第一章 第三話     トイレの怪  (投稿者:大阪府 S.T.さん)

 私がワンルームマンションで一人暮らしをしていた時の話です。
 夜中、一人、退屈な時間を過ごしておりましたが、時間は2時を廻っているにも関わらず、
 一向に眠くなりません。 なんとなく、パソコンの電源を入れ、インターネットで色々な
 ホームページを見て廻っていたのですが、いつの間にか、恐怖体験集がメインのサイトに
 辿り着き、見ていると「恐怖はあなたの身近な所で・・・」という文句を見つけ、
 読んでいましたが、急に腹痛が起こり、トイレに駆け込みました。
 汚い話になりますが、私はトイレで雑誌を見るという癖があり、その時も、とっさに手近に
 あった雑誌を持って入って、パラパラ、捲っていると、トイレの前を誰かが、通ったような
 気がしたのです。 ここのトイレのドアは透かし窓のようになっていて斜めに板が入っていて、
 中から外が見え、外からも、屈んで下から見上げれば、中の様子が見れるドアなんです。 
 その窓の前を誰かが通ったような気がしたのですが、一人暮らしで他に誰もいるはずもなく、
 ドアの鍵も2重ロックしています。
 私は見間違いかなと思い、じっと、透かし窓を見ていたのですが、確かに裸足の細い足が
 すっーと透かし窓の前を音もなく、横切ったのです。
 誰かいる・・・と、生唾を飲み込み、ひたすら、透かし窓を見ていると裸足の足はトイレの前を
 行ったり来たりしているのです。
 私は、すぐに生きた人間の足ではないと直感し、恐ろしさで生きた心地がせず、心の中で必死に
 お経を唱え、早く消えてくれる事を望みました。 お経の効果か裸足の足はいなくなり、
 ほっと胸を撫で下ろし、トイレから出ようとした時、もう一度、下の透かし窓を見たら、
 顔面蒼白の老婆が中を覗き込んでいるのです。 目があった瞬間、その老婆は、ニヤリと笑い、
 すぅーと消えていきましたが、私は、驚きの余り、声も出ず、しばし、呆然としていました。

 暫くし、なんとか、落ち着きを取り戻してきて、トイレのドアをそぉーと、開けると、そこには、
 誰もいません。 ふと、「恐怖はあなたの身近な所で・・・」という言葉が脳裏を横切りました。
 あれから、再度、あのホームページを探してはいるのですが、どうやっても、見つける事は
 できません・・・。 履歴にも残っていないのです・・・。
 今も探しておりますが・・・あのサイトは、なんだったのでしょうか・・・
 あの老婆もあれっきり、見ていません。