以前「重低音レディー」のコメントで書いたように、蛸之枕は高校時代、吹奏楽部で「管バス」 (チューバの代用品でプロ仕様のチューバよりは安い)吹いてたんですが、当時楽器置き場 の片隅に、誰も使っていない見慣れない楽器が一台、ケースの中でほったらかしのまま朽ち かけていました。明らかに自分が担当している管バスの親類筋と思われる、ユーフォニウム をもう一回り小さく華奢にした感じの中型金管楽器、その正体が、「アルト・ホーン」と呼ばれ る、ヨーロッパで発展した「サクソルン」族の一員で「管バス」もその一族と判ったのは、高校 卒業からだいぶたってからでした。 日本の学校吹奏楽は、つぶしの効く管楽器奏者の育成の場という面も併せ持った、文部科 学省あたりにオーケストラの安上がりな代用品って思われてる節のある、木管・金管合同編 成のバンドの訳ですが、本来の「ブラスバンド」は若干名の打楽器が編入されているだけの 純粋の金管楽器バンドであり、楽器自体もヨーロッパ中心に、その編成に合わせて開発され てきたという歴史があります。 特にイギリスは市民バンドが盛んであり、お役人が購入機材 を指導・規制しているどっかの国と違って、楽団自身が最善と考える楽器編成が自由に組ま れてきました。
この辺が趣味でやってる連中の強みですね。 で、その過程で「高音部から重低音域までのすべてを同一系統の楽器でそろえる事により、 より調和の取れたハーモニーを作り出す」
というコンセプトが生まれ、 そのためにファミリー 化されたのが「サクソルン」族という訳です。
実際、ブリティッシュブラスの演奏写真とか見る と、巨大なのからちっこいのまでいろいろな音域の「サクソルン」族がずらりと並んでいて、
壮 観です。 もっとも、 本場イギリスでも、
最高音域のE♭ソプラノとB♭サクソルンはコルネットに置き換 えられてしまってもうほとんど使われていないそうですが。 でも、そんな「アルト・ホーン」が何でわが母校の部室の片隅に転がっていたのか? 実はこの楽器、わが国でも、フレンチホルンと音域がほぼ同じっていうだけの理由で、「安上 がりなホルンの代用品」として使われてた時期があったんだそうです。そして、本物のホルン が普及するにつれ、誰も使わなくなってしまった………。 (ホルンの場合、今でも「お安いピストンモデル」と「プロ仕様のロータリーモデル」が混在して たりしますが(^^;) ) で、 蛸之枕が担当してた「管バス」こそ、
わが国における「サクソルン」族最後の生き残り、 という訳でした。 本作はそんな不遇な「アルト・ホーン」への、ささやかなオマージュでもあります。
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