アルテグラ・アドバンス
 AR-Cスプールはどんなもんじゃい。


アルテグラ・アドバンス1000S
 05系の最後のおつとめか、はたまた08モデルは05のマイナーチェンジで行くのかはわかりませんが、土壇場で出てきた感のあるAR-Cアルテグラです。AR-Cスプールを試してみたかったので買ってしまいました。ならステラ買えばいいじゃんって? 金がねえんだよ!(というのが一番ですが、あのけばけばデザインはねぇ・・・本当は08TPを買おうと思っていたのですが、ルビアスも出るしさ)

 「アルテグラ」の名前はもともとサイクルコンポーネント“600”シリーズ(デュラエースの次のモデル)のサブネームとして80年代中ぐらいに出てきたものです。釣り具は初代ナビベースのやや上級モデルに初めて使われ、もうやめてしまいましたがゴルフクラブの名前にもなっていました。

 自転車の600シリーズは普通の人が買うやや上級コンポというイメージで、そのせいもあって私がこの名前から受ける印象は少なくとも安物ではないですね。バイオマスターの名前と色(05を除く)があまり好きでないこともあって、90年代以降のシマノスピニングとしてはいちばん持っているモデルになります。

 自重215g、ギア比5:1、スプール前ツバ径39mm、有効径36mm。軽合金ギアのバイオマスターに比べると重いですが、1000番ならまあいいかという自重。シマノはこのサイズがあるのがいいですね。

 メイドインマレーシアです。

スプール
 07ステラで出てきたライントラブルを防ぐとされるAR-Cスプールです。スプールリングはさすがにこのクラスだと硬質リングではなくスプール一体になります。価格を考えれば仕方ないかというところでしょう。

 エッジは滑らか。スプールは2色アルマイトが流行っていますが、このリールの場合旋盤目の残る2色目を使ってチタンリップもどきにしていないのがまじめです。て言うより、あんな仕上げでリップを金色にするほうがおかしいんだけどね。

 まじめといえば、正直に(?)スプール価格がノーマルアルテグラのチタンコートリップつきより安くなっています。

誕生日
 FIだから2007年9月生産です。できたてほやほや。最後のPはSPLシマノシンガポールの意味。Sにしちゃうとシマノ本社製と同じになっちゃうから次のPを取っているわけです。マレーシア製なのはSPLのリール工場が隣国マレーシアにあるからです。

 ついでに、昔は韓国日吉釣具のH、ソウルフィッシングのO、シマノ山口のYもありました。

ハンドル
 ハンドルは共回り式です。価格を考えればこんなところでしょう。

 このハンドルのいいところはクランクとギアの間に入るカラーがアルミ削り出しで剛性(たわみにくさ)が高いことです。回転方向は仕方ありませんが、対角方向(ノブを押したり引いたりする方向)の力に対してはほとんどたわみやガタがありません。キャップを軽く締めるだけでOKです(あまり締めると亜鉛ドライブギアの軸端が開いてブッシュやベアリングが取れなくなるかもしれないのでほどほどに締めるのがいい)。

ハンドルノブ支持部
 ノブはベアリング支持。その前にドライブギアの右をベアリングにしたほうがよくないか。

フリクションベール
 私の提案で98モデル以来採用されている(くどいやつだな)ローターブレーキです。04ステラ以降は05バイオのところに示したようにスプリングとジュラコンによるものに改良されましたが、04、07モデルでも1000番サイズはゴムリング式のままです。

 ゴム式はオイルで伸びてしまうのが不安ですが、サイズ的にスプリング式にできなかったのでしょう。でも、写真の個体はぜんぜんブレーキがきかないのが困ったもの。ゴムの弾性だけなのでわずかな部品寸法の差でこういうことがおきるのでしょう。

訂正(かも)
 上でローターブレーキがきかないと書いていますが、写真のようにフリクションリングのエッジがある側を上にしたらきくようになりました。

 もしかすると最初にばらしたとき(間違えて必要がないのにフリクションリングまで外しました)、私が逆向きに付けたのかもしれません。

 本来エッジのある側が下だと思うのですが、ブレーキのききを調整するために向きを変えて組んであった可能性があります。(追記2007/10/18)

内部機構
 基本的に05アルテグラと同じもの(のはず)です。05バイオマスターで軽合金だったドライブギアとメインシャフトは、アルテグラでは亜鉛ダイキャストとステンレスになります。その分自重は重くなります。

 ピニオンの後ろはジュラコン(ポリアセタール)のブッシュで受けています。

 厳密にいうと、ドライブギアはハンドル固定方法が変わるので、軸端に4つのトゲトゲがないタイプ(たぶんナスキー用のもの)になっています。

ブッシュ
 ドライブギアの右はブッシュ支持です。ハンドルノブやスプール、ラインローラーにベアリングを入れながらここがブッシュというのもちょっとなあというところ。

 しかもこのブッシュ、外径が甘い。そのためにハンドル(=ドライブギア)のガタが大きくなっています。私は瞬間接着剤を流し込んで接着してしまいました。初代ナビ1000をいっしょにやったYサンも、上がってきたサンプルを腫れ物を触るようにマイクロではさんでOK出してたもんな。

 ここは18年前、私が耐久テストを行い「ブッシュを(ダイワのように)接着したほうがドライブギア軸の磨耗が少ない」という結論を出し、接着することになったはずですが、されてません。なんでや。防水キャップの締め付けで軸の先端が開いてきたときブッシュからギアが外れなくなる可能性もありますから、そのへんを考えて接着をやめたのかもしれません。


投げてきました
 先日、管理釣り場で1日投げてきました。3Lb(0.8号)を100m巻いて軽いスプーンを巻いたり、バジングをしたり、ミノーでトゥイッチングやホットケをしたりしてみましたが、ライントラブルはまったく起きませんでした。なぜ現場写真でなく室内撮影した写真なのかって? 2匹しか釣れなかったからだよ!

 ラインはツバの根元ぎりぎりまで巻いていますから、たしかにライントラブルはおきにくいといえそうです。

 ただ、ノーマルバイオマスター/アルテグラ1000番のスプール径が39mmで、アドバンスの前ツバ径が39mm有効径が36mmということを考えると、ツバの根元までの有効径を39mmにしてツバを42mmくらいにするべきでは・・・とも思えるのですが、見た目がヘンになっちゃうのか(なりそうです)、ダイワのデザインパテントにでも抵触するのか・・・。

 それでも、ノーマルのスプールに36mmまで巻いたのに比べれば放出抵抗は少ないはずですし、有効なのはたしかでしょう。

 ところで、この初代カーディフXT62XULってホント投げにくいね。同時期の初代フリーストーンといいまずバットの細さありきで設計したのでは?と思いたいくらい。それともわしがヘタなのか? そんなわけで、ライン放出性と飛距離はよくわからなかったのですが、少なくとも悪くはなかったように思います。


もしや・・・
 05年ころ私はミッチェルアボセット500をよく使っていました。こいつは困ったリールで、スプール幅に対してスプールの往復ストロークが足らないため、うっかりするとラインがバサッと出ます。で、ひかえめの巻き量で使うわけですが、その割に飛距離が落ちないように感じていました。

 それでふと思いついたのは、ストロークが足らない分、放出されるラインも図の赤矢印の範囲が主で、スプールエッジをたたく頻度が少ないのではということです。

 かといって、ストローク不足では依然トラブルの不安があります。じゃあ、ストローク不足の分を肉で埋めたら・・・と考えたときふと思い出したのが30年位前に広告で見たシマノ・エルムGXのスプールでした。

 そして私は、「エルムGXのスプール前部を大口径化したものを作ったらダイワABSに対抗できるかもしれない」とシマノ・リール開発にメールを送ったのでした。

 でも、06年のフィッシングショーで「ねえねえ、あのスプールどう?」と聞いたところ「あんなみっともねえもん売れるわけねえがや。とろくせえことゆっとったらあかんぞ」と一蹴されてしまいました(若干脚色しています)。

 しかし、07年に出てきたAR-Cスプールは、一見エルムGXとは違うもののスプールエッジと糸巻き面の関係だけ見れば、エルムGXと同じです。

 むむ、これはもしや・・・。

 まあ、仮にそのもしやだったとしても、オリジナルはシマノのリールなんだし、どってこたあないんですが。

 それはともかく、このリールというかAR-Cスプールに興味を持ったのはようやくシマノスピニングがスプールに目を向けたからです。

 92(初代)ステラに始まるシマノスピニングは、SBLによりひとつの時代を作りました。しかし、あらためて振り返ってみるとそれ以来シマノのスピニングは「機械」ばかりやってきました。

 しかし、リールは「機械」であると同時に「糸巻き」であり「道具」でもあります。

 いっぽう、ダイワ精工は「糸巻き」と「道具」の部分を重視してきました。これがここ最近の2社の差になったのではと私は思っています。

 しかし、AR-Cスプールでようやくシマノも「糸巻き」の部分に目を向けてきました。そういう意味で、これからの展開に注目したいなと思っています。  (2007/10/17)

SHIMANO

 ところで、08モデルってどうなるんでしょうね。SACのHPを見るとアメリカの08モデル(?)はサステイン(ツインパワー)もストラディック(バイオマスター)も05バイオマスターベースのようです。発売時期とコスト(=生産国)の関係でこうなったのかもしれませんが、もしかして国内も08版は現行ボディーを継続するとか? でも、ベイトのメタニウムXTなんか赤、銀、Mgと同じデザインでかなり長く作っていましたし、スピニングだけ3年できっちり変えることはないように思います。08ツインパワーだってギアとスプールが07ステラ同等ならボディーが05バイオでもいいんじゃないかと思いますが(でも日本のユーザーはキビシイからねえ)。 (2007/10/17)