朝、7:56発のオーデンセ行きの電車に乗るつもりでホテルを出たが、途中でどうにも間に合いそうにないことに気づく。しょうがないので8:30発を目指して行けば、その1本前の8:00発が電車の遅れで8:09発に変更になっている。ラッキー!それに乗ろう!と張り切ったまではよかったが肝心の電車がわからない。切符はあるがどこ行きの電車に乗ればオーデンセに着くのか調べていなかったのである。思えば我々はロンドンでも全く同じことをして、あの時さんざん懲りたはずであった。なのにこのていたらく。
しかも中央駅は広い割に駅員の姿がなく窓口には列ができている。時間ばかりが過ぎていく中、プラットホームまで降りれば誰かいるだろうとあたりをつけ小走りに急ぐ。うまい具合にすぐ駅員が見つかり、目の前にある電車に乗ればいいよと教えてくれたが、「オーデンセで降りるのならBの91か92に乗りなさい」というのだ。Bってどこだ?と見渡すとこれがホームの一番端。時間はあと1分ほどという中、朝から全力疾走した。その時は、「きっと後ろの車両は途中で切り離されるんだろう。それで1番前に乗れと言われたに違いない」ということで納得したが、どう考えても切り離した雰囲気はなかった。どういう意味だったのかなあれは(参考までに言うとオーデンセはAalborg(オールボー)行きの電車に乗ればいいようです)。とにもかくにも空いてる席につき一服。約75分ほど陸路を行く。途中で海が見えたり馬が見えたり牛が見えたりとなかなか楽しい電車の旅であった。
オーデンセに着き、まずは”オーデンセ・アドベンチャーパス”(110Kr。24時間有効)を買いに市庁舎へ。ところがこの町、標識らしいものがなかなか見つからないのだ。おまけにあってもデンマーク語の表記のみでそれがいったい何を指しているのかわからない。ガイドブックの地図と微妙に通りの名前も違っている中、なんとか市庁舎に辿り着く。インフォメーションに入りカードを買うと、やけにクドイ顔をしたお兄ちゃんが「これは今日使うの?何時から?」と聞いてくる。適当に「11時から」と答えるとカードに手書きで日付と使用開始時間を記入。これってあとで書き直してもわからんのではない?デンマークという国はさりげなく良心を試されるところであるな。
パスの使用開始時間まで30分ほどあったので、先にアンデルセン公園へ行くことにする。途中で聖クヌート教会(撮影不可)に入ったが、ここでも「ポストカードのお金はここへ入れてください」と書いた紙がテーブルに貼り付けてあるだけで、係りの人間は誰もいない。人間こうなると意外とズルはできないもんである。
アンデルセン公園は緑は多いし、風は気持ちいいし、小川は流れてるし、静かだしで散歩するのに最適。うちの近所にもこんな場所があればいいのにと思う。
公園から歩いてアンデルセン子供時代の家へ(アドベンチャーパス使用可)。外から見た時は広く見えたが中に入ると小さな部屋がひとつしかなく、あっという間に裏庭に出てしまった。ここに家族全員(何人かは知らん)で住んでたとは驚き。しかもよく見たら傾いてるし。貧しかったのだなぁ、アンデルセンは。
次にアンデルセン博物館へ(アドベンチャーパス使用可。日本語の案内図あり)。この辺りは可愛い家がひしめきあって並んでいて、さすがはおとぎの国といった感じ。博物館自体も窓が大きく取られているのですごく明るい。入り口に置いてあるイスも洒落ていて北欧のセンスのよさを感じた。庭にはカフェもあり、みんな気持ちよさげにビールを飲んでいた。ちなみにデンマークではビールの方がコーヒーより安い。素晴しい。
中に入ると遠足だか社会見学だか知らないが子供がたくさんいた。どの子も白に近い金髪に白い肌、青いお目目で奇跡のように可愛い。天使のようなとはまさにこういう子供たちのことを言うのだな。ただ日本人から見たらみんな同じ顔に見えるけど(向こうもそう思ってるだろう)。デンマークではあまり賑やかなひとにはお目にかからなかったが、さすがに子供の集団は元気一杯でそれなりに騒々しい。が、それも度が過ぎると先生ではなく、周りの子供達が一斉にシィーーーー!!!と指を立てて注意していたのには感心した。日本の猿のようなガキん子どもにぜひ見習わせたい。
館内には各国で出版されたアンデルセンの本がたくさん展示されていて、日本語のコーナーには自分たちが子供の頃に夢中で読んだ昔なつかしい絵本シリーズも置いてあった。「このシリーズ持ってたなぁ」としばし盛り上がるが、あの頃家にあったたくさんの絵本や児童文学の本たちはみなどこへ消えてしまったんだろう。うちは本は売ることはあっても捨てることはなかったので、近所の子供達にでもあげてしまったのかな。最近の子供もアンデルセンの童話を読んだりするんだろうか。
それにしてもアンデルセンの顔は陰気くさい。病気の子供の枕もとで本を読んであげている絵が飾ってあったけど、一瞬死神が迎えにきたのかと思ったよ。あんな怖い顔した男に間違っても明るいとはいえないお話を読んでもらって果たして子供達は嬉しかったのだろうかとちと疑問に思った(私が知っているアンデルセン童話って、「みにくいあひるの子」「マッチ売りの少女」「親指姫」「はだかの王様」「人魚姫」くらいなんだけど、笑えたのって「はだかの王様」以外なんかあったかなぁ。そういや子供の頃、親指姫の胡桃のベッドとチューリップのお布団に異常に憧れたのを思い出した。当時は私もメルヘンの国の住人だったのね〜)他にはアンデルセンが得意としていた切り絵の作品が多数あって、相当のテクニシャンだったことをうかがわせた(あの顔であの細かい切り絵。作業中はさぞや鬼気迫る様子だったに違いない。子供は泣いたなきっと)。オーデンセの地ビールには彼の切り絵がデザインされたラベルのものもあり。お土産にどうぞ。
館内を一巡すると自然にギフト・ショップに出る仕組みになっている。どこも考えることは同じであるな。無性にアンデルセン童話を読み返したい気分になっていたので覗いてみたが、日本語訳の本は置いていなかった(ここで復刻版を出せば売れると思うけどなぁ)。代わりに絵ハガキを購入。
博物館の近くにあるギフト・ショップ(→国旗の店)でアンゼルセンのミニ胸像とあひるの子の置物を買う。合計35Krであったが、200Krの紙幣を出すとお釣りがないので小銭はないかと聞かれる。財布を覗いたところ32Krしかなかったのでそう言うとそれでいいよと3Krまけてもらった。得した。
そろそろお腹が空いてきたので何か食べようとデパートに入ってみるが、特に食べたいものが見つからない。そこで街中でちょくちょく見かけたチャイナ・ボックスはどうかという話になった。アメリカ映画などで出演者が職場でかっこんでいるあれである。お値段も25Krと手頃だし、さっそく市庁舎近くの店に入ってみた。お店のひとに7種類くらいあるおかずの中から好きなものを3つ選んでくれと言われ、焼き飯、春巻き、オニオンリングをチョイス。上からカレーソースもかけてもらう。外のテーブルに陣取り食べてみるとこれが美味しい。正直、春巻きなんかはかなり油っぽいのだが、久しぶりにアジアの味付けに出会えてほっとする。やはり食はアジアに限る(毎回言ってるなこれ)。
見たいものは一通り見たので予定より早いがコペンハーゲンに戻る事にした。行きと違い帰りの電車は空席が少なかったが、4人掛けのテーブルに1人で座っていた男性が荷物をどけてくれたので座ることができた。彼は最初は怖そうに見えたが、「日本人ですか?オーデンセに行ってきたの?あそこは美しい町でしょう」と色々と話し掛けてくれてとても人懐っこいひとだった。もっと英語が話せれば会話も弾むんだがなぁ。それにしてもデンマークのひとは語学が達者である。英語はほぼ母国語のように使いこなせるそうだし、他にドイツ語、フランス語もいけちゃう人が多いらしい。それで観光客にも親切にできるのだろうなと思う。いろんな国のひとと気軽にコミュニケーションが取れると楽しいだろうな。もっと真面目に英語の勉強をしておけばよかったよ。とほほ。
荷物を置きにいったんホテルに戻る。実はこの時我々はひとつの難題を抱えていたのである(おおげさ)。明日の朝このホテルを一度チェックアウトしてその夜はレゴランド・ホテルに泊まり、翌日再びチェックインする予定であったのだがスーツケースを1日預かっておいてくれるかを英語で聞かねばならないのだ。しかもH・I・Sのひとの話によれば預かってはくれるがおそらくいくらか要求されるだろうとのことだったので、この物価の高いデンマークで果たしていくら取られるのかも心配だった。ともかくも英会話本で丸暗記した「クッジュープリーズキープアワバゲッジ?」を念仏のように唱えながらフロントに向かう。いたのは優しそうな男性であったが、「ハロー!」と言ったものの続く言葉が出てこない。思わず固まる私に「なにかお困りですか?」と言ってくれたのに力を得て「明日の朝チェックアウトします。でも明後日にはまたチェックインします。だからクッジュープリーズキープアワバゲッジ?(棒読み)」と言ってみた。ちなみにこんなに長い英語のセンテンスを話したのは生まれて初めてである。すると向こうは「オー!もちろんです!お安い御用ですよ!」と必死の形相で何を言い出すのかと思えば荷物を預かって欲しいだけですか!びっくりしたよ!とばかりに両手を広げて引き受けてくれた。おまけに「それでその・・・おいくらですか?」と聞くと心底驚いたように「うちにはトランクルームがありますからお金はいりませんよ!」と無料で預かってくれるというのだ!嬉しい!なにより言葉が通じたのが嬉しかった。英語が普通に話せるひとにはこの喜びわかるまい。
気分も軽く、チボリ公園へ(入園料65Kr。パスポートもあり)。夕方から夜にかけての方が客が多いのか、入り口には列ができていた。全体に年配のひとの姿が目立つ。アトラクションと呼べるほどのものはほとんどないが、日本の自動車メーカーのマツダがスポンサーの絶叫マシーン、デーモン(だったような)にだけ乗ってみた(60Kr)。最初はえらくスピードの遅いジェットコースターだと思ったが、落とされひねられ回転させられているうちに妙におかしくなってゲラゲラ笑ってしまう。なかなか味のあるコースターであった(ひとはそれなりに多いが乗り物に乗っているのは子供だけなのでどこも比較的空いている。園内をぐるっとするのに20分もあれば充分)。
チボリ公園は夜が特にオススメだそうなので先にご飯を食べることにし、公園に隣接されているハードロック・カフェに入った。ところが食事ができる席は満席なのでバーで待つしかないという。そこでしばらく待っていたが、なかなかオーダーに来てくれないので(別にサボっているわけではないみたい。店が広いわりに店員が少ないのだ)園内のレストランに行くことにした。
だいぶ涼しくなっていたので室内で食べる方がいいと思い探してみるが、きちんとしたレストランはどこもそれなりの値段がする。その中でも比較的安かったイタリアンの店へ入ってみた。
店内は天井が高く高級な雰囲気で、店員さんもきちっとした格好でサービスもいい。他のテーブルで食べているひとの皿を盗み見ると盛り付けも美しく、なかなか美味しそうである。ところが、これは期待できる!と喜んだのも料理がきてそれを一口食べる瞬間までであった。「いただきま〜す!」とそれぞれの料理を口にいれること数秒、我々は無言で見つめ合った。
率直に申し上げて「不味い」んである。ありえないくらい不味い。まずパスタやリゾットに塩っけが一切ない。そしてパスタが異様にもそもそしている。飲み下すのに大変な労力を強いられるほどだ。「もしやこの店のシェフ、パスタを茹でる際に塩もオリーブオイルも一切使ってないのでは?」と思い、それぞれテーブルに置いてある塩、胡椒をかけてみたが今さら茹で加減までは変えられない。しかし、「期待ハズレもええとこやな!」と文句を垂れながらも、やけに愛想のいい店の兄ちゃんに「食事はどう?楽しんでる?」と聞かれると「美味しいよ!」と思ってもいないことを言ってしまうのが哀しかった(つくづく男前に弱い)。あとはこの店にイタリア人が来ないことを祈るのみである(パスタ2品、リゾット1品、ビール3杯で610Kr。高いなおい)。
店を出てぶらぶらと散歩する。園内ではピエロのショーや演奏会も催されていてのんびりいい雰囲気。夜は11時まで開いているので、夕方からゆっくり出かけるといいように思います。ただしイタリアンの店は避けるように!
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