『古事記のものがたり』・本のできるまで
その1

「自分の本は自分で売ります。
 “古事記のものがたり”出版までの奮闘記その15


取材で全国を回ることのできる仕事がやって来た

「サン・グリーンさん、お久しぶり! 」
電話を掛けてきたのはZさんだった。

彼とは元神主K先生の下で一緒に古神道を学んだり、出雲大社や隠岐島、丹波の元伊勢、伊勢神宮などを一緒に回り、奈良の大和三山で10月の満月の日に「月の宴」という古代神事復活のイベントなどをした、いわゆる神社ツアーの仲間だった。

『ご神事仲間』とみどりさんは言っているけど、なんか怪しい感じなのでぼくはなるべく仲間に入らないようにしている。「月の宴」のことについても、どれだけ怪しかった祭りであったことか……。またいつかみどりさんにコラム欄にアップしてもらうことにしよう。

そのZさんが、新しい仕事をスタートするので、ぜひぼくたちサン・グリーンの力を貸してほしいといってきた。ちょうど本の校正も終わってほっとしたところだったので、次の日(9月24日)に会う約束をして待ち合わせの喫茶店に出向いた。

Zさんはとても不思議な人で、おじいさんが神主をしていたらしいのだが霊気の強い神社などに行くと突然、(妖怪アンテナ?)に通信が入って、昔の人の言葉(みどりさんは神さんだと思っているらしい)でいろいろしゃべりだすというのだ。

ぼくが初めてみどりさんからZさんのことを紹介されたとき、なんかあやしい霊能者か詐欺師じゃないのかと疑っていた。

前の日にあらかじめ覚えてきたことを、それらしくしゃべっているんだろう、と思っていた。

一度、真夜中に一緒に某神社にお参りに行ったとき、Zさんが真っ暗な中でくぐもった聞き取りにくい声(周りにいる人にはまったく聞き取れない)を歌い? だしたことがあった。

それを奇妙なことに、みどりさんは真剣にメモをとっていた。ぼくには聞こえない言葉がみどりさんにはわかるんだ? みどりさんもあやしいんじやないのか? ぼくは真っ暗な中、少しおびえた。

「ふーん? 世の中にはこんなこともあるのかなあ?」とぼくはみんなの手前、とぼけた。

みんな真剣だったし。(+_+)

話はここで喫茶店までワープします。
ひさしぶりに会ったZさんはとても元気そうでニコニコしていた。

喫茶店の丸いテーブルに座り、「久しぶり! どうしてたん?」と会話が弾んだ。そしてZさんがぼくたちに力を貸してほしいと言ってきた新しい仕事の内容を話してくれた。

「じつは、今度○○○という携帯電話会社の中で『○○○』という占いのコンテンツを作る仕事をするので、サン・グリーンさんに全国の神社に取材に行ってもらって原稿を書いてほしいんだけど、いま手が空いてますか?」

一言で言えばそんな内容だった。ぼくは一瞬耳を疑った。

「えっー! ほんとぉー!!! 」

みどりさんは辺りかまわず大声で叫んだ。

手が空いてるも何も、きのう印刷屋さんに最終原稿を渡したばかりで、あとは本が完成するのを待つだけなんだから……。

それに10日ほど前、伊勢神宮会館の奥館長さんに本の推薦文を書いていただいたとき「本ができたら風呂敷に包んで館長の推薦文を持って、全国の神社にお願いして回るつもりです」と宣言してきたところだった。

そうは言ったものの、現実には本の出版費用に全財産をはたいてしまうので、全国の神社を回るにしてもまさか野宿して徒歩で行くわけにもいかない。だからそんなに遠くには出向けないなぁーどうしょうか? と思い悩んでいたのだ。

神さまはちゃーんとこうしてぼくたちに道をつけてくださっていた。製本印刷まではいろいろトラぶってあわてたけれど、一生懸命やってさえいればこうして「神さまネットワーク」がバックアップしてくださるのかもしれない。

こんなことが本当にあるのだろうか。こんな不思議なことは映画やドラマの中にしか絶対にないものと思っていた。たとえあったとしても、それがぼくたちの身に起こるなんて! びっくりだ。

Zさんに、その事情を話すとさすがの彼も、あまりの展開にびっくりしていた。もちろんぼくたちは喜んでその仕事を引き受けた。

これで交通費も宿泊費も心配しないで全国の神社に取材に行くことができて、原稿料をもらえるうえに、館長さんの紹介状のおかげで「古事記のものがたり」のことも神社にお願いできる。

Zさんからしてみれば、館長さんの紹介状のおかげで神社の取材がスムーズに運ぶというわけだ。

この日、9月24日はちょうど一年前にインターネット上で連載していた『古事記のものがたり』の連載が終わった日だった。


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