P3シリーズ
 国内向け最廉価版スピニング・05エアノス/アリビオはパワー・プレシジョン・パフォーマンスがテーマのP3シリーズとされています。

05エアノス1000
 糸付きちょい投げ用最廉価スピニングです。一昔前ならチタノス・トゥモローに相当しますが、さすがに現代のはちゃんとしたものになっています。

 それもそのはず、海外ではシンプルで基本性能を充実させた新シリーズ「P3」として展開されているものがベースです。

 メイドインマレーシアです。

平行巻き機構
 シマノサイトのパーツリストを見ると、組み立て時メインギアとオシュレーションギアのかみ合わせに注意するように書いてありました。つまりオシュレーションギアが非円形だということです。これに興味があったので買ってみたのです。

 一見普通のリダクション方式ですが、メインギア背面にギアの合わせマークが入っています。

 ナビ1000の中間ギアを廃したような機構です。S字カムのトルク変動や死点の音を改善するためでしょうか、カム溝の形を変えるとともに、オシュレーションギアを非円形にしています。見にくいですが、メインギア軸端のギアは楕円形です(3枚目の写真)。

 たしかに死点の音はしにくいみたいです。でも、他社のS字カムのリールを使っていてそんなに気になるかというと、別にねえ・・・。それにユーザーが分解してギアをずらしたまま回したら、壊れちゃわないか?

 それでもこんなややこしいことをするのは、やっぱりS字カムはダイワあたりの特許でそのまま使うと訴えられそう(もはや売り上げの少ないほかの会社は訴訟費用を考慮して見逃してもこの2社間は特別とか)だからかとか、そうでなければシマノファンは部屋でリールを回してうっとり派が多いからかとか、いろいろ勘ぐってしまいます。

 勘ぐりすぎかもしれませんが・・・。

ちょっと追記:別のページに「S字カムはアブ、ミッチェル、オオクマ、ティカなどどこも使っている」と書きましたが、カタログをよく見たらティカは別機構でした。オオクマもVSなど最近のモデルはオシュレーションギアを楕円にしたエリプティカルオシュレーション(エイテックのサイトにイラストあり)になっています。やっぱりS字はダイワの特許なのかも。だいじょうぶか、ピュアフィッシング系の2ブランド・・・。

ベイルワイヤ
 細いのイヤ。くどい? だって嫌いだもん。

ドラグ
 昔のチタノス・トゥモローなどは締まるだけのドラグでしたが、いまのはさすがにちゃんとしています。上位機種と同じフェルトワッシャーにスプリング入りノブです。ときどき値段に比例してドラグ性能が上がると思っている人がいますが、実際は全部一緒です。欧米ではドラグは基本機能ですから、差をつけないのです。

フリクションベール
 フリクションベールは不採用です。ちょい投げの人には要らないということでしょうか。でも、ボディ形状を見るとフリクションリング(ブレーキリング)はつくようになっているようです。

ちょこっと追記:かといって別のシマノリールのフリクションリングをつけるのはやめたほうがよさそう。ナビなどブレーキ付きモデルはフリクションリングに当たるベール返しレバーの先を丸く磨いていますが、このリールはそうしていないからです。どうしてもブレーキをつけたい物好きな人は、「ミッチェル・Cで遊ぶ」のページに同じく3000円ぽっちのリールにローターブレーキをつけた物好きの話が出ております。

似て非なるハンドル
 エアノス/アリビオのハンドルクランクはピカピカ。ピカピカハンドルといえば、ミッチェル・アボセットゴールド。でも、この2機種のハンドル、ぜんぜん違うのです。

 アボセットG500ULのハンドルです。このリールのクランクはアルミダイキャストです(下位モデルのCも同じ。参考までにエアノス1000よりクランクの長いC2000でも42.5g)。ウェブサイトでわざわざ「アルミニウムハンドル」とうたっていますが、それはアルミ以外のハンドルがあるから・・・。

 エアノス1000のハンドルです。アボセット500より少しクランクが長いですが、そういうレベルの差ではありません。エアノスのクランクは亜鉛ダイキャスト。アルミより低コストですが、比重が大きいためにこうなります。

 ハンドルはローターと違ってバランスがとってありませんから、重いと弊害が大きく出ます。巻き取り感触に加え、キャスト時のベール返りの原因にもなりえます。

 低コストリールで何を残して何を捨てるか・・・ここにメーカーの思想が出ます。

ちょこっと追記:スペック表から推測すると下位モデルのアリビオはワンタッチを廃してハンドルが軽くなっているようです。

もうひとつ追記:ナビ1000など他のモデルのハンドルが付きます。物好きな人はどうぞ。

ピニオン後端支持部
 低コストリールで省かれるものといえば、ピニオン後端の樹脂(ジュラコン=ポリアセタール)ブッシュ。このリールもボディ材料で直受けです。でも、どうもこの部分に関しては、ブッシュは必ずしも必要ではないようです。

 昨年買って1年使ったミッチェル・アボセットG500ULも直受けですが、ガタの増加や磨耗の跡はありません。今年買った同C2000は数回の使用とはいえ50cmクラスのサクラ・・・いやニゴイとの綱引きや湖でのロングキャスト&リトリーブもさんざんやりましたが、こっちも異常なし。

 ボディ材料は(たぶん昔と同じ)ガラス繊維入りナイロン。ナイロンも軸受け材として使われることがありますから、成型状態がよくてガラスが浮くなどしていなければだいじょうぶなのでしょう。

でもベストの形状じゃないよなというのは一番下の追記参照。しかもバイオのところで書いたようにピニオンBBとのスパンは短いし・・・。(2006/2/2)

なんだかガキっぽい
 同じ価格帯のアボセットCシリーズと並べてみました。どっちが高級に見えます? 高級といって悪ければ、どっちが大人でも使えそうなデザインですか? 写真が小さいですがスプールスカートのエアノスロゴや上位モデルの穴あけ加工を貧乏たらしく模した模様が安っぽいです。

 下のモデルのアリビオ(ほんとはこっちを買うつもりだったが売ってなかった)となるとさらにガキっぽいデザインです。アボセットはさらに下にM(欧州でのみ発売)もありますが、こちらは渋めのデザインです。

 アリビオはSHIMANO、アボセットMはPecheur.comで検索してください。

 欧州ではリタイヤした夫婦がリッターカークラスの小さな(=安い)クルマに乗り換えることが多いそうです。でも、日本ではそういうことはあまりなく、そのせいか軽自動車やリッターカーは若者(ガキ?)や女性向けのイメージがまだ強いようです。

 低価格帯リールのデザインにもこういうところが出てませんか? (2005/9/11)

ちょこっと追記:シマノの海外サイトを見るとアリビオも欧州向けは渋めのデザインです。日本向けの子供っぽいデザインは確信犯のよう。必要十分なものを見極めて使うのは成熟した大人のモノ選びだと思うのですが、日本はそこまで行っていないということかな。

いまさらの追記:やっぱりあの異形ギアの平行巻き機構は、特許外しでしょうね。メリット(あるの?)よりデメリットのほうが多いですもん。たとえば、メインギア右の小ギアが楕円になることで、メインギア右のブッシュ外径が大きくなります。そうすると、金型構造上ピニオンギア後端支持部がより大きく削り取られる形状になります。メインギア右のブッシュ外径はアボセットなどの11mmに対しエアノスは13mmもあります。しかも、楕円ギアのためにブッシュに支持されるメインギア右の軸表面にもギア歯底の溝が入っています(!)。どっちも耐久性にマイナスでしょう。平行巻き機構が面白そうなので買ってみたリールですが、ナビも含めてなんだあという気になります。(2006/2/2追記)

SHIMANO


 そうそう、あんまりこういうことを書いていると、ミッチェルと比べてシマノがとろくさいリールやと書いていると思われそうなので、ひとつだけ追記。スプール幅に対してオシュレーションストロークがしっかりあるのはシマノのほうです。ライントラブルの出にくさはシマノ(というか国産全般)のほうが上です。

 ま、それを差し引いてもミッチェルのほうが好きやけどね(へそ曲がりなだけかい?)。