1997年秋 初めての北京-13
牛肉拉面と1斤の包子
宿舎の近所に、朝だけ営業の食堂がある。 食堂と言っても、
路上にテ-ブルと椅子が並べてあるだけ。 黒板にメニューが
書いてあり、街路樹に立てかけてある。
近所の人が容器を持って、この店のワンタンスープ等を
テイクアウトしているのを見かける。 (次回は、フタ付き容器を
持って行こう !)
この店で朝食をとることが多い私達だが、帰国日の朝も
ここで食べることにした。 メニユ-のトップには、
「牛肉拉面(ラ-メン)4.00元」とある。 中国最後の食事は
これだと、張り切って出かけた。
ところが、行ってみると「没有」(無い)の返事。
例によって、食べたい!と主張したら、店員総出で相談。
残念ながら、「ごめん! 今日は材料が無いんだ。
ワンタンス-プでは?」等と言ってくれる。
私は牛肉ラーメンを食べようと楽しみにしていた。
私のあまりの落胆ぶりに、「明日なら出来るよ」と言って
くれるが、「今日帰国するんだ」と言うと、彼等も残念そう。
あれこれ考えた末、月並みだが、大好きな包子(パオヅ=肉まん)
を1斤(=0.5kg)買って、朝食と携帯食として食べることにした。
私は牛肉ラーメンを食バたかつたし、彼等も食べさせようと
努力してくれた。 こんな小さな出来事でも、気持が通じ合えた
ことは嬉しい。
私は、ホカホ力の包子がたくさん詰まった袋を胸に抱えて
宿舎に戻った。
北京空港の出国審査官がバスボートに出国スタンプを押して、
返してくれたとき、私は「謝謝、再見!」と言った。
中国の皆さんの親切に対するお礼を出国審査官に言っても
仕方ないが、言わずにはいられなかった。
彼は、「再見!」と笑顔を見せてくれた。
免税店の店員が、私が持っている、袋いっぱいの包子を見て、
商売そっちのけで「おいしそうですね!」と話かけてきた。
こんな国を後にするのは、とても寂しい。 私は、振り返り、
振り返り、飛行機へのタラップを昇った。
私は、北京から秋田まで、包子を食べながら帰ってきた。
飛行機にも持ち込んで食べた。 秋田の我が家に着いたとき、
4個残っていた。
それを電子レンジで温め直して食べた。 あたかも、
包子1個1個が中国そのものであるかのように。
おいしかったが、切ない味がした。
最後の1個を食べ終えて、袋の文字を見ると、英語で
(THANK YOU)と裏返しに印刷されていた。
終わり
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大成鍼灸院 2001年11月
Ly-Zh-9713