ベールスプリング

 308や408のベールスプリングの移り変わりです。推理している部分もありますので、「ちがうぞ!」という方はご連絡ください。

おかしいなと思ったのは……
 最近入手した60年代のものと思われる408です。いただいたときにベールスプリングが折れていて、複製スプリングを入れました。ところが、なぜかベールが半開きになります。ベールワイヤの歪みかと思って、いろいろやってみましたが直らず、結局ネジにワッシャーをかませてなんとか動くようになりました。
これがオリジナル?
 で、そのときは折れたスプリングを捨ててしまったので、気づかなかったのですが、最近このHPを見た方から、60年代の408からこんなスプリングが出てきたという情報をいただきました。
 なんとなんと、私がオリジナルと思っていた70年代モノのスプリングより、巻き数が少ないではないですか。
 線径は0.65mmです。
70年代モノ
 これは70年代の308から出てきたスプリングです。上の写真と比べてください。巻き数が違います。
 それと、写真では少しわかりづらいですが、線材同士にすきまをあけて巻いてあります。
 線径は0.65mmです。
 
80年代モノ
 これは80年代初めころのもの。巻き数は同じですが、線材同士のすきまがなくなっています。
 ほかには、Lポイントの長さが、ベールアームの変更に合わせて、ほんの少し長くなっています。
 線径は0.65mmです。
複製スプリング
 私がバネ屋さんに作ってもらったスプリングです。
 「リペアパーツ」のページでは70年代モノのコピーと書いていましたが、厳密にいうと80年代初期モノのコピーということになります。 スミマセン。あのときにはこれがオリジナルと思っていたので……。でも、もちろん70年代モノのリールにつけても問題はありません。
 線径は0.65mmです。
90年代初期モノ
 90年代初めの308プロに入っていたスプリングです。反発力を増すためにLポイントがずれています。
 線径も0.7mmに太くなっています。
90年代後期モノ
 90年代の308や310ULに入っていたスプリングです。なんでこんなふうに耐久性を落とすようなことを、と思っていたのですが、考えようによっては60年代に戻したともいえます。でも折れます。ベールアームのラッチが掛かる部分も減ります。百害あって一利なしです。
 線径は0.65mmです。

 で、一番上のスプリングが(前オーナーが組み替えていないかぎり)最初に作られたスプリングだったということになります。新事実発覚であります。
 そうなると2つのことが言えます。

 まず、「ミッチェルのベールが壊れる」という風評は、60年代のモデルから出ているのではないかということです。そうなると、70年代以降のものの耐久性は、かなり高いものであると推測できます。

 もうひとつは90年代の台湾製308のスプリングの巻き数が減ったのは、60年代の図面に基づいているということです。もしかすると、なんらかの手違いで昔の図面を台湾に送ってしまったのかもしれません。バッチだけが310ULの中国製“308”に私の複製スプリングを入れたら、ベールが半開きになったという情報もあり、その点からもそんな推測ができます。

 で、リペアパーツのページを見て、複製スプリングが欲しいという方にお願いです。ご自分のリールが60年代のものでないことをお確かめください。ベールが半開きになる恐れがあります。目印は、ノブが厚いこと、メインギアのブッシュが鉄系焼結ではなく真鍮の削りだということなどです。(2003/2/18)

注意:一番上の60年代リールや最後に作られた中国製(足の裏にMITCHELLと文字が浮き出していてメイドインチャイナの丸いシールがはってある)のものには正規の巻き数のスプリングは使わないほうがいいようです。組み込めても、スプリングを収める深さが不足しているので先端が内側に押し出された状態で作動し、この部分から折れてしまいます。これらのタイプのリールのスプリング寿命を延ばしたい場合は、スプリングは交換せずベールアーム裏の穴をあけなおすのがいいと思います。計算上、50度ずらせば巻き数を増したのと同じ効果があるはずです。80度くらいまでずらしても使えますし、寿命はさらに延びるはずです。穴は1mmくらいのドリルとピンバイスがあれば手であきます。なお、巻き数の少ないスプリングが入っていても台湾製時代のものはスプリングの入る部分が深いので正規の巻き数のものを入れてもだいじょうぶです。(2007/6/13追記)

MITCHELL spinning reels