04ナビ1000
アングリングファン誌04年9月号の特集記事執筆中、問い合わせメールをシマノ開発に送ったついでに「ナビ1500はでかいから、500があるといい」と書いたところ、「ふふ、今後の追加機種を見ろ」と不敵な返事がきました(若干脚色しています)。なわけで、さっそく買ってみました。
04ナビ1000 最初のナビは1989年登場の、シマノ初の内げりロングスプールスピニングでした。同時にシマノ・ロングスプールスピニングとして初めて、輸出を意識したモデルでもありました。現在のナビは初代から数えて4代目にあたります。 余談ながら初代89ナビ1000は、テスト担当者がいいかげんな人だったために、初期のものにうっかり落すとけつが破れるとか、ベールがいかれるとかいった問題が発生しました。その担当者が私だったなどとは、口が裂けても言えません(ハイ水か)。 余談ついでに、ナビという名は、ナビゲータのナビでも自動車雑誌のナビでもなく、シマノ社屋から西を臨んだとき見える「ナビタス」という会社の看板を見て決めたとか。89モデル開発当初はタスクフォースという名前でした(ん、タスクフォースはエアレックスのほうだったかな・・・)。 メイドインマレーシアです。 |
逆転現象 ライバルはこの人、プリマックス500/1000(スプールの深さ違い)です。スプール径とギア比を比較すると・・・ ・04ナビ1000:スプール径39mm、ギア比4.7 ・プリマックス:スプール径36mm、ギア比5.2 つまり、ナビのほうが(ダイワが打ち出しているはずの)「大口径スプール&ローギア」になっています。巻き取りスピードはそれぞれ57cmと58cmでほぼ同じです。小さいリールほど有効なコンセプトだということを考えると、賢明な選択です(というよりプリマックスが謎)。 比較ついでに自重はナビが195g、プリマックスが210gです。 |
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エコノマイザー 1000番とはいうものの、アルテグラ以上のモデルよりショートストロークで軽量コンパクト。500番と1000番の中間的なものです。 浅溝深溝で500番と1000番に分けられたプリマックスに対し、こちらはエコノマイザーを付属。いたずらに機種を増やすより合理的です(ナビ1500〜C3000は思いっきり“いたずらに”ですが)。さらに下巻ゲージも付属。 メインギアには04SY75の文字が。恐らくSymetre750(やっぱり500と1000の間だ)という名で輸出されるのでしょう。 |
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もうだいじょうぶ 某サイトでラインが切れるとか書かれていたタイプのベールですが、問題ありません。ラインを傷つけそうなエッジもないし、ローラーまでラインが導入されないこともありませんでした。 でも細いワイヤは嫌いだ。 |
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ショートハンドル プレッソの45mmショートハンドルの上をいく、40mmの超ショートハンドル。いっしょに写っている98ツインパワー1000は50mmです。全体に小さくまとまった感じに貢献。ただ、ギアがなじむまでは回転を不安定に感じてしまう原因になるかもしれません(下記参照)。 欲をいえばちょんとつまむタイプの小ぶりのノブだと、もっと面白そうです。 |
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スーパースローオシュレーション ハンドル3回転で1往復です。スプーンしか投げませんでしたが、ノントラブルでした。 スプールの幅に対しストロークがいっぱいにとってあるのは、日本のリールの美点です。 さて、その機構は・・・ |
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新平行巻機構 なにやら複雑怪奇な平行巻機構です。 |
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おっ 摺動子を外すと、こんなギアが・・・。 |
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こんなふうに、 | |
回って、 | |
いきます。 | |
で、よく分かりませんが、ラインはなかなかきれいに巻きあがります。 最初は、平行巻機構の影響でハンドルにトルク変動が伝わり、あまりよい印象ではありませんでしたが、1回使ったらギアがなじんで、それほど気にならなくなりました。 それにしてもユニーク。なんだか、ミッチェルがやりそうな機構です。エリプッティックオシュレーションを連想してしまいました。 なお1500以上のモデルは、この機構ではなく、アブのC600のシステムに中間ギアをかませています。 |
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関係ないですが そうそう、シマノの非円形ギアといえば、これを忘れてはいけません。80年代初めに出していた、非円形フロントチェーンホイール・バイオペースです。 クランクが水平になり最も強く踏みこむときに、径を小さくして負担を軽減、リズミカルなペダリングと疲労軽減をうたっていました。 これ以前にブリジストンもオーバルギアを出していましたが、それはクランクが水平のときに径を大きくして、踏みこむときにチェーンをたくさん送ろうというものだったそうです。(2004/11/23追加) |
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上位機種との差 フタを開けたついでに、アルテグラ以上の機種との差です。アルテグラ以上のモデルは矢印の部分にポリアセタール(耐磨耗性に優れたプラスチック)のブッシュが入れてありますが、ナビ以下はボディー材料で直受けです。 ただ、直受けだと絶対だめかというと、そうでもないようで、グリスに異常な磨耗を示すぎらぎらした金属粉(樹脂と金属の間で異常な磨耗が生じるときはたいてい金属側がやられます)は見られません。ボディーの成型状態がよければだいじょうぶなのかも。 また、上の写真のように摺動子ががっちり受けてあるため、スプール軸とこの部分がピニオンにかかる負荷を分担して受けている面もありそうです。 |
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樹脂ボディー 金属製脚付きフタの1500番以上に対し、1000番は従来設計の樹脂ボディーです。このサイズでは当然の選択でしょう。日本のエリアであれアメリカのパンフィッシュであれ、せいぜい4〜6ポンドまでのラインとULロッドに組み合わせるリールに、金属ボディーの剛性(感)なんて、要りませんもん。 なんだかこのデザイン、ミッチェル・イリジウム(誰も知らん)を洗練したみたい。といっても、二本脚デザインのルーツはシマノ・カーボマチックですが。 このボディー最大の欠点は、上級モデルの現行アルテグラ/バイオより高級に見えることでしょうか。 |
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オイルインジェクション 注油口です。従来左にありましたが、右に持ってきました。 取説には、グリスでなくオイルを使うようにとあります。グリスがボディーいっぱいになって前部にあるローラークラッチまで回るといけないからということです。 それなら量を確認しやすいように、リアカバーの内側に穴をあけておいたほうがよくないでしょうか? ネジ1本外す手間も同じですし。 |
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力入ってます 通常このサイズ(事実上の500番サイズ)はハンドル1回転でスプール1往復のクランク方式、トーション式ベールスプリングなど、コストとシンプルさ重視のものが主流です。現行モデルをざっと見渡しても、アボセットG500UL、アブC300U以外は、ほとんどそうです。 これに対しナビ1000は、凝りに凝った新平行巻機構、ベールスプリングも当然信頼性の高いコイル式です。500番クラスとしては力の入ったものといえます。 |
ただ、このリールを持ち出してフィッシングエリアに行ってみた印象は、微妙なところでした。平行巻機構のギアがなじんでいなかったということもありますが、部品が多い分、少しフリクションが多い感じです。
使ってなじんでいけばもう少しよくなりそうですが、このリールはハンドルが短く、回転を実際より重く感じがちということもあります。少しでも軽快な回転に近づけるため、メインギアの右をブッシュからベアリングにしてほしいところです。
総ベアリング数を保ったままでも、ラインローラーをブッシュにして、その分メインギア右へ持ってくるということも考えられます(プリマックス500/1000がそう)。
もっとも、これだけ使っていれば、まったく気にならないレベルですし、価格相応とはいえます。まあ、凝った新平行巻機構や、斬新なデザインを見ると、欲が出てくるということです。
(2004/11/12)
いまごろ気づくなよ・・・
と、いわれそうですが、これS字カムでした。奇抜なギアに気を取られて、まったく見ていませんでした。
でも、そうなると、なぜこのような異形ギアを使う必要があったのか、わからなくなります。このサイトの「アブガルシア/C300の新平行巻機構」のページの略図の通り、S字カムだけでも等速運動するはずです。
S字カムのトルク変動を殺すため・・・? フリームスやC302に違和感はありません。むしろギアがなじむ前はナビのほうが違和感をおぼえました。
特許をかわすためにS字カムに異形ギアを組み合わせて別の特許とした・・・? でも、S字カムはダイワ、アブ、ミッチェル、オオクマ、ティカ(追記:ティカは別機構です)など、どこもやっています。
うーん、わかりません。謎です・・・ま、いいか、面白いし。
(2004/12/20追記)
やっぱり、あらためて考えるとわからないリールですね。ナビ1000くらいのショートストロークなら、オシュレーションは普通のリダクション方式で十分でしょう。アボセット500やカーディナル300Uはそうなんだし、それどころかプリマックスなどほとんどのこのクラスはクランク方式です。平行巻き機構にコストを使うくらいなら、短いくせに重い亜鉛(たぶん)のハンドルクランクをアルミにするとか、ノブを短いクランクに向いた形状にするとかしたほうがずっと使用感のいいものになるはずです。ハンドルについて言えば、そもそも40mmは短すぎです。「ショートハンドル」でも45mmのダイワのほうがスピニングをわかってますよ。シマノのスピニングは昔のままですね。・・・と、冷静に考えればこうなるのに、なんだかページの上のほうでは好意的に書いてます。私の目を曇らせるだけのインパクトがあの異形ギアにはあったということではあります。(2006/7/16いまさら追記)
なんや、久しぶりに自分のサイトを見てみたら、えらいボロカス書いとるな。ここまで言うことないやろ。よっぽどS字カムを見落としたのが悔しかったのかしらん。でもやっぱりこのメカは謎やなあ・・・。(2010/6/9)
SHIMANO