第二章 第三話   魔の心霊スポット (投稿者:静岡県 H.I.さん)

 2年前、コンビニでバイトしていた頃のこと、同じバイト先の女の子と仲良くなり、
 二人きりでドライブへ行ったのです。 彼女とは別に付き合っていたわけではなかったのですが、
 人なつっこくて、明るい性格に好意を持っていました。
 そんな彼女が雑誌を私に見せ、「ここって、ほんとに出そうだね!」と言うのです。 
 雑誌を見てみると、「心霊スポット特集」と書かれた記事に、いかにも出そうな古惚けたトンネルの
 写真が掲載されていました。 彼女は私に、「一緒に行ってみない?」と怪しく微笑むのです。
 私は彼女の顔を見ると、断わりきれなくて・・・。
 夕方、バイトを終えてから車を走らせたのですが、彼女が無邪気にはしゃいでいる顔を見ると、
 乗り気でなかった私もなんだか、彼女といるだけで楽しく思え、彼女とのドライブを
 楽しむ事にしました。 山へ入る頃には、すっかり日も沈み暗闇の中、ライトを照らしながら、
 奥へ奥へと進んでいくと、やがて、そのトンネルが見えてきました。 トンネルの側で車を止め、
 私は彼女に、「着いたよ。」と言うと、怖くなったのか、今まではしゃいでいた彼女は
 黙ったまま、じっとトンネルを見つめています。 私は、幽霊なんて全く、
 信じていなかったのですが、さすがに心霊スポットと言われると薄気味悪く、
 「さっ、行こうか?」と、彼女を促すと彼女は「ここでライトを消して、クラクション、2回、
 鳴らすんだよね?」と私の方を向いて、そんな怖い事を言うのです。
 「幽霊なんて、いるわけないよ。 さぁ、行こうか?」と強引に車を出そうとしたのですが彼女は、
 私の腕を掴み、「ね、やってみようよ! 怖い?」。
 私は彼女に呆れて仕方なく言うとおりにトンネルの入り口まで行きライトを消すと、
 クラクションを2回、大きく鳴らしました・・・。
 「何もないじゃん。 もう、気が済んだ? 行くよ。」と、アクセルを踏もうとして、
 私はぎょっとなりました。 トンネルの出口に誰か、立っているのです・・・。 
 その人陰は、ヒールでも履いているのか、カツッーン、カツッーンとトンネル内に響かせながら、
 こちらへ、ゆっくりと歩いてきます。 私は、「そんな、バカな!」と目を疑いましたが、
 錯覚などではありません。 体の震えが止まらず、心臓の音がやけに大きく聞こえ、
 恐怖を堪えきれずに、私は震える手でギアチェンジし、急いで、車をバックさせ、
 勢いでUターンさせて、猛スピードで、山を降りていたのですが、彼女は気を失っているのか、
 俯いたまま、ピクリとも動きません。 私は心配になり、街灯の下に停車させ、
 彼女を揺さぶりながら、呼ぶのですが、何の反応もありません。 その時、車の後部に気配を感じ、
 ふと振り返ってみると、女性が髪を振り乱して、後ろのガラスに張り付いていたのです。 
 私は、パニックになり、車を一気に走らせ、後ろを見る余裕もなく、山を降りて行きました。
 なんとか、交通量の多い国道に入り、街に戻ってきてから、もう一度、車を止め、
 彼女を揺り動かしながら、話し掛けました。
 すると、眠っていたかのように、伸びをしながら、
 「ここは? トンネル、着いた?」と一言・・・何も覚えていないのか・・・