闇鍋の儀




闇鍋…恐らく正式(?)なスタイルをとるならば、皆で持ち寄った具材を鍋にぶち込み、灯りを消した暗い部屋で一度取ったものは必ず食べる…というものになるのだろう。ゲタやら草履やらが入っている、というのが何故か象徴となっているようだが(何故だ?)。


が、わざわざ部屋を暗くしたり、食い物ではないものを入れるには手間や根性が必要になる。なので、とりあえず各自が具材を持ち寄り、なおかつそれはネタでなければならない、という定義を闇鍋に与えるとしたら…私の闇鍋経験は3回となる。と、言っても1.2回目はとても「闇鍋」といえる程のものではなく、単なる「寄せ鍋」に過ぎなかったのかもしれない。入っていた変なモノと言えば、犬用ビーフジャーキー、松屋の牛めし、肉まん(そのまま)ぐらいのものだった(犬用ビーフジャーキーは、ダシが出てしまってカスカスの気持ち悪い物体に過ぎなかった…)。


しかし、最近行ったのはまさに「闇鍋」の名に相応しいものだったと言わざるを得ないだろう。場所は線路沿いの知人宅。参加者は4人。ある日曜日、とりあえず食い物限定という形で具材を持ち寄り、苦悶の鍋は始まった。鍋を開始する前、無意味にベランダでシャボン玉遊びをしていたことを記しておこう。後の惨劇に対する逃避行動だったのだろうか。



ベースとなる出汁は購入した寄せ鍋の素。そこにまず私が持ってきたキンピラゴボウ、ヒジキの煮付けが投入される。汁の温度が上がってきたところで、今回の悲劇の元凶…「リポビタンD」…がぶち込まれた。「臭い!甘臭い!」と、微量であるはずのリポビタンDは寄せ鍋の汁を一気に薬物へと変化させたのであった(これをお読みの方は一度、栄養ドリンクを沸騰させてみるとよかろう)。


既に部屋の中にはリポビタンDの腐った臭いが充満している。これをなんとか中和しようとレトルトカレー、生ニンニク、大量の梅干しが投入されたが、時、既に遅し…というより、「悪化した!?」。もうこの時点でまともに喰うことは放棄されたも同然であった。


そして、今回の悲劇のもう一端を担う…マクドナルドのハンバーガー、ポテトの登場である。4人はとっくにブチ切れている。「いやぁ、殺さないでぇ~この子だけは~」とチープな叫び声を挙げるハンバーガー、ポテト親子を地獄の釜に蹴り落とし、我々は悪鬼のような笑みを浮かべる。と、なにやら様子がおかしい…?ハンバーガーのパンが無限に拡大し始めたのである。鍋の表面積の7割がパンに覆われ、そのパンは異常なリポビタン臭のする汁を存分に吸い込みご満悦…


この時点で、私にはもう無理。臭いを嗅いだだけで吐き気がシマス。タスケテクダサイ…タスケテ…あ、結局喰わなければならないのね…ハイハイ。モグ…あはら!


もうだめぽ…マジヤバイ…どうして食い物に食い物を加えたら食い物じゃなくなるのか疑問である。想像以上の味に一同が絶句。すると、参加者の一人が口を開く…「この鍋を空けずして勝つことなし」…何に勝つんだ、何に!


どうやらこの言葉通り、捨てるという選択肢は無いらしく、悶絶しながら箸を動かす4人。どうやらこの鍋、食えば食うほど脳が腐っていくらしく、完全にトンデしまった彼等はチョコエッグをそのままブチ込むという暴挙を敢行…ドロドロと溶けていくチョコ…そして出てくるカプセル…(この中にいたカブトムシの足と最初に入れたヒジキが非常によく似ていて恐怖した)。


今、この文を書きながら喰っているカップメンの汁を「スープ」だとするならば、この鍋の中の汁は「工場廃液」。この、とろみのある茶色い液体はヤヴァイ薬品を精製中の魔女もビックリするほどユートピア!(゜∀゜)


でもね…でもね…この鍋…4人で全部空けたのよ?(トランプの罰ゲームとして無理矢理喰った(喰わせた)のだが)。



投入物リスト(量はカレー10人分ぐらい):
「寄せ鍋の素」「キンピラゴボウ」「ヒジキの煮付け」「リポビタンD」「レトルトカレー」「梅干し」「生ニンニク」「天津甘栗」「ハンバーガー」「フライドポテト」「豚肉切り身」「チョコエッグ」



(2002/12)



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