スピードスピン

S2 スピードスピンとは
80年代初めロッドメーカーのダイコーが「スピニットRD」というリアドラグスピニングを発売しました。これがスピードスピンの国内仕様。スピードスティックで関係のあったダイコーが、国内販売を担当したのです。写真は「ルー・スピードスピン2」。「スピニットRD002」に相当します。発売されたのが大森製作所のマイコンの直後だったので、後追い商品のように見られがちでしたが、これは日吉産業(アブ、ルー、ゼブコのスピニングをOEMしていた)がゼブコ製品の開発で遅れてしまったためでした。実際にはマイコンより優れたリールでした。
SpinitRD002 スピニットRD002
日本国内仕様のスピニットRDです。スプールバンドと銘板のデザイン以外、スピードスピンとおなじです。当時大ヒットしたマイコンに対し、あまり注目されずに消えてしまいました。マイコンが悪いとはいいませんが、つくづくいいものが売れるとはかぎらないなあと思います。でもアメリカではシェイクスピアから売られたマイコンより、スピードスピンは長く生き続けました。この米国市場と日本市場の差はなんなのでしょう?(このリールはHPを見たダイコーの方にいただきました)
Spool スプール
マイコンと比較したいのがここ。スプール形状です。スピードスピン(右)もゴールドスピン(左)も、垂直に立ったスプールです。いっぱいにラインを巻いても糸崩れが起きないため、スプール径を100%活用できます。フランジとラインの接触面積が少なく、飛距離も出ます。もちろんライントラブルもない。見た目のために大きな開放角を持たせたマイコンと比べてください。しかもこのスプール、本物の「カーボン」スプールです(現在ほとんどの「カーボン」リールはガラスしか入っていません)。
Roller ラインローラー
富士工業製セラミックラインローラーです。注目すべきは白く見えるブッシュ。当時の大手メーカーの中には、ブッシュなしでセラミックローラーを使っていたところもありました。多くのユーザーがわからなければ手を抜く、そんな考え方は、日吉産業はしていなかったのです。
Handle ハンドル
ねじ込みハンドルです。大森といい、日吉といい、このころの小メーカー製スピニングはまじめでした。子供向けのワンタッチハンドルなんて、米国市場では通用しないのです。
bail 折りたたみベール
ハンドルのほかにベールもたためます。携行性に優れています。しかしこれ、アメリカではうけないのです。この後設計変更されて、おりたためなくなります。しかし、その際、ベールスプリングを同時に変更し、耐久性を増しました。実戦的なアメリカらしい変更です。
Handle touch

不良じゃないよ
ベールアーム(アームカム)がスプールの真横にあるときにベールを開こうとすると、開いていく途中でハンドルに当ります。でもこれ、不良じゃありません。こんなところでベールを開くのは、シロートさんです。もちろん完全に開いた状態では、ハンドルには当りません。シロートさんにあわせるより、できる限りハンドルをボディに近づけ、一体感のあるリーリングを追求しているのです。

AR ストッパー
分厚い鋼板で作られた、強力なストッパー。大森とおなじく、合理的な位置にあります。遊びもこの時期としては極めて少ないものでした。このストッパーをテストしたダイコーのテスターは、リールに負けて腕を傷めたそうです。
RD 無段階リアドラグ
このリアドラグには、クリックがありません。数字も刻んでありません。ノブを締め付ける感触とラインの出るテンション一致させる設定をしたから、クリックなんかいらないという考えです。わがままというか、独善というか……でも、こういう「こだわり」を感じさせる製品を作った日吉産業と、それを認めたルーはえらい!
RD

大口径ワッシャー
マイコンや当時の大手メーカー製リアドラグが、ノブの中にワッシャーを入れていた(大森の特許だった)のとは設計が違います。あえてそうしなかったのは、ワッシャーを大口径にしたかったから。当然高性能ですが、そのかわりボディーは大きくなっていました。スピードスピンはともかく、大口径スプールを強調したかったゴールドスピンで、これはデザイン的に不利にきいてきます。

S2 gear ギア
真鍮の軸を鋳込んだ、亜鉛ダイキャストのハイポイドフェースギア。日吉産業は大森とおなじく、歯形を内製していました。フタ(サイドカバー)に見える真鍮製ブッシュは、本体との位置決め。組み立て時にフタをずらして調整するのではなく、最初から位置を出していたということです。

LEW'S