「第1場」
幕が開くと、舞台の中央に1人立つ紫吹さんは、長身で足長!スタイル抜群で、宝塚の男役トップスターにふさわしい貫禄と、オーラを持ち備えています。主題歌を歌った後、カリブの海賊達が、その周りを囲み、共に歌い踊ります。皆バンダナを頭に巻き、黒っぽいブーツ、赤の腰巻を巻いています。直ちゃんはオレンジ系のバンダナを巻き、向かって右手(上手側)、トップさんのすぐ横付近で、魅力一杯に踊っています。
【目元に怪しげな魅力を振り撒く直ちゃんに、私のオペラはくぎ付けです!おかげで、何回観ても全体が、まだ見渡せないのです。】
カリブ海の波の音をイメージした音やリズムが、ますます気持ちを高ぶらせていきます。海賊達が輪になって飛びながら踊る所は、新鮮で面白いです。
「第2場〜第6場Aーいよいよ物語りの始まりー」
上手側の花道に、悪役のエドガーを囲み、その手下数人が、凄みを効かせて歌います。迫力満点です!一番の悪であるエドガー(湖月わたるさん)は、憎々しげに歌った後、スペイン領であるサンタ・カタリーナ島攻略を企てます。彼はサンタ・カタリーナ総督府に莫大な黄金を請求し、断った総督府を、その息子(主役エミリオ、紫吹淳)の目前で、殺してしまいます。島は荒らされて炎上、全てを奪われ、逃げ惑う島の女達は叫びます。(美々杏里さんの悲愴な歌声が、響き渡ります)
城も島も両親もエドガー達に奪われ、すべてを失ったエミリオは、母の形見を手に、敵から逃れる為、後ろ髪を惹かれる思いで、城壁から海に飛び込みます。
「第6場B―イギリスのエドガー邸ー」
エドガーの妹であるエレーヌは美しく可憐なお嬢様です。気の進まぬ結婚を控えているのですが、恋の予感に焦がれて歌います。(映美くららさん。素直な感じで、清潔感のあるトップ娘役さんの誕生です)
「第7場〜8場―トルシカ島ー」
カリブ海の島の一つ、トルツカ島はラッカル船長率いる海族達の根城です。島の娘達が歌いながらやって来ます。女海賊アン(西条美恵さん)もいます。そこへ、海賊の若者達が上手花道からキッドを先頭にやって来て、一緒に歌い踊ります。キッドの髪は長く、赤いバンダナをハチマキ上に巻き、日に焼けて浅黒い顔をしています。ブルーグレーのようなシャツに黒皮の長いベスト、鉢巻と同色の腰巻を結んでいます。キッドは陽気でハンサムです。いかにも汐の匂いがするようです。
【キッド!我らが直ちゃんの登場ですね。あまりの素敵さに一目惚れの私】
浜辺に誰かが流れ着いて、気を失っています。何日も漂流していたのでしょうか…。ドクター(汐見真帆さん)の介抱で、海水を吐き、意識を取り戻します。エミリオです。船長のラッカム(立ともみさん)もやって来て、これまでのいきさつを聞きます。エドガーへの復讐に燃えて、エミリオは、手を貸すと言うラッカム船長の率いる海賊達の、仲間入りをします。
「第9場」
エミリオは海賊達に鍛えられ、実力を蓄えていきます。確かな腕を持ったキッドは、初め、ひ弱そうで青白い顔をした貴族の若様育ちのエミリオを見て、「エミリオちゃぁーん、海賊の名が聞いて呆れらぁー」みたいな感じで、からかいますが、一番先に立って、エミリオを鍛えます。
【キッドとエミリオとの一騎打ちも見られますよ。直ちゃんの始めて見る立ち回りが、またまた、素早くて、実に格好いいんですぅ。見所ですねぇ〜〜】
「第10場」
5年の月日が流れました。悪の海賊エドガーは、パナマ攻略等の成果を、イギリス政府から故国の英雄として認められ、ジャマイカの新総督に任命されます。エドガーの妹エレーヌは、ジャマイカの司法長官と政略結婚させられると言うのです、エレーヌは納得がいきません。
「第11場―アドベンチャー号船上」
海賊船上です。【セットがダイナミックで良く出来ています】
荒くれ男達が立ち働き、かつ仲間と戯れています。あれから、エミリオも実力を蓄え、海賊らしくなりました。
キッドも「俺達海賊〜♪名うての海賊〜♪」と、中心になって歌い踊ります。海賊達の仲間には他に面白い人物が沢山います。情報通の聞き耳(霧矢大夢)、頼りになる拝み屋(嘉月絵理)、若いネコザメ(一色瑠加)、鉄砲玉(楠恵華)、見習のウミネコ(叶千佳)、死神(研ルイス)、ネズミ(紫城るい)早撃ち(真野すがた)らです。
【ニックネームが愉快ですね!もっと、一人一人の動きをチェックすると、面白いかも知れませんが、キッドふぁんの私としては、キッドの行動の一部始終をオペラで追っているので、掴み切れていません。ハイ!】
ある日、年老いたラッカム船長が、引退する事を全員に告げます。そこで、次期船長にエミリオとキッドが推薦されますが、決を取ると、エミリオの方が優勢です。キッドとしては、「腕っぷしは自分の方が上だし、エミリオを特に鍛えたのは自分だし、5年ばかりの新米の海賊に船長が勤まるわけが無い!」と逆上します。喧嘩っ早い彼は、つい手が出てしまいます。
ところが、いつの間にかエミリオの腕は自分よりも上がっていて、歯が立ちません。吹っ飛ばされるばかりです。これでもかこれでもかと喧嘩を吹っかけますが、みんな自分がふっ飛ばされてしまいます。つい、刀に手がいってしまいますが、一度は止まります。が、とうとう刀を抜いてしまい、エミリオに向かおうとしますが、「キッド、まだ、やるのか!」と素手で構えるエミリオを見て、彼は無念な思いで、刀を捨て、「エミリオが船長だよぉ!」と認めます。
こうして、新船長が決まると、エミリオは自分の方針を語ります。船上での喧嘩について、禁止命令を出した事に、皆はブツブツ、ワイワイと騒ぎ、収拾がつきません。
刀を抜いて卑怯な自分に腹を立てていたのか?ずっと、黙っていたキッドが、「俺は賛成するよ!」と言います。アンも同時に賛成。
すると、操舵手の拝み屋が「自分も役を下りるので、新しい操舵手を決めてくれ」と言うのです。
そこで、エミリオがキッドを推薦します。皆も賛成。「有難うよ!」と、ちょっとテレ笑いのキッド。ガールフレンドのアンがニコニコして、キッドの傍により、慰めるように肩を組みます。
【いやぁー、血気盛んで荒くれだけど、やっぱり、おまえさんはいいやつだねぇ…。惚れ惚れするよぉーキッド!なぁーんて、アンは言ってるかな…?(笑)】
「第12場〜14場」
さて、エミリオ率いるアドベンチャー号は航海中にイギリス船を発見!砲撃を開始し、相手の船(ロイヤルパシフック号)に乗り込み、相手を降伏させました。お宝を頂いた海賊達は船尾に隠れていた女達を見つけてエミリオに差し出します。
そこで、エミリオはエレーヌとの出会いがあるのです。
【実際、こんな事があるのだろうか?と、私は思ったけど、そこが宝塚です。ロマンチックな場面が転回します。まるで、『ウエストサイド・ストーリー』のマリアとトニーのようです。と書けば、解り易いだろうか…。まさしく新コンビの誕生の時です。】
2人の間にしばしの時間が流れた時、そこへキッドとアンがやってきます。二人の寄り添う姿を見たキッドは、デリカシーに欠けた陽気さで、「うわぁー、やるじゃねぇかぁー!」と、でかい声を発しますが、それを見た途端に、顔色を変えて、立ち去るアンを、すぐに追いかけます。
次は聞き耳。この人もまた、どでかい声で、お嬢様の宝石箱を見つけて、喜び勇んでエミリオ達の前に現れます。やがて、ドクターも登場。エミリオとエレーヌはお互いに強く惹かれ合いますが、住む世界の違いを察したエミリオはエレーヌを船上に残し、自分の船に戻って行きます。
一方、キッドは顔色を変えて、走り去ったアンと2人きりになります。【上手側の花道です】
「おーい、待てよー」「なんか用?」「えっ?いや…。積荷も終わったしぃ、船は無事に仕事を終えて、獲物も手に入れた!島に向かっている。今はもう、何もする仕事がない…。」その先が出てこないキッドに「なんなんだよぉー!」とアンは、少しうるさそう。
そこで、キッドは2〜3歩後ずさりをして、銀橋の上手端に立ち、反対方向に向かって、「アン!俺は昔から、おまえが好きだぁー!!」と、大声を発する。アンの傍に戻って、「俺の女房にならねぇか?どうだ!?」アンは少し笑って、「あんたの気持ちは嬉しいけど、女房になるつもりはないよ…。」「おまえ、エミリオの事が……?」「私は………。とうさん(ラッカム)と一緒に船を降りるよ!」と逃げるように、その場を去る。「アーン!!」
【実際これは、日替わりで若干ニュアンスが変わるので、面白くて、見所です。キッドらしくて、いいですねぇ。最近は客席から拍手や笑いが起こり、結構、受けています。それにしても折角、男っぷりを発揮したのにさ、可哀想なキッド!キッドなら、アンの事を幸せにしてくれるに、違いないのにね!!】
「第15場」
ロイヤルパシフック号が掠奪された事を知ったエドガーは腹を立て、船を降りようとしていたラッカムとアンを捕らえて、海賊達を誘き寄せようと企んでいました。
「第16場―ジャマイカの港酒場」
ここはジャマイカの港酒場、海賊達が酒を飲み、女達と踊り、酒場の女主人(美々杏里さん)が歌っています。そこへエミリオやキッド達が来ます。ラッカムとアンが捕えられた事を知り、助け出す為にジャマイカの港にやって来たのです。キッドはアンの事が心配で、女主人やドクターが酒を勧めるが、いつになく元気がありません。初めは酒を拒否していたキッドも、ついに酒をあおり、女達と踊り出し、宴はたけなわとなります。
【明日は大仕事が控えていますからね!今日位騒がなくっちゃね。キッドの凄いチークダンスが見られますよ。(笑)ここも日替わり、生の舞台でなくては見られません。見所見所】
「第17場」
ジャマイカの総督府で舞踊会が催されています。着飾った貴族達が踊る中を、扮装したエミリオと聞き耳が忍び込みました。中庭にさしかかった時、思いがけずエミリオはエレーヌと再会します。忘れられぬ人に会えた喜びにふるえ、エミリオから事情を聞いたエレーヌは、人質が捕えられている牢屋の場所を教えます。
「第18場」いよいよ、大詰めです。
エミリオと聞き耳は牢獄を見つけ、牢番を倒し、ラッカムとアンを助け出します。そこで、エミリオはジャマイカの新総督がエドガーである事をラッカムから聞きます。当時の目的であるエドガーへの復讐心が、一気に燃え上がります。聞き耳にラッカムとアンを託しますが、見つかってしまい、敵の罠にはまってしまいます。憎々しげなエドガーもやって来ました。たちまち、そこは戦場と化します。ふいにエドガーに斬りかかろうとしたアンは、逆にロックウエル(大和悠河)に斬られてしまいます。
さぁ、そこへ勇士登場!!「ドケ!ドケ!」「アーン!!」と、勢いよく戦いの中に突っ込んで来たのは、キッドです。傷付いたアンを起こし、抱えながら敵を斬っていきます。ラッカムをも一緒に助け出すキッド!
【男気一杯のキッド、アンへの愛情が表向きで、戦いまくります。強いですよ!立ち回りをしながら銀橋を渡ります。いいぞー、直ちゃん!見せ場見せ場!身を乗り出す私】
何人も斬り倒し、銀橋を渡り終えた下手の花道辺りで、アンの息が絶えます。狂ったように、キッドはロックウエルに斬りかかり、舞台の中央で、一騎打ちとなります。ロックウエルを見事に斬った後、惜しくもキッドは、駆けつけた数人の敵に斬られてしまい、苦しみながら下手に引っ込みます。
【何故〜〜!あぁ、キッド!】
聞き耳が「キッド!」と叫び、次の敵フレデリック(大空祐飛)に斬りかかると、ウミネコがそれを倒します。
いよいよ、エミリオとエドガーの一騎打ちになります。エミリオがエドガーを抑え、剣を振り上げた時、エレーヌが駆けつけます。戦いの無意味さを叫び、エミリオを必死で止めます。とうとうエミリオはエレーヌの叫びに剣を捨てます。
ところが、その隙に、エレーヌの兄エドガーは剣を拾い、エミリオに斬りかかります。咄嗟にエレーヌはそれを庇って、自分が兄に斬られてしまうのです。思いがけず妹を斬ってしまったエドガーは一瞬怯みますが、尚もエミリオに斬りかかります。エミリオはそれをかわし、エドガーをついに倒します。
【エドガー、湖月さんの死にっぷりが実に上手です】
ハッ!と我に返ったエミリオは息も絶えそうなエレーヌの願いで、海に出ますが、辿り着いた時、エレーヌの命は絶えます。エミリオは思いを込めて、彼女を海に葬ります。
「第19場〜20場 ―アドベンチャー号船上―」
両親のかたきであるエドガーを倒したけれど、エレーヌを失った悲しみは深く、仲間のキッドやアンも失いました。残されたエミリオの身にやりきれない虚しさが押し寄せて来ます。
しかし、自分には果てしない海と自由があり、仲間もいます。海賊として明日を生きる事を誓い、主題歌を歌いながら幕となります。
【キッドは、アンが迎えに来た馬車に乗って、天国に向かいます。―完―(あれ、どこかで、聞いたような話ですねぇ。「笑」 )きっと、2人の世界で、幸せに暮らすでしょうね。後はご想像に…。】
惚れ惚れする直ちゃんキッドの服装は、初めから終わりまで、同じでした。5年以上経ってもこれしか持ってなかったのですね。すっかり汐の匂いが染み込んでますねぇ。(笑)
しかし、ご存知の通り、髪型は3種類でしたね。トルツカ島に行きつけの美容院でもあったのでしょうか…。(笑)
その他、エドガー役の湖月さんはほんとに凄みを効かせた悪役でしたし、やはり敵方の、大空さんや大和さんも品位のある、厳しい悪役をしっかりと、演じられていました。聞き耳の霧矢さんもユニークな演技が、目を引きましたね。ドクターの汐見さんも落ち着いた演技でした。
出演者達、各々の素晴らしい熱演で、ほんとに月組公演を楽しむ事が出来ました。
千秋楽まであと少し、海賊達と一緒になって、もうしばらく楽しみたいと思います。
大変長くなってしまいましたが、読んで下さって、有難う御座いました。m(__)m 筆者 01‘9月14日記