秋祭鬼面をかぶり心も鬼
猪垣は石垣猪を洩らさざる
冬扇の国より帰り時雨忌へ
皇霊に仕へ明治の炭の暖
前硝子皇居の紅葉つけ帰る
雪境宝永山の窪通る
長袋先の反りたるスキー容れ
湯豆腐が煮ゆ角々が揺れ動き
忽ち白近江の雪の域に入る
地は厚くして大雪の富士を載す
吾も富士講早発ちの低日輪
草の絮優遊富士の大斜面
富士颪薊に絮を残さざる
誰が為に登山の女人梳る
高きより砂走りの道始まれり
馬方と強力ここを界とす
登り来て俯伏す熔岩に手をつきて
富士火口肉がめくれて八蓮華
富士の壺覗けば底に衝き当る
富士の壺開きて隠すものもなし
富士山頂蟻の門渡りより崩る
下界まで断崖富士の壁に立つ
山を閉ぢ社を閉ぢ神はましまさず
富士山頂千木高知りて神まさず