第一章 第四話 事故現場に現れた亡霊 (投稿者:大阪府 S.T.さん)

 夜中、一人で次の日に会議で使う資料を作成していました。
 昼間も慌ただしく、仕事をこなし、疲れているせいか、仕事に身が入らず、気分転換に
 コーヒーを作ろうと台所へと行ったのですが、あいにく、砂糖を切らしていたので、
 仕方なく、缶コーヒーでも、買いに行く事にしたのです。
 2月という事もあり、冬の真夜中、外に買い物に行くというのは、少し勇気がいりました。
 思っていたよりも外は寒く、すぐに頬が冷たくなってきて、眠気もどこかに吹き飛んでしまう程です。
 家から少し歩いた所に、自販機は、あったのですが、なんとなく、
 2〜3日前に新しくできたコンビニでも覗いてみようと、歩いていたのです。
 途中、道路の脇の方に立っている看板が目に入りました。
 (◯月◯日◯時頃、この場所で車と人の接触事故がありました。
 目撃者の方は下記警察署まで御連絡下さい。)
 「ここで事故があったのか・・・。」と思った瞬間、「うぅ〜」と低くて
 苦しそうな男性の声が聞こえてきました。
 後ろを見ると、服がボロボロに引きちぎれて、顔も何かにこすれたかのように、肌の皮が一枚、
 はがれてしまって、生の肉が見えています。 充血した眼球、紫色の唇の中から、見えているのは、
 ちぎれかけて血の滴った舌。 普通の人間の姿ではありませんでした。 恐怖で顔が引き攣り、
 体の自由がきかない程、硬直していました。 そこにいた男性は、どこか悲し気な
 雰囲気すら感じられました。 何か言いたげな感じすらしていたのですが、暫くすると、
 消えていきました。 体の自由が効くようになると、私は無我夢中で家へと走り帰りました。
 その2、3日後に聞いた話ですが、ひき逃げされた男性は、無惨な事に車体の一部に引っ掛けられ、
 数十メートルも引き摺られて、苦しみもがきながら亡くなっていったそうです。
 逃げた車は白の乗用車しか、分からないということでした。
 あの男性は、私に何か言いたかったのではないでしょうか?
 今となっては、闇の中ですが・・・。