和歌と俳句

平畑静塔

菊流し柳川の舟急がざる

が鳴き青き童謡日和あり

鵙の窓あけ白秋の勉強間

きちきちも松の葉となる松にとび

旧道はくねる本筋十三夜

顎鳴つて納まる欠伸震災忌

鯰にて釣のけりつくまんじゆしやげ

男体に破れを詫びて障子貼る

わいん党葡萄三色籠に盛り

みどり子のしげしげ見入る葡萄の実

竜胆の花が立番隠れ尿

老い先を紅葉のてらす村祭

興行の菊人形の美少年

真夜中の菊人形は語らふか

紅葉狩石観音は跣足にて

青天の起立八・一五と共に

雷競べさなか花野を暗くして

葡萄摘むゑくぼ小出しに尽きもせず

栗鼠の歯の少女一匹齧る

栗並木秋は巴里へ通りぬけ

義経記の始めや白き野菊花

秋晴の三千世界柩車閉づ