大森リールはココが違う

 リアドラグが注目された大森リールですが、本当に見るべきところはここです。

1 ハイポイドフェ−スギア
 
これが「ハイポイドフェースギア」。何のことはない普通のギアです。シマノもダイワも使っています。でもこのギア、機械の教科書には載ってません。大森製作所がスピニングリールのために開発したギア方式なのです。滑らかさ、強度、耐久性、生産性のバランスのとれたこのギアは、現在も世界の標準です。「ダイヤモンドリール」のシンボルマークを見てください。中央にこのギアが描かれています。

2 インサート鋳造のマスターギア
 1のギアですが、軸の部分とギアの部分の色が違います。鉄製の軸を、亜鉛ダイキャストのギアに鋳込んであるのです。普通の会社はこんな高コストな方式はやりません。しかもこれ、同社製品でもっとも安価だったコメットのギアです。ここに大森製作所の良心が見えます。

3 むだなベアリングは使わない 
 で、2のような鉄の軸を使っているから、こういうことが可能になります。コメットはマスターギアの両軸受けに、真鍮のブッシュを使っています。だから耐久性に何の問題もありません。大手メーカーの亜鉛一体マスターギアは、軸の部分が磨耗します。当時高級品だったマイコンシリーズも、ベアリングは2個でした(大型モデルは3個)。リールの部品でベアリングほど高いものはありません。ベアリングは最小限にしてほかの部品の品質を上げたほうが、いいリールができる。大森製作所の良心です。

4 ねじ込みハンドル
 
2の鉄製マスターギア軸のメリットその2がこれ。ねじ込みハンドルです。やわらかい亜鉛でこんなことはできません。シマノはミレニアムエディションのステラSSにおなじ方式を採用しました。ほんとはみんなやりたいのです。
 このオネジ、右と左のネジが同時に切ってあり、左右どちらに付けるときでも巻き取り方向が締め方向になります。

5 ラインローラー
 これも大森製作所の良心。一見普通の金属製ローラーですが、耐磨耗性に優れたルーロン(金属とテフロンの複合材)のスリーブが入っています。ときどき注油してやれば、いつまでも滑らかに回転し、ラインを守ってくれます。当時主流のセラミックローラーの中には、こういったスリーブを使わず金属の軸でじか受けしているものが多くありました(大手メーカーはほとんどそう!)。そういったものは、当時米国市場で、魚が走ったときラインが融けて切れるクレームを起こしたものです。このスリーブももちろん、最廉価版のコメットにまで採用していました。
6 ドラグ
 いまステラやトーナメントなど国産スピニングは、グリスを含ませたフェルトをドラグワッシャーに使っています。これを大森製作所は以前からやっていました。写真はコメットのドラグ。同様のドラグを採用したマイクロセブンは、オーストラリアの釣り雑誌がおこなったテストで、クラス世界一を受賞しました。

7 ストッパー
 これも大手メーカーと違うところ。ハイポイドフェースギア採用時の空きスペースを、実にうまく利用しています。だから軽量コンパクト。しかもこの方式、ストッパー機構が完全にボディー内部にあるため、防塵性にも優れています。

8 携行性
 横折れハンドルと、折りたたみベールです。とくに折りたたみベールは、ほかの荷物と詰め込むときに安心。ただ、この機構、欧米ではそれほどうけません。あちらではリールをあまり袋に入れたりしないのです。

OHMORI S.S. spinning reels