フェースギアその1
ギアの専門家は読まないように!?
フェースギア 80年代半ばころから使われている308Aのフェースギアです。 最初はそこそこ静かですが、すぐにごろついてきます。 このギアについて考えてみます。 メインギア歯数49、ピニオン歯数10のギア比4.9:1。これは、表示上のギア比5:1に対しさばを読んでいるのではなく、歯を総当りさせて、磨耗やグリスの回りをよくしようというもの。 |
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ベベルギア これは70年代までのベベルギア。コストがかかり、組み立て精度も必要なので、今では使われません。 まずこれを、摩擦車に置き換えて考えてください。 |
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ベベルギアのかみ合わせ ベベルギアを摩擦車に置き換えると、この図のようになります。 ギアが円すい形をしていて、両方の頂点はギアの軸が交差するところにきます。 この摩擦車なら、摩擦面でスリップは起きません。 |
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フェースギアのかみ合わせ 同じようにフェースギアも考えます。 フェースギアの場合、ピニオンが円筒状になっています。すると、摩擦面は必ずスリップを起こします。図が、ゴムか何かでできていると思って、考えてみてください。 青い線で示した部分が、ギア比どおりの回転をしているとしたら、それより外はメインギアのほうが速く、内側はピニオンギアのほうが速く回っているはずです。 |
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ダイヤカット フェースギアの歯を正面から見ると、トランプのダイヤのような形に見えます。だから(だと思う)これを、ダイヤカットのフェースギアといいます。 ダイヤの横の対角線のところが、上の図の青いラインにあたります。これより外側も内側もかみ合いに無理があるので、歯がテーパー状になっています。 では、この青いラインの直径(ピッチ円直径)を求めてみます。 まず、ピニオンのピッチ円直径を求め、それをギア比倍してメインギアのピッチ円直径を求めます。 ピッチ円直径とは、上の図のように摩擦車に置き換えたときの、摩擦車外径だと思ってください。フェースギアのメインギアにおいて「ピッチ円直径」というのが適当かどうかはわかりませんが、上図の青い円の直径を、ここではこう呼ぶことにします。 |
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モジュール ピニオンのピッチ円直径を出すために、ギアのモジュールを出します。 モジュールとは歯の大きさをあらわす数値で、ピッチ円直径を歯数で割ったものです。 ピッチ円直径は直接測れませんので、歯先円直径を測ります。このピニオンの歯先円直径は7.8mmです。 歯先円直径と歯数、モジュールの関係は、 歯先円直径=(歯数+2)×モジュール なので、 7.8=(10+2)×モジュール モジュール=7.8÷12 =0.65 となり、モジュールは0.65になります。 |
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ピッチ円直径 ピニオンギアのピッチ円直径を求めます。 モジュール0.65、歯数10です。モジュール、ピッチ円直径、歯数の関係は、 モジュール=ピッチ円直径÷歯数 なので、 0.65=ピッチ円直径÷10 ピッチ円直径=0.65×10 =6.5 となり、ピッチ円直径は6.5mmになります。 |
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メインギアのピッチ円直径 ピニオンのピッチ円直径6.5mmに対し、ギア比4.9:1でかみ合うメインギアのピッチ円直径は、4.9倍してやればいいのですから、 6.5×4.9=31.85 で、31.85mmとなります。現物をノギスで測っても、これくらいなので、計算はあっていそうです。 さてここで、昔リールを設計していた人に聞いたことですが、メインギアのピッチ円直径より内側は、使えないのだそうです。この部分をピニオンに当てると、回転が重くなってしまう(本人は「回らない」といっていました)のです。実際、このギアを観察してみると、ピッチ円直径(ダイヤの横の対角線)より内側は、接触しないようにカットしてあるようです。 そうしてみると、このフェースギア、歯幅(33.6−29.1)÷2=2.25mmのうち、実際に歯として働いているのは、(33.6−31.85)÷2=0.875mmしかないということになります。 だから、狭い面積に力が集中して、すぐに磨耗してしまうのです。 |
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こうすればいいのですが・・・ ミッチェルのフェースギアの耐久性を増すには、ピッチ円直径をより内側にずらし、ピッチ円直径より外側を広く取ればいいということになります。 これはアブマチック170のフェースギア。ピッチ円直径の外側が広く取ってあります。 でも、こういう設計を308でできるかというと、これは難しい。もともと308は4.4:1のベベルギアでスタートしました。そのボディに5:1のギアを入れることから、無理があるのです。 |
でも、なんとかならんかなあ、とか、最後の最後にちょっと改良したらしいぞとかいう話は、次のページで。(2003/8/5)
我ながら、なかなかアカデミックなページやなあ・・・と思いつつ機械工学便覧をながめていたら、あらら、“標準歯車では歯数が少ないとき(圧力角20度のとき歯数17枚以下)切り下げが起こり・・・”、したがって“転位”というのをすると書いてあります。
切り下げというのは、歯数の少ないギアを歯切りすると、歯元がやせてしまうこと。転位というのは、この場合浅い切り込みで歯切りすること(正転位)です。
となると、歯数10の308Aのピニオンも転位してあるのかということになります。転位すると歯先円直径も変わると書いてあります。じゃあ、歯先円直径からモジュールを算出した上の計算は間違い?
でも、それにしてはメインギアのピッチ円直径の計算はぴったりあっているように見えます。モジュール0.65の下は0.6になります。このピニオンは転位していないのか、ブランク寸法を変えずに少しだけ転位して歯切りしたのか・・・。
うーんわからん。うちの学校、「うちの生徒にはギアの計算は無理です」って、この部分飛ばしよったからなあ・・・。(2003/8/5追記)
MITCHELL spinning reels