マミヤOP・リベロRS

98年にマミヤOPが発売したリベロは、マミヤ最後のスピニングリールになりました。

リベロRS700マミヤOP・リベロRS700
 マミヤいわく「ルアー専用スピニングリール」。
 「キャスティングローターブレーキ」、微調整優先のドラグ、左ハンドル出荷など、それまでの悪しき日本市場向けスピニングとは一線を隔したリールでした。
 米国ではマミヤ傘下にあった老舗、フィンノールから「エイハブ・ライト」という名で売られました。ローターはオースターと共通のようですが、ボディーなどは新規です。
 バングラデシュ製ですが、おそらく部品を持ち込んで組み立てていたのでしょう。
 RS700はシマノやダイワの2000番クラス。この上に3000番クラスのRS800もありました。それにしてもオリムピック時代から、クルマの名前パクルの好きですな。もしかしたら脚のカーブはかつての「93」のイメージを出しているのでしょうか?

ローターブレーキキャスティングローターブレーキ
 ベールをこの位置で開くと、回転にブレーキが掛かります。キャスト時のベール返りを防ぐばかりでなく、フェザリングを確実にし、正確なキャストが可能になります。
 それにしても瞬間ストッパーがスピニングに採用され始めたのは、90年ころです。瞬間ストッパー付きのリールでフェザリングができないのは、一回使えばわかりそうなもの。いえいえ、私は使う前からナンセンスだと思ってました。
 リベロやシマノ98モデルがこういったブレーキを付けたのは実に8年後。つくづく日本メーカーって、スピニングを知らなかったのだなあと思います。
 ところでこのリールが出た年の大阪フィッシングショー。マミヤの人に「この機構、カーディナル33/44にも付いてましたよね」と言ったら、「え、そうなんですか」。おいおい輸入元やろが……。

フットボールカムフットボールカム
 シンプルな完全平行巻き機構「フットボールカム」。じつは80年代なかばにシマノが「エアロカム」という名で出した機構とほぼ同じものです。特許が切れたのでしょう。
 円運動を直線運動に変えると、死点に近づくにしたがって、スピードが落ちます。これを、摺動子ギアのピンの軌道を真円から楕円にすることにより、等速運動に近づけようというものです。
 じつは私、学生時代「エアロカム」の正体を知らず、偶然おなじものを考えて、シマノに手紙を送ったことがありました。あと5年早かったら……。

スプールスプールリングとドラグ
 ここから挙げる数点は地味ですが、なかなかどうして「老舗の見識」とでもいうべきものです。
 シンプルなスプールリングです。シマノやダイワにくらべると、ちょっと安っぽく見えますが、まずラインが巻くことがありません。低く押さえられたドラグノブも、賢明な設計です。
 また、特筆すべきはドラグ特性。旧来の日本国内向け「(右手)ゴリ巻き仕様」の、最大釣力追求型ではなく、微調整と滑らかさを追求した、画期的な設定でした。時代は変わったんだなあと、元ルアー少年の私は感慨にふけったものです(じじいか)。

ベール支持部ベールアーム支持部
 コストダウンでタップスクリューを使うメーカーが多い中で、ベールアーム(アームカム)の支持部に金属シャフトを使っています。
 そのため、ベールの返りがスムーズ。内げり機構の設計にも無理がなく、快適にキャスティングとリーリングを繰り返すことができます。

ノブハンドルノブ
 日本のリールに珍しく、手になじむハンドルノブです。見た目は平凡ですが、いいノブです。ただ、妙に汚れの染み付く素材でしたが……。
 ローターブレーキ、軽いベール返しとともに、キャスティングを繰り返すルアーフィッシングに向いた仕様でした。
 しかも左ハンドル出荷です。ステラやツインパワー、TDなどの高級品でなく、ミドルクラスでは初でしょう。えらい!

 それにしても、このリールが売れずに、ローターブレーキ無しのオースターやエイペックスが売れたというのが、象徴的です。早い話が、フェザリングをしない(知らない)人のほうが多いということなんでしょうね。そもそも中指と薬指の間にリールの脚がくる正しい持ち方も知らないどころか、右投げ右巻きの人がいまだ多数なんですから……。これが世界一のリールメーカーを擁する日本国の現状なんです。

Olympic/MamiyaOP