塵箱に鱗ちりばめ秋祭
秋蝶や鉄はねぢけて古焼野
鋤く肘の若き桃色案山子の辺
白露に田舎司祭の爪の垢
新秋や湛へ切つたる老蛾の眼
鰯雲うからやからに寿司巻かむ
花野やはらか移動文庫の車輪過ぎ
星流る誰かの座右宝となり
とぢこもり暗く嶮しき茸を掘る
茸山にしんと静かな萩の尖
鹹き砂雁来紅の色を埋め
満月に聞ゆる犬の胴震ひ
銀河より享ける微光や林檎かむ
大銀河誰かラヂオを衰へさす
ゆふぐれの溝をつたへり稲の香は
渋赤柿下に足跡辛くもあり
憚らず直哉旧居に蜜柑焼く
こつぽりと雑魚寝布団に誓子あり
深山に来て墓洗ふ涙もろ
墓洗ふパン持ち跳ねる幼なさと
皮剥けし杉も祭のまぶしさに
櫨赤しおどろおどろの神輿寄せ
くるふ頭の撫で役はわれ鵙の秋
紅葉せり何もなき地の一樹にて