和歌と俳句

伊勢物語

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五十段

 昔 をとこありけり 恨むる人を恨みて 
  鳥の子を十づつ十は重ぬとも思はぬ人をおもふものかは 
といへりければ 
  朝露は消えのこりてもありぬべし誰かこの世を頼みはつべき 
 又 をとこ 
  吹く風にこぞの桜は散らずともあな頼みがた人の心は 
 又 女 返し 
  行く水に数かくよりもはかなきは思はぬ人を思ふなりけり 
 又 をとこ 
  行く水と過ぐるよはひと散る花といづれ待ててふことを聞くらむ
 あだくらべかたみししけるをとこと女の 忍びありきしけることなるべし

五十一段

 昔 をとこ 人の前栽に菊うゑけるに

  植ゑし植ゑば秋なき時や咲かざらむ花こそ散らめ根さへ枯れめや

五十二段

 昔 をとこありけり 
人のもとよりかざり粽おこせたりける返事に 

  あやめ刈り君は沼にぞまどひける我は野に出でてかるぞわびしき 

とて 雉をなむやりける