野をおもひ 牧場をおもひ やはらかき 羊に似たる眼 おもふとありぬ
相すまむと 待つまもはやく 今日のきて われのみものは 思ふおとろへ
君を恋ふと これ歌ならず 君を恋ふと 君えて云ふに 人わらはむか
御兄に 水仙いけむ ほそゆびの 御つめ染めこよ わが京の紅
神を知らず 道をならはず わが魂は いと幸に はぐくまれにし
もとよりなり 天女に似しは よきかたち 君をいだくは わが右手左手
歌あかずあれ 画師にあふ日は 画をこそと 姉がのろひし 扇と妹
君が歌は この春の夜に 似ると召しぬ わが師とよびし 美しき人
恋を歌ひ まどひに沈み 罪におち かくてうとまぬ 神をのろひぬ
たえなむとし われだに知らぬ いつはりが 時をつなぐと 知りそめし恋
松が中の 花にぬかよせ 耳をふる 白の御馬を よしとおもひぬ
ゆるされて 水ふみわたる 春の野や あらぬを富士と 君もまどひし
あくがれや こころの欲の 美くしき 飢ゑすくはずば 罪おひまさむ
少女なれば 脈に華さく 夢は見し わが身おつるを 恋とやおもひし
伯母が寺 愛宕のふもと 鳴滝に 椿ひろひて あらむ世なりし