| ■ 2007年冬期(1月〜3月)読んだ本をふりかえる(前編) | Date: 2007-04-15 (Sun) |
2007年冬(1月〜3月)読んだ本をふりかえる(前編)
今年の冬も終わりました。
完全に余すとこなく。
インフルエンザは結局、流行ったのかそーでないのか、
よくわからないまま&東京はいちども雪が降らぬまま、春です春。
じゃー、イッキにふりかえってみましょう。
『八つ墓村』横溝正史
これは再読。
昨年末、「犬神家の一族」が映画リメイクされて、
「お〜!久々に横溝読みてぇ〜!」
って感じで、この冬はスタート。
まずはその犬神でなく、横溝正史で最も知名度が高いであろう本作から。
と、同時に、本作は「有名だけど実は読まれてない」筆頭作品でしょう。
八つ墓村、ってみなさんほぼ聞いた事ある単語だと思うんだけどね。
100万回くらいドラマ化もされてるし…。
でも何と本作は未だ一度も“原作通り”に映像化されてないのです。
特に、毎回“里村典子”がキャストから省略されており、
ってことは、それじゃこの物語の魅力はマー、1/3といっていいでしょうな。
そんなの八つ墓村じゃないやい。
さて今回再読し、この作品こそ“横溝の最高傑作”だと確信しました。
ミステリーというより、
伝奇ロマン、…いや、冒険小説と、いっていい胸のすく物語です。
(ドロドロしたイメージの)金田一モノとしてもおそらく読後感の良さはNo.1でしょう。
事件に巻き込まれた青年の一人称でつづられ、
じつは金田一の出番はほーーんの少し。
しかしそれがこの物語の大きな魅力になっています。
1行目の“八つ墓村”の紹介描写からアッと言う間に引き込まれる語り口の上手さと、幕開け感。
なにしろ文体の読みやすさをぜひ、体感していただきたい。
またミステリーとしての仕掛けも十分で、
なかなか犯人がひとりに絞り込めなく、もし見抜いたと言えども、
ほとんどの方が、
この連続殺人の動機を見抜けないことでしょう。
もちろん!きちっと伏線は書かれています。
『犬神家の一族』横溝正史
お目当てです。これも再読。
なにしろ、市川監督の最初の映画版がとてつもなく素晴らしかったですね。
「ゴムマスク」の効果は明らかに原作の数倍、ありました。
金屏風と血の色彩感覚や、後年エヴァンゲリオンに大きな影響を与えたタイトルロール。
また、小説に無い“エピローグ”を加えるなど、
もはや市川監督の最高傑作といえますし、日本映画史上に残る一本。
学生の頃、市川特集を組んだ映画館ありまして、
それぞれキャストによるトークショーがあったんですね。
んで俺は、この犬神家の回へと足を運んだのですが、
その時のゲストが兵ちゃんと草笛&坂口良子。
このトークショーは面白かったですねぇ。
正直、兵ちゃんがひとりでしゃべり倒しましたがネ。
色々な話あったんですが、市川監督、冒頭の遺言状が読まれるシーンは、
ずいぶんこだわって撮影したそうです。
…とまぁ、脱線こいて映画版をほめちぎりましたがー、
どっこいやはりこの原作は、それでも映画の上を行きます。
完成度は“八つ墓村”と同レベル、うん、僅差でしょうな。
この2作品はほとんど間をおかずに書かれていて、横溝のまさに才能したたる黄金期を感じさせます。
“八つ墓村”同様、じつはアガサ・クリスティーのとある作品に着想を得、
坂口安吾の“不連続殺人事件”に影響を受けています。
とはいえ、これは本格ミステリーとして強力な完成度を誇っており、
おそらくノーヒントで真相に辿り着くのは難しいでしょう。
特に!
(以下ネタばれね)
殺人の実行犯と死体に装飾をほどこした人物が別、
しかも双方は協力関係にあらず。
という部分は、作者のオリジナルのはずだし、これが実に素晴らしいんですよ。
物語のテンポもすごくいいし、
皆さんの期待する旧家の人間関係の濃ゆ〜いドロドロもてんこもり。
救いの無い登場人物がゴロゴロしております。
そんな中、クライマックスで、
“金田一がスキーをする”
場面があります。
これはおそらく一度も映像化されてない(毎回省略されてる)ハズなんですが、
映画は何度も見た、でも原作は未読。
…と言う方は、ぜひこのシーンを目標にしていただいて、本を手に取り、
金田一のスキーの腕前を確認して下さい。
『獄門島』横溝正史
再読。
一般に横溝正史の最高傑作と言えば、これが挙げられます。
が、今回読み直して、
そうでない、とハッキリ分かりました。
おそらく読者によっては、
「なんでこれが日本史上最高のミステリーなの?」(←こう評価される事はよくあります)
と疑問に感じる方もいるでしょうね。
この作品は横溝作品としては(実は)珍しく、トリックもあり、
また犯人を正確に当てるのは非常に難しく、
まずよく練られたパズラーと言えます。
しかし、展開にタメがなく、
せっかくの「島」「キャラの濃い住民」という設定が活かしきれてない気がします。
とはいえ、その「キャラの濃さ」は折り紙付きで、
獄門島のゆかいな面々はぜひ堪能して欲しいポイントです。
そして、ラストの島を去る金田一。
ここもアッサリと描かれますが、なぜか強烈な余韻を残します。
ひとつ小さな出来事がまた、この余韻を増幅させるのですが、
俺的には、この最後のエピローグがこの物語の最大の見せ場と感じてしまいます。
名探偵の恋という、とてつもなく美味しい素材が、
宮沢りえの体重ばりにアッサリと軽く描かれるのも要注意。
『夜歩く』横溝正史
これだけ未読作品。
横溝の隠れた傑作、と名高い本作ですが、
俺的にはまったく、とゆー感じ。
この本はおすすめしません。
タイトルは「おおっ」と思いますが…。
『そのケータイはXXで』上甲宣之
はいどーーも。
3/18のガレージのMCでこれについて話しましたが、
何人もの人から「読んだ」「読むつもり」の声、聞いてござる。
いやまさにああやって、初期設定を話すだけで、グッと来る作品ですよね。
皆さん、感想はどうでしたか?
『囲碁殺人事件』竹本健治
作者は他に『将棋殺人事件』『トランプ殺人事件』も書いており、
本作と合わせて3部作としています。
しかし、日本人てホント“3部作”って好きですよねぇ!
このシリーズを知ってる人はけっこーマニアだと思うのですが、
ま、知ってる必要も無いかなという感じです。
ただ囲碁界を舞台としたミステリーなんて、こういう変わり種はやはり知識だけでなく読んでおかないと。
『46番目の密室』有栖川有栖
久々に有栖川。
この人は文章自体がうまく、実に好感の持てるユーモア感覚を持っているので、
どんどんページをめくってしまいますね。
ただやっぱ俺は、江神二郎モノが断然好き。
でも『双頭の悪魔』以来まーーったく音沙汰ないので、
今回立て続けに火村モノを読んでみる事にしました。
あれれ、感想なんも書いてないな…。
『マレー鉄道の謎』有栖川有栖
賞とった作品。
マレーシアが舞台で、その雰囲気はよく感じる事が出来て、旅行気分たぁいいですね。
ただタイトルからの印象と違い、列車内の殺人でないです。残念。
俺もそれを期待して手に取ったクチなんですけどね。
さて、本作は密室殺人ものなんですが…、このトリック、
あれれ?
赤川次郎で似たようなやつがあったような。
いいのか新本格。from赤川で。
『乱鴉の島』 有栖川有栖
どこかで年間ベストテン1位獲得、と聞いたので楽しみにしてましたが、、、
うーんでもまぁ及第ですかね。
読み始めて「おお!」「おお!」と盛り上がっていきましたが、
真相が明かされるに従って、トーンダウン。
今、こうやって感想書いていて、この作品はなにも心に残ってない事に気がつきました。
いいとこも悪いとこも。
(中編につづく)