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11月29日 企業内弁護士

 アメリカ等では当たり前のようにいると言われる企業内弁護士(特定の企業に雇用されて、専らその企業の事件を扱う弁護士)ですが、我が国では弁護士自体の数がまだ少ないこともあり、数えるほどしかいません。

 しかしながら、司法試験合格者も数年中に3倍増(年間3000人)にされる見込みであり、10年前に比べると6倍の法律家が量産されてくるようになると、早晩国内でも企業内弁護士が増えてくると思われます。

 在野法曹たる弁護士のこと、企業に買われるなぞもってのほか!という昔ながらの意見もまだありますが、まあ全体としてはそのような弁護士の存在も容認していくしかないでしょう。

 問題なのは、人権擁護を使命とする弁護士の質的同一性を、そのような企業弁護士にも期待できるのか、という点です。もっと簡単にいってしまえば、弁護士として、刑事弁護や人権活動に一定の時間を割くことが企業内弁護士にも可能かどうか(弁護士会によっては会員にこれらの活動を義務づけているところもあります)。

 以前、東京弁護士会の法曹養成センターの委員として、経団連の大企業の法務部の方々と意見交換をさせていただいたことがありますが、任意での活動に関しては「企業内弁護士は従業員なのだからそんなことは困る」という意見の方が多数派でした。

 そこは一歩譲ったとして、さらに問題なのが、弁護士の判断の独立性は保たれるのか。単なるサラリーマンとして上意下達の機構の中に組み込まれてしまうのでは、企業内弁護士の意味はないでしょう。自由闊達に意見が言える立場の弁護士がいなければ、企業のコンプライアンスも絵に描いた餅になってしまうのではないでしょうか。

 経団連との意見交換では、残念ながらその点に関する認識もややすれ違いで終わりました。

 ともあれ、これからは否応なしに企業内弁護士は増えていくでしょう。マイペースな私はとてもつとまりそうにないですが、先日も私の動機の知り合いが企業内弁護士になったという話を聞きました。パイオニアとして頑張って欲しいものです。でも、自由業としての弁護士の気概はなくさないで欲しいです。

 と思いつつ、本日偶々とある交渉案件で相手方の企業内弁護士の方と交渉しましたが、うーん、やっぱりちょっと肌合いが違ってしまっているかなあ、と思わされました。

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