あらためて304
 日本ではあまりなじみのない304ですが、実はミッチェルのルーツなのです。

ミッチェル304Cap
 ミッチェル300の前身Capをルーツにもつ304です。Capは300登場以前にミッチェルの前身Carpano & Ponsが作っていたスピニングリール。1930年代に生産が始まっていました。

 これは60年代の304です。300、302、304、306、308と開発順に品番が与えられたわけですが、Capが品番を与えられて300シリーズの一員になったのが302の次だったので、304となったようです。

 スプール径50mmは300と同じ、幅はやや狭くなっています。ギア比は目測で3.2:1、実測自重230gと軽量です。

スプール
 軽量化のためかコストのためか、スプールの構造が独特。アルミの板をプレス成型したものをかしめて組み立てています。芯の部分もアルミ板を曲げたものを2枚使っています。

ドラグ
 ドラグも独特。なぜかノブ側がオネジ、シャフトの先がメネジです。スプール前面にワッシャーがはめ殺しで入っています。メインのワッシャーはスプール受けのファイバーのようです。

 昔の構造を使ったのかな。

スプール軸
 スプール受けの下にあるのはドラグ調整幅を出す板バネ。ドラグを締めこむとスプールが下に下がっていきます。もしかすると、ドラグを強く締めるとき、太い糸に合わせて巻き形状を変えようとしたのか?

 違うやろな・・・。

ラインガイド
 生産時期が古いせいか、300などより廉価(?)モデルだったからか、固定ガイドがタングステンカーバイドではなく硬質クロームメッキになっています。ただ、私の感触ではタングステンガイドは糸のすべりが悪いので、硬質クロームのほうがいいような気がします。

 このモデルに関しては、生産が60年代までだったせいか、ローラーガイドのものは存在しません。

ハンドル
 ショートクランクと指にフィットするツイストノブ。ハンドル回転半径は37mmくらいです。ハンドル1回転50cmのロースピードですから、すばやく巻ける長さにしているようです。

内部機構
 ピニオン真鍮、ドライブアルミのベベルギアを使っています。308などのようにボディー側にドライブギアが付くのではなく、サイドカバーにギアが付く300や302に近い設計です。

インサートパイプ
 300同様にスライスしたスチールのパイプを入れてメインシャフトやピニオンを受けています。

ドライブギアとストッパー
 ストッパーはドライブギア軸に掛けるタイプ。ドライブギア軸は焼入れした鉄のよう。しかも、表面が研磨してあります。ブッシュは鉄系焼結。軸受けが短く細い分、材料や仕上げをよくしているようです。

 ストッパーは魚が掛かるまではフリー、ランディングネットを手にするときにオンにするとマニュアルにあります。いまどきの瞬間ストッパーに慣れている人は想像もできないでしょうけど、これを使いこなすのもいいものです。

ルーブポート
 300同様ルーブポート採用です。

クロスワインド
 304はハンドル1回転でスプールが1往復するクロスワインドでした。ドライブギアが下の314と共通なので、302のところでも出てきたアダプターが入っています。

プラナマティック
 上級モデルの314はこの部分にプラナマティックを入れていました。同時にハンドルは308などと同じカウンターバランス付き、スプールもワンタッチでした。

マニュアル
 スピニングの使い方をしっかり書いたマニュアルです。10時の位置で構え、1時の位置までバックスイングする様子を示しています。何回も言いますが、日本のメーカーは見習うべきですな。いまはアブやミッチェルもぼろぼろですが・・・。

 いちいち書ききれないくらい詳しいマニュアルで、フェザリングはもとより、なぜスピニングは左で巻くかに関する説明まで、自分たちの売ったリールをちゃんと使ってほしいという気持ちが伝わってきます。どこぞの国のメーカーとは・・・。

 キャスティングを実演しているのは、当時のガルシア社の社長のようです。シマノやダイワでは考えられないことですね。

 もちろん40年前のリールですから、特殊な機能をもっているわけではありません。でも、スプール径50mmで230gの軽さは、余計なものさえなければリールって軽いんだなあということがわかります。

 いまだったらピニオン支持にベアリングを入れれば、(おそらく)手間のかかるパイプのインサートも不要でしょう。もう少しギア比を上げてハンドル1回転で60cmくらい巻けるようにして、ラインガイドを回転式にすれば、いまの時代でも十分使えるはず。
 308もそうなんですが、機能はこのままで軽さとフォルムを生かした(ただしギアをもう少し静かにして)ものがあったらいいなと思います。特に304は大口径スプールと軽量ボディーで、ものすごく使用範囲の広いリールになるはずです。

 魚は40年前と同じです。でもって、こっちは万物の霊長(というほど賢くないような気もするが)たる人間様なわけです。なら、こういう必要最小限機能の道具でのぞむのもカッコいいと思いますね。

(2006/3/14)

MITCHELL spinning reels