーのコンポーネントを使っているのと同じことと思えばいいのです。ましてシトロエンもミッチェルも、エンジン(ギア)がすばらしく滑らかとかいうキャラクターじゃないわけで、それ以外の味が残っていればいいのです。

 ま、こういうものを使いつつ、大メーカーに吸収された哀れさを、ファンはしみじみと味わうわけですなあ。

思想は生きているその1
 カートリッジスプールです。ミッチェル300のワンタッチスプールの思想を持ちつづけています。欲をいえば、硬質スプールリングが欲しいかなとか、スペアもアルミがいいなとか思いますが・・・。

 でも、この樹脂スペア、この手のおまけスプールに珍しく、表面が滑らかでバリも出ていませんでした。中国の技術も上がってきているようです。

思想は生きているその2
 ミッチェルといえばハンドルノブ。300Xシリーズと同じようなデザインですが、はるかに握りやすくなっています。2000、4000のノブも釣具店で触ってみましたが、これがまたさらにいい。

思想は生きているその3
 ミッチェルといえば軽いベール反転。アボセットはベール支持部に真鍮ブッシュを入れ、ベールの動きをスムーズにしています。

ベールストッパー
 ベールが閉じたときの衝撃を受けるストッパーを、ベールアーム(アームカム)の反対側のバランサーにも付けています。これによりベールワイヤの疲労破壊とと変形を防ぎます(「ブレーク?ブロークン?/ベールの破損」のページ参照)。

 ただし500はややストッパーが短く、先しか当たっていませんでした。ただちに問題にはならないと思いますが、私はローター側にエポキシで肉盛りをしました。

大胆デザイン
 同じグループにオーソドックスなカーディナルC300があったからといえる大胆デザイン。ミッチェル300をモチーフにした左右非対称ボディなどもなかなかカッコいい。

この問題は?
 カーディナルC300の弟分(姉妹品といわないのはリールを表すフランス語 " moulinet " が男性名詞だからだよん)ということで気になるのがコレ。人差し指の届きにくさ。でも、500、1000はさすがにまったく問題なしです。

 釣具店で見たかぎり、2000、4000はちょっと遠い感じ。対応するC302よりはましだったように思いますが、測定したわけではないので、購入前にロッドに付けて確認したほうがよさそうです。

 これらのリールを作っている中国メーカーは、かなり高品質なリールを生産する能力があるようです。でも、残念ながらリールの使い方は知らないみたいです。ミッチェルやアブサイドでしっかり指導していく必要がありそうです(どこまでが中国サイドでどこからがPFサイドか知りませんが・・・)。

【2005/5/6追記】下のとおり2000は届きます。4000は同じくらいかやや遠いくらいです。なお、アボセットはピュア・フィッシング・アメリカの開発だそうです。

このヒトの立場は・・・
 オモリを付けまくらずにバランス取りしたローター、適度な摺動スピードの安定した回転、スムーズなギアリング、握りやすいハンドル・・・まことに遺憾ながら、すべて300Xシリーズより上です。コレがアボセット最大の欠点かも・・・。

 ホント、300Xシリーズの立場がありません。たぶんこっちのほうが、開発にミッチェルがかかわった割合が大きいと思うのですが、どうするんだミッチェル!

 このリールの登場で、300Xシリーズがものすごく中途半端になってしまった印象があります。こうなったら、300Xからクラシックテイストを取り去ったアボセットに対し、300Xからエグミを取り去ったもっとクラシックなイメージのものを作ったらどうかしらんと思います。

 クォーツ式のインスプールか、いっそホントの(?)308をもう一回作るか・・・。しっかり出来ているアボセットを見ると、この工場で308とか新300(さすがに8枚ギアはいらない)を作ってみて欲しいなと思ってしまいます。

 でも、こういうのを「死んだ子の歳を数える」とか言うのでしょうか・・・。素直にアボセットあたりを21世紀のミッチェルとしてみていったほうがいいのかなあ。 (2004/7/20)


アボセットC2000
 これは最近買ったアボセットC2000。心配していたスプール位置ですが、人さし指は届きます。距離はシマノ98モデルの3000番くらい。ちょっと遠いけど合格です。

 サイズはABS以前のダイワ2500番や同時期(98モデルまで)のシマノ3000番くらい。このサイズで275gの自重は軽量な部類。軽いのはメインギアが小さめでボディーがコンパクトなためのように見えます。ギア効率のために大口径ギアを入れて、そのためにリールが大きく重くなったんじゃ本末転倒なわけで、これが正解のように思います。

 カラーもオーソドックスですし、ええんやないでしょうか。 (2005/4/29追記)

MITCHELL spinning reels