気にかかる針の行方の供養かな
いつしかに失せゆく針の供養かな
たんぽぽの大きな花やうす曇り
たんぽぽの閉づれば天気変るなり
日曜の人にかげろひそめにけり
盆梅の仕立てし枝やうらおもて
盆梅の枝垂れし枝の数へられ
下萌ゆと思ひそめたる一日かな
病床に上げし面や下萌ゆる
故里に暫し寄す身や下萌ゆる
物芽出て指したる天の真中かな
吾宿の桃も桜もおくれがち
雪中に牡丹芽ぐめり谷の坊
蝌蚪生れて未覚めざる彼岸かな
つく杖の銀あたたかに蝶蝶かな
春寒や貝の中なる桜貝
ひく波の跡うつくしや櫻貝
南の海湧きたてり椿山
たんぽぽや一天玉の如くなり
すかんぽをみんなくはへて草摘り
水茎の古りにし反古や雛をさめ
枯蔓の吹切れてゐる椿より
蘂白く夕暮れにけり落椿
歩きつれ憩ひつれつつ春惜む