昔 おとこ有けり 馬のはなむけせんとて人を待ちけるに 来ざりければ 今ぞ知る苦しき物と人待たむ里をば離れず訪ふべかりけり
むかし おとこ 妹のいとおかしげなりけるを見をりて うら若み寝よげに見ゆる若草をひとの結ばむことをしぞ思ふ と聞えけり 返し 初草のなどめづらしき言の葉ぞうらなく物を思けるかな