90'sを見直す

 一見とほほな90年代モデル。でも、この中にもしっかり“ミッチェル”はあります。

ワンタッチスプール
 47年登場のミッチェル300以来のワンタッチスプールです。スプール交換でドラグ調整が変わるフロントドラグにこそ、この機構が生きます。
ハンドル
 70年代のものにはかないませんが、滑り止めを付けてグリップ性をよくしたり、一見流行に流されたようなウッドでも大きすぎなかったり、ハンドルへのこだわりは残っています。
ベイルトリップ
 あくまでスムーズなベイル返し。国産品のガチャンという感触とは無縁です。
ベアリング配置
 同じ3BBのシマノアルテグラとミッチェルプレステージです。海水浸入などでトラブルを起こしやすいラインローラーはブッシュにし、まず駆動系をがっちり固める。ミッチェルのほうが正攻法、そして実用主義です。
 国産は、「ベアリング入りラインローラー」とカタログに書くことを優先しているのでしょう。
マルチポイントストッパー
 これもミッチェルの実用主義。ローターが5度や10度逆転したからって、魚が逃げますか? よりシンプルで軽く、信頼性の高いマルチポイント式です。もっともこれ以降はローラークラッチになっていきましたが。
ノーマルストッパー
 これは97年登場のミッチェル230のストッパー。昔の大森や松尾カーディナルのようなシンプルな方式を採用しています。日本のメーカーなら絶対やらないでしょう。軽さや防塵性などを考えたら、いちばんいいんですけどね。
流行には乗らない
 90年代はじめに出たプリビレッジです。シルバーが流行色だったのに、あえて暗色系のカラーに。しかも緑色。ほんとのところ、素直にシルバーにすればけっこうカッコよかったと思うのですが、そういうことはやりたくないのでしょう。
卵型デザイン
 色に関しては「改心」したプレステージです。伝統の卵形を守りつつ、かたまり感のある彫刻的造形。シンプルながらきれい。
誰にも似ていない
 けっしてカッコいいとはいえないクォーツですが、ひとつ言えるのは「誰にも似ていない」ということ。モチーフになったはずのミッチェル300にすら似ていないのはまずかったですけどね。
これは違うぞ
 ミッチェルの独自路線で思い出しましたが、ダイワのエアベールに意地を張って、わざわざ細くしたシマノのベールワイヤ。でも、かえってよくない方向にいっているのですから、これはミッチェルとは違いますわな。

 47年登場以来のスプールやハンドル、ベイル返しへのこだわりを守り抜き、実用主義、独創性を重んじる。やはりこれらのリールたちも“ミッチェル”です。
 一見商売上はうまいとはいえないものも多くあるように見えますが、どうなのでしょう。SやDのまねばかりして消えていったMやRなどの日本メーカーのことを考えると、このミッチェルのがんこともいえるやり方は、あながちまちがっていたとはいえないのではないでしょうか?(2003/5/9)
MITCHELL spinning reels