佐藤敏宏 この人に聞く in仙台 2009年6月01日晴れ 櫻井一弥 さん home その01 その02 その03 その02 櫻井:仙台の北4番町に在る教会なんですけども。 佐藤:第二作ですね 櫻井:そうですね。実質的に二作目になります。 佐藤:右肩に十字架が付いているので教会であることが分かる と 櫻井:一応 十字架は付けましたね。 佐藤:この左にある固まりはなんですか 櫻井:ゲートを受けるやつです。 佐藤:入り口には掲示板のような 門のようなものが在るわけですね。 櫻井:はい。でこの辺の小物は全部、こいつ(教会)と同じ形になっていて。これ(教会の造形)は長方形なんですけども、上に斜めに棟が走っているような形になっているんですよ。そいつ(教会本体)と同じような 佐藤:形は3つとも相似形になっているということですね 櫻井:そうです。これは相似ではないですけども。似せているということで。 佐藤:またそれは 中途半端ですね 櫻井:それはね〜これは ちょっと合わせられないですよね。 佐藤:外壁はレンガですか。 櫻井:これはコンクリートです。 佐藤:外壁の凸凹の表情を付けて 櫻井:カラーコンクリートですね。 佐藤:写真には教会の後ろにちょいと コンクリートの建物が見えるの、別建物ですね 櫻井:隣の建物です。これは機能的に形が出てきた処はあるんですけどもね。こちら側(絵右)が低くなっているのは雪をですね、ここ(校庭)の庭に下ろさないようにするっていうのが、あって。 実はここ(右側上部外壁の後ろ)は空いているんですね、中が。そこに雪をボトボト下ろすような形になっていて。同じく反対向きに傾斜しているのは雪を 佐藤:さきほど説明していただいた第一作と印象が 随分違いますね〜。 櫻井:違いますね。 佐藤:なんて言うんでしょうか、こうい形態は、ミニマリズムふう崩しかな、面をひしゃげて構成し建築をつくるかのようにも見える。ずいぶん「物っぽい」ですね。 櫻井:そうですね〜。それ凄く嬉しいです「物っぽい」っていう言葉 佐藤:でも反対から見ると表象として片流れ家型断面に十字架。教会ですと主張している。 櫻井:ああそうですかね。 佐藤:十字架が無いと、一貫しているようも思うかも、だけれども。 櫻井:それちょっとモメたんですよね。 佐藤:物っぽいけど、3つの置き物 構成の仕方が、いまいちか。でも写真の撮り方でそうみえるかもしれないだけだけど。 櫻井:外壁凸凹にしたかったっていうのは、デザイン上どうしてもボコボコニしたかったんですけど。意外と汚れがですね、目立ち難いんですね。これやることでね。最初っから汚れているような感じになるので。カラーコンクリート使ったというのは 佐藤:色付きコンクリート色むらと表面の凸凹が、一体の物として印象を押し出ているわけですね。 櫻井:そうです。コンパネの跡で。作るときには、コンパネの内側に発砲スチロールを、溶剤でスプレーして、フニャフジャって凹むんですけど。それを入れているんですよ。そいつのメ型が出て来る 佐藤:発砲スチロールをコンパネに貼り、表面に溶剤スプレーを掛けると表面が皺状になりメ型が出来る。コンクリーを打設し剥がして、外壁の肌に仕上げていると。ものっぽさはいいけど、ドアのぷっち、デザインに違和感がありますけど、どうでしょうか、丸にみえる、騒々しい 櫻井:丸ではないですよこれは四角、一応この正方形は色んなところで使っている。カラーコンクリートにしたって。予算が無かった。外装とか内装に色々張り物出来ないっていうのがあって。打ちっ放ししかないな〜と、なっていたんですけども。茶色にしてみましょうと提案をしたら、すごく喜んで下さったので。それでいきましょうとなったんですね。 これは入り口入った所なんですけども。こいつは昔、会堂っていうのが、同じ場所に建っていた。そこの瓦なんですね。それをヒックリ返して敷いたんですけど。 佐藤:一応この地の歴史を表象化しようとデザインし消化したと。元々あった建築やこの場所の歴史を持ち込んで、新しい建築と繋がりを持たせたデザインになっていると。 櫻井:そうですね。このステンドグラスも前に使っていた、そのもの。 佐藤:過去の教会の歴史を踏み進み、毎日教会の会堂に通うと 櫻井:そうです。 佐藤:ふふははあはあは 櫻井:何笑っているんですか 佐藤:急にデザイナーに変わったははあははあは 櫻井:はっははあはあははは 佐藤:なるほど。そういう建築へのデザイの取り入れ、扱いかたは良いんじゃないですかね 櫻井:こっちが、幼稚園に入っていく入り口なですけども。幼稚園の方もこういう、中も。 佐藤:建物の中が幼稚園になっているわけですか 櫻井:幼稚園が1階で、2階が会堂で、3階が牧師の住居なんですよ。 佐藤:外観の物ぽさから見比べると扉の取っ手とか、天井のライトとか、デザイ処理されず目立ちすぎている。もっと物と一体に作った方が物っぽく成るのではないでしょうか。 櫻井:ここはね、けっこう上手いこといっているんですよ。打ちっ放しの天井で、最初っから、ボイドで穴だけ開けておいて、そこに裸電球を付けるっていうので。 佐藤:外から見るとミニマリズムを目指したように見るけども、中から見ると色んな要素が出てしまっているじゃないですか 櫻井:いや、ミニマリズム目指してないです。 佐藤:目指してないの?!、物っぽくしているってそいうベクトルだと思うけど 櫻井:ふふぇふふふふ 佐藤:融合、中途半端なところがいいね。 櫻井:ああ 中途半端なのかな〜 佐藤:なんなんでしょうか 櫻井:ミニマリズムではないですよ。僕らが目指しているのは。 佐藤:でもハリボテには目見ぬ 窓や穴の穿つ方、作法は 櫻井:確かに外観は、そうですね。モノリシック感じというか。窓もフレーム見えないようにわざと、 佐藤:そいうデザイン操作は行使してるでしょう。内と外の激しい裏切り、齟齬をデザイする手法はあっていいとは思うけども。そしたら中はカラーコンクリートじゃないほうがいいじゃないですか。外部表象と内部が激しく断絶しているデザイはあってもいいけど、色が同じだから。その辺の説明はこれからの課題というとで 櫻井:う〜んミニマリズムは抵抗が有るんですね。我々の間では 佐藤:ふふふっふふっふ、外観はそう言われても、誤解します。カラーコンクリートとの固まりを穿つ開けた痕跡のように窓や出入りの部位は見えますよ。全部木や大理石をくり抜いたかのような(例えば、ジョンポーソン)デザイン。ミニマリズムの究極建築の姿としてはあっていいと思いますけども。それに近づいていくように見える。 櫻井:うはははは 佐藤:カラーコンクリートの大きな固まりを穿ち、空間をくり抜きだし、十字架を打ち込んで 教会建築としました、というような表象に見える。けども違うんですか? 櫻井:目指している感じではないです 佐藤:従来の建築を通して見えているので、そう印象を持つですけども。じゃどこがどう違うのか、伝えてください。まず内部の床に歴史性を発生させるために 過去に有った屋根瓦を反転させて敷きならべたのが1つと。 櫻井:中はこっち側がは断熱してあるんですよ。だから物が貼ってあるんですね。そこに真っ赤な、サッシを取り付けるっていうカタチにして。 佐藤:外の表情と比較すると内部はかなり賑やかですね 櫻井:そうですね。 佐藤:この1階 幼稚園用途。大きな家具は動くようですね 櫻井:動きます。幼稚園基本的に3クラスなんですけど。3クラスに仕切って、お遊戯会のようなときは家具を移動して1部屋にして使うと 佐藤:なるほど。最初の住宅の説明の4つの領域の可変性とは関係があるんですか 櫻井:ここはフリキシビリティーが大きい、無いですね。 佐藤:最初の建築と全く関係ない!? 櫻井:全く関係ない 佐藤:ふふふふふふっふ。困った人達だな〜。 櫻井:で、あれはもう、O博士の家って完全にプランの建築じゃないですか。これはですね〜 佐藤:やろうと思ったら、4つに領域の生成はここでも出来るじゃないですか。建築は形式で自立しているのは自明なんだから。用途は、教会っていう実利性は後で。形式に加えられているだけだから。 櫻井:いや、プランの建築ではないんですよ。これは 佐藤:その辺のところが曖昧だね 櫻井:そうそう、それはある 佐藤:三人で設計やると、そうふうになり易い、またはなっちゃうなのかね 櫻井:どうなんですかね 佐藤:集合したときに 計画意図が分断されたような様を、意図的に作る手法はありですが、それでも構わないと考えてますが、偶然そうなってしまうのは問題 櫻井:いや偶然というか、同じものにしようという意識が全く無くって、スタイル 佐藤:違うものにしようとも思ってないわけですか? 櫻井:それは多少思っていたかもしれない。 佐藤:なんなんだ〜はははあはは 櫻井:なんて言うですかね。3人でやっていて担当が誰かがっつり入るからこうなるじゃないんでよね。全然。全て3人の総意でこうなっていく、感じはあるんですよね。そこはスタイルは定まっていないんですけどもね。 佐藤:問題があると思うな〜。ここは2階の会堂ですか 櫻井:2階の会堂はこうなっています。 棟は斜めにぶーあーっと走っていって 佐藤:棟の ねじり。外部のものっぽさと、内部の物っぽさは齟齬がすくなく見える 櫻井:2階の会堂はそうですね。 佐藤:棟の捻りかた一つで空間の質を変容させている、こういうのは面白いと思うし手法はミニマリズム的既視感がある。内部と外部の齟齬がないな〜と思う、いいんじゃないですか 櫻井:2階はそういう意味ででは一番外観に合わせた感じはありますね 佐藤:家具は違い 櫻井:こいつは昔から 佐藤:瓦のようなデザイ手法で、使い込んでいた家具を入れたわけだ 櫻井:はい。捨てるとか言っているので、いやいやもったいない、使いましょうと言って。このへんのやつも全部そうなんですよね。昔のやつをちょっと塗り直した。 佐藤:天井から吊ってある照明器具の数は少ないように感じる、もっとビッシリあった方が、写真写りは良さそうだ 櫻井:写真写りの話ですか。 佐藤:数がすくないし、棟がズラしてあることで象徴性が消されているので、照明器具の数ぐらいで共振させるのはありと思ったりしたもんです。窓の開け方は、ランダム状に 見えますが 象徴性が崩れていくる、ゆがめたのかな 櫻井:ぜんぜん適当じゃないですけどもね。相当綿密に練って 佐藤:どのような綿密の道ですか 櫻井:ここは光をどういゆふうに入れるかという、この辺は風の通り道というか 佐藤:窓の機能性について綿密ね、ああそういうことか。 櫻井:いやデザイ的にもそうですよ。そうとういろいろスタディーして 佐藤:ふふふふふ 櫻井:相当スタディーをした結果として、最終的にはバランスで決まっているんですけど。 佐藤:わからない。 正面これは穴が開いているんですか 櫻井:中にお風呂が有るんですよ 佐藤:風呂!ああ洗礼するためのものか ああああ 櫻井:「浸礼」っていうんですけど、ジャボンと入る。それをやる部屋です 佐藤:そうかそうか 開口の奧に水が張ってあって洗礼するときに裸になってドボーンと入る 櫻井:はははは、ガウンみたいなもの着るんですけどね 佐藤:なるほど、そういう宗派なんだ 櫻井:基本的には、セオリーで行くと、真ん中に置くっていうのがセオリーにはなるんですけど。今回の奴はカタチがこうなっているので、ちょっと左向きにしましょうと。 佐藤:棟を斜めに掛けているから質の意味が歪む、そこだけバロックしちゃっているわけだな。 櫻井:そうですね、こっちにこう視線を向けるっていうので。これはやらして頂いています。 佐藤:移行期の建築家だと思うよね、そういう手法はね。一つのものを目指さないで、ズラしつつ新たな何かを求めて作りだしていこうという 初期に歪ませる 櫻井:それは正しい 佐藤:悪あがきとも言うこともできるけど、 櫻井:そういう事なのか、なるほど。 佐藤:悪あがきで終わるのか 新しい建築の道を拓いているのか分からないんだけど 櫻井:ふはあはははは 佐藤:ただ何か模索をして、出来た姿には見える 櫻井:何か求めているって感じはあるかもしれない 佐藤:ひねくれてるってことかもしれないけど、新しい何かを生み出す、大きな物語じゃないけど、何か違ったものを手探りで作ろうとしている。自分たちではコントロール出来ない要素を入れていき、尚かつ事実とも融合させ、またズラし体験したことのない空間というか、建築の形式を作ろうと努力。その姿勢や考え方、意志はこれでいいんじゃないでしょか。1階は機能的に作り、難かったというのはありますよね。 櫻井:そうですね 佐藤:経済的にも建物のボリューム上も、2階の会堂でなんとか上手く味が出せたんじゃないですか。 櫻井:2階はそうなんですよね、やりたいようにやらしていただいた感じですね。この絵は 佐藤:見返りでしょう、棟が斜めにずれて配置されているから、振り返ったときと正面向いたときの同じ空間が 劇的に変わるような仕掛け。 櫻井:はい 佐藤:、この場に雪が溜まると 櫻井:テラスになっていてですね 佐藤:なるほど。 櫻井:これは3階なんですけども 佐藤:窓はすべて正方形にしているんですね 櫻井:そうですね 佐藤:3階は住宅ですね 櫻井:これもめちゃくちゃ天井高いです 佐藤:雪が落ちてくるテラスの奧にあるわけだね 櫻井:プランでいうとですね 佐藤:写真で比較すると住宅の方が象徴的なかたちですね ねじってないいからねふふふふふ整っているからね 櫻井:確かにね。 佐藤:それらの矛盾は面白さのような、移行期の姿の特徴的な姿が出ているような気がする 櫻井:それは面白い指摘ですね 佐藤:写真を見て話しているので、写真の撮り方によて話の内容が変わってしまうんだけどもね。 この対話も一つのあり方で、いいわけだからね 櫻井:うんうん。1階はまあ エントランス入って、こちらから2階に上がって 佐藤:瓦敷いた廊下はこの1階の部分ですね 櫻井:はい。園長は基本的にはこちらの家から入ってきて。この動線の分離ってやっぱり、教会と 佐藤:そこの部分になると二世帯一通路みたいな状況があるっていうとですよね 櫻井:はい 佐藤:左下の領域が庭になって。ああやっぱりずれているんだ。敷地を四つの領域に切ってある、この置物が中心で、右下の領域の住宅の固まりをズラして バロックさせている。最初の住宅と同じ形式じゃないですか、繋がっているじゃないですか。ほーら 櫻井:ああ そうか〜!! 佐藤:そっくりじゃないですか 敷地の廻りの集合形態 最初の敷地4分割した通路と。自分で気が付いてないだけじゃないか〜あ ははははは 共に大笑う 1作目であった、北西の物置や洗面の閉じた領域の固まりが、物っぽく成長した。その内部にもう一つ歪んだ会堂などの空間がねじ込まれた形式になっているんですよ。物置の内部から別な空間の形式が発芽して成長したんですよ。発芽内空間に、移行期の矛盾した歪みのある空間が2重に入り込んでいるんですよ。フラクタル分割するかのように入り込んでいるんですよ、そういうふうに見えるますね。 櫻井:それ面白い指摘ですね〜 佐藤: 共に大笑いはははあはははは それほど最初の住宅の形式と矛盾なく連なって見てきました。話していたらね はははは この敷地も4つの領域に分かれているじゃないですか。 櫻井:なるほどね〜 佐藤:通路は十字状に出来ているし、自分たちが気付かずにいた。無意識でそうしているんですよ 櫻井:素晴らしい 共に はあははあはははは 櫻井:なんて言うか、自分たちの言葉で喋ることが、いま一巧く出来てないな〜とよく思うんですけど。ちょっと開き直ってね 佐藤:それは他者を呼び込まないからですよ、身内や自己内だけで 完結してしまっているからでしょうよ。人間の存在の特性と歴史性に逆らっているからですよ 櫻井:ああそうかもしれない 佐藤:僕は関西の建築家の人達と付き合いがとても長かった。彼らは私塾や勉強会や見学会を度々やっていた。 例えば安藤さん、独学とか言っているけども、西沢文隆や渡辺豊和さんに見せて、安藤さんの建築を西沢さんに語ってもらう、そのような会合は盛んに行われていたんですよ。 他者の脳味噌の活動と自分の脳味噌の活動を融合させて 全体が変容して行く。そいう連なりが有るんですよ。そのような努力が足らないかもしれない。コンペになると、提出した作品持ち寄り大討論会をしてました。アジられっぱなしだったけど面白かった 櫻井:それはありますね 佐藤:嫌が応でも、建築は社会化してしまうんだから そういう内向だけの形状のベクトルは 無効です。害です 櫻井:だから今始めているわけですよ、いろいろ言い合う会を その03へ |