和歌と俳句

松本たかし

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気にかかる針の行方の供養かな

いつしかに失せゆく針の供養かな

たんぽぽの大きな花やうす曇り

たんぽぽの閉づれば天気変るなり

日曜の人にかげろひそめにけり

盆梅の仕立てし枝やうらおもて

盆梅の枝垂れし枝の数へられ

下萌ゆと思ひそめたる一日かな

病床に上げし面や下萌ゆる

故里に暫し寄す身や下萌ゆる

物芽出て指したる天の真中かな

吾宿の桃も桜もおくれがち

雪中に牡丹芽ぐめり谷の坊

蝌蚪生れて未覚めざる彼岸かな

つく杖の銀あたたかに蝶蝶かな

春寒や貝の中なる桜貝

ひく波の跡うつくしや櫻貝

南の海湧きたてり椿山

たんぽぽや一天玉の如くなり

すかんぽをみんなくはへて草摘り

水茎の古りにし反古や雛をさめ

枯蔓の吹切れてゐる椿より

蘂白く夕暮れにけり落椿

歩きつれ憩ひつれつつ春惜む