その日は朝から雨が降っており、あいにくの空模様だったのですが、以前より、
紅葉を見に行く予定を立てていた私達夫婦は、他にする事もなく、とりあえず、
行ってから考えようと、安易な気持ちで出掛ける事にしたのです。
紅葉で有名な観光地であっても、雨のせいか、人も疎らで、ひっそりとしていましたが、
幾分か雨も小降りになっており、私達は散歩がてら、傘をさして歩く事にしました。
私達は紅葉を見ながら、奥へ奥へと進んでいき、木ばかり見ていたせいか、気が付くと、
すっかり、道に迷って、どこをどう帰っていいのか、分からず、途方に暮れていました。
道を尋ねたくても、周りには、人が一人もいなく、私達は勘を頼りに戻るのですが、
歩けば歩く程、深みにはまっていくような気がしてなりません。
私は妻に心配をかけたくなく、平静を装っていましたが、内心、不安で仕方なかったのです。
そんな時、子供達のはしゃぎ声が聞こえてきて、人がいる事にほっとして、
声の出所を探したのですが、どこにも、子供らしい人陰はないのです。
鳥の声と聞き間違ったのか、半ば、諦めて、歩いていると、木の間から見える下の方の川で、
子供達は水遊びをしていました。 子供達を見つけると私達は枝に邪魔されながらも、
細い道を下って、なんとか、川に降りていったのですが、今まで、子供が遊んでいたはずなのに、
どこにもいないのです。 私は諦めきれず、川伝いを歩いて行ったのですが、子供達の姿は
見つからず、子供達が遊んでいた痕跡すら、見つける事ができませんでした。
私が困惑していると、妻が顔を強ばらせ、「ねぇ、あなた。 不思議に思わない?
今、11月よね? 今時分、いくらなんでも、あんな格好で川で遊ばないよ。」と言うのです。
そういえば、11月半ばで雨も降っており、肌寒い中を海水パンツだけで、川で水遊びなんて、
冷静になって、考えてみると、確かに、異常な話です。
私達は怖くなり、山道に戻ろうとした瞬間、後ろから、声が聞こえてきました・・・
「一緒に遊ぼうよ!」。
振り返ると子供が4人、青白い顔でこちらを見ています。 明らかに生気のない子供達なのです。
私は怖くなり妻の手を取り、その場から逃げ、どこをどう走ったのか元の駐車場に戻っていました。
辺りはもう、夕暮れで雨はすっかり、上がっており、車に乗って、二人とも、ほっと、一安心して
いました。 私は無言のまま、エンジンを掛けようとしましたが、掛かりません。
ふと、ルームミラーを見ると先程の子供達が後部座席に座っているのです。
私は反射的に後ろを振り向きました、すると、子供達は笑みを浮かべ、
「ねぇ、一緒に遊ぼうよ!!」と、こちらをじっと、見つめていたのです・・・