あらためて302
 ミッチェルのスピニング300に続いて生まれたのが海用大型302でした。

ミッチェル302
 戦後すぐ300で成功したミッチェルの第2弾。1950年代初めに登場した海用大型の302です。写真は70年代のもの。300からはがらっと構造が変わっています。

 スプール径72mm、自重557g(実測)、ギア比3.75:1、7号200m。いまの品番だと8000番くらいでしょうか。

スプール着脱
 300のワンタッチスプールと同じように見えますが、プッシュボタンの代わりにマイナスのネジが見えています。押しても取れません。

 スプールを時計回りにねじるとドラグが作動します。反時計回りに回すと・・・。

取れました
 反時計回りに回すとスプールがスプール受けやドラグ機構ごと外れます。メインシャフトの先端はネジになっていて、時計回りに回すことで、スプール受けに固定されるようになっています。

 スプールの中の機構です。一方向にだけドラグが作動し、反対方向ではロックされる機構です。

 この機構、うまく使えばいまのリールでも有効そうです。(いまのリールじゃないけど)クォーツもこれを応用したらプッシュボタンワンタッチとカートリッジスプールを両方採用するようなややこしいことにはならなかったのでは?

ラインガイド
 ラインガイドは硬質クロームメッキの固定式。これも300と同じで、タングステン(?)固定のハーフベールを経てこのタイプに変わっています。ベールワイヤがベールアームのところのネジにまでつながっています。

PUM
 オプションで用意されるPUM(ピック・アップ・マニュアル)のベールです。ヴァンスタールみたいにベールワイヤのない大口径ラインガイドにもなりました。

3ピースボディー
 300とは構造ががらっと変わっています。8枚ギアから1対のベベルギアになりました。ボディーは3ピースで、上下対称。左右のモデルを同じ金型から作るのは300と同じ。

 メインシャフト後端はボディーのレールで支持。

ベベルギアとプラナマティック
 ベベルギアはドライブがアルミ合金、ピニオンは鉄系にニッケルメッキされているようです。

 308や408でおなじみのプラナマティックを採用しています。時々クイックな動きをまぜつつ基本的には大幅にスプール往復を減速する機構です。スプールが減速する分、回転の軽さとラインの放出性に優れます。

CWアダプター
 これはプラナマティックを外してハンドル1回転1往復のCW(ミッチェルはCrossWrapではなくCrossWindといいます)に変えるアダプターです。荷重の大きなアメリカの海釣りでは、ラインの食い込みを嫌ってこれに替える人も多いそうです。

ピニオンとローターの固定
 いまのリールの2面カット・小判穴ではなく、キーとキー溝になっています(キーといってもピニオンに入る側が丸なので厳密にはキーといわないのかも)。

ソルトウォーターシール
 ローターの下に樹脂製のパッキンが付いています。

ベアリングシール
 オープンベアリングの前面に海水浸入を防ぐ樹脂ワッシャー入りです。

ルーブポート
 写真のモデルでは廃止されていますが、古いものにはギアのかみ合うところにコインで外せるルーブポートがありました。シマノのオイルインジェクションと同じ。

 面白いのはプラナマティックとクロスワインドが切り替えられるアダプターです。オシュレーションについては蜜巻きがいいとか綾巻きがいいとかいろいろな見方がありますが、同じようなことが302の時代から言われていたのでしょう。

 どっちがいいかは、使う人と状況によります。

 そう考えると両方できる302は面白いし、賢明なリールだと言えます。もっとも、今のリールは複雑なので、こういうわけにはいかないでしょうけど・・・。

 オシュレーションスピードにはじまり、海水シールや“オイルインジェクション”など、50年前からリールに関するあれこれは同じなんだなあとあらためて思わされます。 (2006/2/13)

MITCHELL