和歌と俳句

釈迢空

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朝の森暮の森

耳もとの鳥の羽ぶきに、森深き朝の歩みを とどめたりけり

むしあつき昨夜ひと夜さに 生れいでて 朝森とよめ 初蝉はなく

朝森の砂地に 長くうごもれるもぐらの道は、土新らしも

かの森の雑木のうら葉 さわだちに、照りみだりつつ 風つのり行く

夕やけの空のあかりに ほのぐらく 枝はゆれゐる 向つ峰の松

森の葉のをぐらきそよぎ あまた夜を ここには聞きつ。家さかりをり

野あるき

白じろと 経木真田を編みためて、うつつなきかも。草の上のをとめ

道なかの庚申塚に穂麦さし、わが来て去ると、誰知るらめや

草の藪深く入り立ち、火をもやす男もだせり。さびしともなく

桑

桑の畑 若枝のもろ葉うちゆすり、とほり照りつつ 光りしづけし

さ芽だちのみどりのいろひ にほはしき桑の若枝は 塵かうむれり

うちわたす窪田のなだれ ひとところ。桑の若枝の、日にかがやけり

吹きとよむ桑の中路の向ひ風 眩はしもよ。若葉の光り

荒蕪

草のなか 光りさだまるきんぽうげ。いちじるしもな。花 群れゆらぐ

きんぽうげ さわだつ花はほのかなれど、ただここもとに、ま昼日は照る

きんぽうげ、むらむら黄なり。風のむた その花ゆらぐ。いろひ かげろひ

草かげに、九品仏はいましつれ。現しくゆれて、きんぽうげの花