2004/09/06(月)晴れ  職人の技に触れる。

地下鉄(17Kr)でロイヤルコペンハーゲン・ウェルカムセンターへ。デンマークの地下鉄は最近開通したばかりでまだまだ工事中のところも多い様子(空港までは2007年開通予定)。まず切符を買おうと券売機に向かったが、どう見ても紙幣を入れるところがない。形がオメガのマークのようになった溝はあるのだが、まさか紙幣をこの複雑な溝に沿って入れるわけではないだろうと(それでも一応やってみるあたりがまぬけだ)もう一度説明書きを読んでみると、きっちりと硬貨もしくはカードのみと書かれていた。デンマークは筋金入りのカード社会らしく、あまり紙幣は持ち歩かないようだ。全員の手持ちの硬貨をかき集め、ようやく切符を購入。ところが今度は改札が見当たらない。自動改札すらないのである(おまけに駅員の姿も見えず)。刻印だけすればいいのか?ときょろきょろしていると、「どうしたの?」とひとりの女性が声を掛けてくれた。どうも刻印が必要なのは長距離の切符のみらしく、他は乗るだけでいいらしい。なんとまぁ、鷹揚なことか!これならタダ乗りしても全然わからんではないか(してはいけませんよ)。

Frederiksberg(フレデリクスベア) 駅で下車し、さてここからどう行くかとガイドブックを読んでいると、またもひとりの男性が声を掛けてくれた。デンマークのひとは本当に親切だな。見習いたい。そのひとによると、ロイヤルコペンハーゲン・ウェルカムセンターまではただひたすらまっすぐ5分程歩けばいいらしい。そこで礼を言い、歩き出すこときっかり5分。目の前には「ロイヤルコペンハーゲン工場の店」という日本語の案内が(笑)。さすがにここは日本人観光客が多いようで、日本語による解説ビデオの上映もあれば、日本人の店員さんも数名いる様子。

入り口で40Kr払い、まずはビデオ鑑賞から。 ロイヤルコペンハーゲンと言えば、デンマーク王室ご用達の陶器として世界的に有名。もちろんお値段もかなりいいが、工程のすべてが手作業によるもので、小さな花の葉っぱ一枚一枚までもが職人の手で緻密に作られているのを見るとそれもありだと思える。とにかくお皿1枚でも、たくさんの人の手を渡って作られていくのだ(これ一番最後の段階で失敗したら他のメンバーに合わせる顔がないよ)。 とても気の長い話である。

ビデオの後は、実際に絵付けをしている職人さんに話を聞くことができた。ハロー!と声を掛けると、「こんにちわ。あなたたち、もうビデオは見た?これがビデオに出てきた”フローラダニカ”よ」と描きかけのプレートを見せてくれる。おまけに「後で消すから(笑)、実際に絵を描いてごらんなさい」と筆まで持たせてくれた。さすがに天下のフローラダニカのプレートにヘタな絵を描き殴る勇気はなく、描いているふりだけをして写真を撮る。それだけでも緊張。

この職人さんがなかなかの話上手で、客が我々3人とフランスから来たというおばさん1人だったせいもあって、いろいろな話を聞かせてくれた。特に傑作だったのが、アメリカに絵付けのデモンストレーションで行った時のこと。客のひとりがフローラダニカの熱心な収集家で、ぜひ家にきて欲しいと招待され行ってみたところ、たしかにテーブル一杯にフローラダニカがセットされていてそれはそれはゴージャスだったらしいのだが、その家の旦那と息子があろうことか、そのフローラダニカのプレートにいかにもアメリカ的な料理をてんこ盛りにし、野球を見ながらガツガツと食っていたというのだ(笑)。その光景がよほど衝撃的だったのか何度も、「ベースボールよ!それを見ながらこんな風に食べてたの!」と繰り返すのがおかしくて大笑いしてしまった。また、「イギリスの歌手のエルトン・ジョンって知ってる?彼もフローラダニカをおそろしくたくさん持ってるの。彼の家に招待されたら、きっとこのお皿で料理を出してくれるはずよ!」とおっしゃる。いやそれ以前にエルトン・ジョンの家に招待されることがないと思いますが(笑)。

とてもユニークだったその女性に礼を言い、次にメガフルーテッドの絵付けをしている女性にハロー!と声を掛ける。先の賑やかな職人さんと違いこちらは小柄で大人しそうな方で、英語が少し苦手のご様子。その彼女より更に言葉に難儀な我々と果たして意思の疎通はあるのか。これが意外にも通じるもんなんである。とにかく彼女が懸命に説明してくれるのでこっちも必死で理解しようとする。するとなんとなくわかるんだなこれが。そして「こういうこと?」と聞くと「そうそう!そうなの!」と彼女もにっこり、こちらもにっこり。すごく楽しかった。言葉なんか通じなくてもなんとかなるもんだ。

最後に、素人にはわからない傷やらなんやらで店頭に並ぶことのなかった商品が売られているアウトレットへ行く(センターに隣接している)。しかしいくら2級品といえど値段はそれなりによく、日本ではまず買わないだろうと思うが、職人さんにいろいろと話を聞いた後では「とにかくなんか1個は欲しい!」という気になるから不思議だ。そこで、二重構造になっていて熱いものを入れても持っても平気なメガフルーテッドのスタイリッシュカップ(←左下)を買うことにした。ふたつ買うとさらに25%オフになるのでyuka・Jさんと一緒に購入。これに税金が13%ほど返ってくるから日本で買うよりは少し安くなるはず。ちなみに同じフロア内にジョージ・ジェンセンのアウトレットもあって、こちらはほとんどが50%オフだった。シルバーのアクセサリーを探しているひとは覗いてみると掘り出し物に出会えるかも知れません。

30分ほど歩いてカールスベアビールの工場へ。目当てはタダで飲めるビール。ところがガイドブックでは土日が休みとなっていたのに、いつの間にやら月曜日と祝日が休みに変わっている!もしかしなくても今日は月曜日である。なんのためにここまで歩いてきたんだか。がっくりと肩を落とし、電車(17Kr)で中央駅まで戻る。その足でJCBプラザに寄り、スモーブロー(デンマークの伝統的な料理。オープンサンドですな)で有名なコペンハーゲン・カフェの場所を尋ね、ついでに切符の件も聞いてみるが、やはり指定ではないのでいつ乗ってもいいとのこと。

ふたりがトイレへ行っている間に、電車の検札はあるんですか?と訊ねたところ(別に他意はありませんよ)検札は不定期に抜き打ちで行われるので必ず切符は買った方がいいと言われる。なんせ刻印を忘れただけでも500Kr(日本円で1万円近い)の罰金なんだそうで、JCBプラザの女性も毎日きちんとしてたのに、たまたま忘れたその日に限って検札に来られ、「ホントにたまたま忘れただけなんです!」といくら弁解しても聞き入れてもらえずやむなく罰金を支払ったそうだ。「その点はホントにシビアですよ〜」と今思い出しても悔しいとばかりにため息をつくのを見て、わずかの金をケチるのはやめようと心に誓う。

ホテルへ戻る途中、セブンイレブンにてサンドイッチとジュースを買う。これだけですでに¥1000近い。JCBの方も言っていたが、デンマークは本当に物価が高いのでヘタにマクドなんかでお茶を濁すよりも、同じお金を使うならスモーブローなど名物料理を食べた方がよほど身につくとのこと。私もそう思う。

ホテルで昼食をとった後、またぶらぶらとストロイエに向かう(この1週間、いったい何度この歩行者天国を往復したことか)。両脇にズラリと並ぶ店のショーウィンドウには可愛らしいカラフルなセーターなどがたくさん飾られているがやはり手は出ず。特にガイドブックにも必ず載っているSweater Market(セーター・マーケット)は高い!デザイン的には素晴しいのだが、ちょっとしたニットキャップが軽く1万円前後はする。もう少し安ければ買うんだけどなぁ。

再び市庁舎前広場まで戻り、Ripley's Believe it or Not!(ビリーブ・イット・オア・ノット)博物館ギネス博物館の共通券を買う(128Kr)。さっそく、ビリーブ〜から入ってみるが客はどうやら我々3人だけのようである。ここには冒険家のリプリーというかわりもんのおっさんが世界中から集めた奇妙なものがどっさり展示されていて、「それをあなたは信じますか?それとも?」といちいち聞いてこられる仕組みになっているのであるが、正直どれも信じる信じない以前のものばかりであった。ようはガラクタだろそれ!と次第にあほらしくなってくるが、国立美術館より高い入場料の元をとるためそれなりに熱心に見てしまうのが我ながら悲しい。

ギネス博物館へ行く前に、晩御飯を仕入れるためMagasin du Nordというデパートの地下食品売り場へ(月〜木曜日は19時までしか開いてないのだ)。お惣菜売り場でハンバーグっぽいもの、なんかのフライ、サラダ等を買おうとするが、どうもみんな整理券を持って待っているようである。どこでそれを?と見回しているとおばあちゃんが、「そこにあるわよ」と教えてくれた(目の前にあった)。デンマークでは、スーパーや駅、空港などでこの整理券システムが取り入れられていて、イライラしないですむのがありがたい(日本の郵便局や銀行と同じで自分の番号がペカっと光ったら整理券を持って前へ。スーパーでは買うものを決めてから券を取った方がいいようです)。

あとはチーズとワイン。チーズは店員さんに「オススメは?」と聞くと薄く切ったものを味見させてくれる。ワインはあんまり安いのはない様子。最低でも¥600はする。それにスペインで味をしめたなんちゃってキャビアを購入。しめて370Kr。デパ地下でさえ安くはない。最後にギネス博物館へ寄って帰る。ここもまた客は我々のみ。が、それもわかる気がする内容だった。つうか、ビリーブ〜とネタかぶっちゃってるんですが(↑は両方にいた「世界一でかいひと」。手前は彼のお人形さんではなく、「世界一小さいひと」。ホントかよ!)この二つはよほどひまでお金に余裕がある人は行けばいいかと(私は二度と行きませんよ)。

   2004/09/07(火)晴れ 手がかりのない町・オーデンセ 、大人も子供も大好き!チボリ公園

朝、7:56発のオーデンセ行きの電車に乗るつもりでホテルを出たが、途中でどうにも間に合いそうにないことに気づく。しょうがないので8:30発を目指して行けば、その1本前の8:00発が電車の遅れで8:09発に変更になっている。ラッキー!それに乗ろう!と張り切ったまではよかったが肝心の電車がわからない。切符はあるがどこ行きの電車に乗ればオーデンセに着くのか調べていなかったのである。思えば我々はロンドンでも全く同じことをして、あの時さんざん懲りたはずであった。なのにこのていたらく。

しかも中央駅は広い割に駅員の姿がなく窓口には列ができている。時間ばかりが過ぎていく中、プラットホームまで降りれば誰かいるだろうとあたりをつけ小走りに急ぐ。うまい具合にすぐ駅員が見つかり、目の前にある電車に乗ればいいよと教えてくれたが、「オーデンセで降りるのならBの91か92に乗りなさい」というのだ。Bってどこだ?と見渡すとこれがホームの一番端。時間はあと1分ほどという中、朝から全力疾走した。その時は、「きっと後ろの車両は途中で切り離されるんだろう。それで1番前に乗れと言われたに違いない」ということで納得したが、どう考えても切り離した雰囲気はなかった。どういう意味だったのかなあれは(参考までに言うとオーデンセはAalborg(オールボー)行きの電車に乗ればいいようです)。とにもかくにも空いてる席につき一服。約75分ほど陸路を行く。途中で海が見えたり馬が見えたり牛が見えたりとなかなか楽しい電車の旅であった。

オーデンセに着き、まずは”オーデンセ・アドベンチャーパス”(110Kr。24時間有効)を買いに市庁舎へ。ところがこの町、標識らしいものがなかなか見つからないのだ。おまけにあってもデンマーク語の表記のみでそれがいったい何を指しているのかわからない。ガイドブックの地図と微妙に通りの名前も違っている中、なんとか市庁舎に辿り着く。インフォメーションに入りカードを買うと、やけにクドイ顔をしたお兄ちゃんが「これは今日使うの?何時から?」と聞いてくる。適当に「11時から」と答えるとカードに手書きで日付と使用開始時間を記入。これってあとで書き直してもわからんのではない?デンマークという国はさりげなく良心を試されるところであるな。

パスの使用開始時間まで30分ほどあったので、先にアンデルセン公園へ行くことにする。途中で聖クヌート教会(撮影不可)に入ったが、ここでも「ポストカードのお金はここへ入れてください」と書いた紙がテーブルに貼り付けてあるだけで、係りの人間は誰もいない。人間こうなると意外とズルはできないもんである。

アンデルセン公園は緑は多いし、風は気持ちいいし、小川は流れてるし、静かだしで散歩するのに最適。うちの近所にもこんな場所があればいいのにと思う。

公園から歩いてアンデルセン子供時代の家へ(アドベンチャーパス使用可)。外から見た時は広く見えたが中に入ると小さな部屋がひとつしかなく、あっという間に裏庭に出てしまった。ここに家族全員(何人かは知らん)で住んでたとは驚き。しかもよく見たら傾いてるし。貧しかったのだなぁ、アンデルセンは。

次にアンデルセン博物館へ(アドベンチャーパス使用可。日本語の案内図あり)。この辺りは可愛い家がひしめきあって並んでいて、さすがはおとぎの国といった感じ。博物館自体も窓が大きく取られているのですごく明るい。入り口に置いてあるイスも洒落ていて北欧のセンスのよさを感じた。庭にはカフェもあり、みんな気持ちよさげにビールを飲んでいた。ちなみにデンマークではビールの方がコーヒーより安い。素晴しい。

中に入ると遠足だか社会見学だか知らないが子供がたくさんいた。どの子も白に近い金髪に白い肌、青いお目目で奇跡のように可愛い。天使のようなとはまさにこういう子供たちのことを言うのだな。ただ日本人から見たらみんな同じ顔に見えるけど(向こうもそう思ってるだろう)。デンマークではあまり賑やかなひとにはお目にかからなかったが、さすがに子供の集団は元気一杯でそれなりに騒々しい。が、それも度が過ぎると先生ではなく、周りの子供達が一斉にシィーーーー!!!と指を立てて注意していたのには感心した。日本の猿のようなガキん子どもにぜひ見習わせたい。

館内には各国で出版されたアンデルセンの本がたくさん展示されていて、日本語のコーナーには自分たちが子供の頃に夢中で読んだ昔なつかしい絵本シリーズも置いてあった。「このシリーズ持ってたなぁ」としばし盛り上がるが、あの頃家にあったたくさんの絵本や児童文学の本たちはみなどこへ消えてしまったんだろう。うちは本は売ることはあっても捨てることはなかったので、近所の子供達にでもあげてしまったのかな。最近の子供もアンデルセンの童話を読んだりするんだろうか。

それにしてもアンデルセンの顔は陰気くさい。病気の子供の枕もとで本を読んであげている絵が飾ってあったけど、一瞬死神が迎えにきたのかと思ったよ。あんな怖い顔した男に間違っても明るいとはいえないお話を読んでもらって果たして子供達は嬉しかったのだろうかとちと疑問に思った(私が知っているアンデルセン童話って、「みにくいあひるの子」「マッチ売りの少女」「親指姫」「はだかの王様」「人魚姫」くらいなんだけど、笑えたのって「はだかの王様」以外なんかあったかなぁ。そういや子供の頃、親指姫の胡桃のベッドとチューリップのお布団に異常に憧れたのを思い出した。当時は私もメルヘンの国の住人だったのね〜)他にはアンデルセンが得意としていた切り絵の作品が多数あって、相当のテクニシャンだったことをうかがわせた(あの顔であの細かい切り絵。作業中はさぞや鬼気迫る様子だったに違いない。子供は泣いたなきっと)。オーデンセの地ビールには彼の切り絵がデザインされたラベルのものもあり。お土産にどうぞ。

館内を一巡すると自然にギフト・ショップに出る仕組みになっている。どこも考えることは同じであるな。無性にアンデルセン童話を読み返したい気分になっていたので覗いてみたが、日本語訳の本は置いていなかった(ここで復刻版を出せば売れると思うけどなぁ)。代わりに絵ハガキを購入。

博物館の近くにあるギフト・ショップ(→国旗の店)でアンゼルセンのミニ胸像とあひるの子の置物を買う。合計35Krであったが、200Krの紙幣を出すとお釣りがないので小銭はないかと聞かれる。財布を覗いたところ32Krしかなかったのでそう言うとそれでいいよと3Krまけてもらった。得した。

そろそろお腹が空いてきたので何か食べようとデパートに入ってみるが、特に食べたいものが見つからない。そこで街中でちょくちょく見かけたチャイナ・ボックスはどうかという話になった。アメリカ映画などで出演者が職場でかっこんでいるあれである。お値段も25Krと手頃だし、さっそく市庁舎近くの店に入ってみた。お店のひとに7種類くらいあるおかずの中から好きなものを3つ選んでくれと言われ、焼き飯、春巻き、オニオンリングをチョイス。上からカレーソースもかけてもらう。外のテーブルに陣取り食べてみるとこれが美味しい。正直、春巻きなんかはかなり油っぽいのだが、久しぶりにアジアの味付けに出会えてほっとする。やはり食はアジアに限る(毎回言ってるなこれ)。

見たいものは一通り見たので予定より早いがコペンハーゲンに戻る事にした。行きと違い帰りの電車は空席が少なかったが、4人掛けのテーブルに1人で座っていた男性が荷物をどけてくれたので座ることができた。彼は最初は怖そうに見えたが、「日本人ですか?オーデンセに行ってきたの?あそこは美しい町でしょう」と色々と話し掛けてくれてとても人懐っこいひとだった。もっと英語が話せれば会話も弾むんだがなぁ。それにしてもデンマークのひとは語学が達者である。英語はほぼ母国語のように使いこなせるそうだし、他にドイツ語、フランス語もいけちゃう人が多いらしい。それで観光客にも親切にできるのだろうなと思う。いろんな国のひとと気軽にコミュニケーションが取れると楽しいだろうな。もっと真面目に英語の勉強をしておけばよかったよ。とほほ。

荷物を置きにいったんホテルに戻る。実はこの時我々はひとつの難題を抱えていたのである(おおげさ)。明日の朝このホテルを一度チェックアウトしてその夜はレゴランド・ホテルに泊まり、翌日再びチェックインする予定であったのだがスーツケースを1日預かっておいてくれるかを英語で聞かねばならないのだ。しかもH・I・Sのひとの話によれば預かってはくれるがおそらくいくらか要求されるだろうとのことだったので、この物価の高いデンマークで果たしていくら取られるのかも心配だった。ともかくも英会話本で丸暗記した「クッジュープリーズキープアワバゲッジ?」を念仏のように唱えながらフロントに向かう。いたのは優しそうな男性であったが、「ハロー!」と言ったものの続く言葉が出てこない。思わず固まる私に「なにかお困りですか?」と言ってくれたのに力を得て「明日の朝チェックアウトします。でも明後日にはまたチェックインします。だからクッジュープリーズキープアワバゲッジ?(棒読み)」と言ってみた。ちなみにこんなに長い英語のセンテンスを話したのは生まれて初めてである。すると向こうは「オー!もちろんです!お安い御用ですよ!」と必死の形相で何を言い出すのかと思えば荷物を預かって欲しいだけですか!びっくりしたよ!とばかりに両手を広げて引き受けてくれた。おまけに「それでその・・・おいくらですか?」と聞くと心底驚いたように「うちにはトランクルームがありますからお金はいりませんよ!」と無料で預かってくれるというのだ!嬉しい!なにより言葉が通じたのが嬉しかった。英語が普通に話せるひとにはこの喜びわかるまい。

気分も軽く、チボリ公園へ(入園料65Kr。パスポートもあり)。夕方から夜にかけての方が客が多いのか、入り口には列ができていた。全体に年配のひとの姿が目立つ。アトラクションと呼べるほどのものはほとんどないが、日本の自動車メーカーのマツダがスポンサーの絶叫マシーン、デーモン(だったような)にだけ乗ってみた(60Kr)。最初はえらくスピードの遅いジェットコースターだと思ったが、落とされひねられ回転させられているうちに妙におかしくなってゲラゲラ笑ってしまう。なかなか味のあるコースターであった(ひとはそれなりに多いが乗り物に乗っているのは子供だけなのでどこも比較的空いている。園内をぐるっとするのに20分もあれば充分)。

チボリ公園は夜が特にオススメだそうなので先にご飯を食べることにし、公園に隣接されているハードロック・カフェに入った。ところが食事ができる席は満席なのでバーで待つしかないという。そこでしばらく待っていたが、なかなかオーダーに来てくれないので(別にサボっているわけではないみたい。店が広いわりに店員が少ないのだ)園内のレストランに行くことにした。

だいぶ涼しくなっていたので室内で食べる方がいいと思い探してみるが、きちんとしたレストランはどこもそれなりの値段がする。その中でも比較的安かったイタリアンの店へ入ってみた。

店内は天井が高く高級な雰囲気で、店員さんもきちっとした格好でサービスもいい。他のテーブルで食べているひとの皿を盗み見ると盛り付けも美しく、なかなか美味しそうである。ところが、これは期待できる!と喜んだのも料理がきてそれを一口食べる瞬間までであった。「いただきま〜す!」とそれぞれの料理を口にいれること数秒、我々は無言で見つめ合った。

率直に申し上げて「不味い」んである。ありえないくらい不味い。まずパスタやリゾットに塩っけが一切ない。そしてパスタが異様にもそもそしている。飲み下すのに大変な労力を強いられるほどだ。「もしやこの店のシェフ、パスタを茹でる際に塩もオリーブオイルも一切使ってないのでは?」と思い、それぞれテーブルに置いてある塩、胡椒をかけてみたが今さら茹で加減までは変えられない。しかし、「期待ハズレもええとこやな!」と文句を垂れながらも、やけに愛想のいい店の兄ちゃんに「食事はどう?楽しんでる?」と聞かれると「美味しいよ!」と思ってもいないことを言ってしまうのが哀しかった(つくづく男前に弱い)。あとはこの店にイタリア人が来ないことを祈るのみである(パスタ2品、リゾット1品、ビール3杯で610Kr。高いなおい)。

店を出てぶらぶらと散歩する。園内ではピエロのショーや演奏会も催されていてのんびりいい雰囲気。夜は11時まで開いているので、夕方からゆっくり出かけるといいように思います。ただしイタリアンの店は避けるように!