和歌と俳句

松本たかし

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庖丁を取りて打撫で桜鯛

桜鯛料る尾が飛び鱗散り

病める目にすぐ湧く涙白し

参道の遠賑はひに梅の茶屋

たたみ来る春の潮に籬せる

我が宿の落花に栖める四五戸あり

花一木あり人これを四方より

寺町に尼寺一つ花御堂

尼寺の畳の上の花御堂

閻魔以下十王胡坐し春暮るる

春ゆくにまかせ百日紅芽ぐむ

寒明や寺の裏なる隠居寺

寒明けし心竹石小景図

芝を焼く煙の中の人と梅

草餅や古る山里の言雅び

紅梅の残りし花に一茶亭

山浅く大滝かかる梅花村

滝川の流れ出てすぐ梅花村

長閑さや山焼く煙山を這ひ

一院に終始すたたずまひ

の扉を花に押し開け時宗忌

花人のこの廟所まで来るは稀

残花飛び萼吹き落ちて風烈し

徂く春の卒塔婆小町を観し疲れ

惜春やすこしいやしき紫荊