第三章 第三話     川辺の恐怖  (投稿者:奈良県 K.T.さん)

 大学2年の時、サークルの仲間達と川へキャンプに行きました。
 私はキャンプが始めてという事もあり、とても楽しみにしていたのですが
 まさか、あんな、恐ろしい体験をするなんて・・・。

 メンバーは男4人に女3人で、私以外は、ほとんど、キャンプの経験者で皆、テントを張ったり、
 御飯を炊いたりと手際良くすませていきます。 この場所は穴場で、車を置いてある場所から
 歩いて20分と不便なのですが、何より、人がいないので、気を使う必要なんて、全くなく、
 私達にとっては小さな楽園のようでした。 御飯が炊け、少し遅めの昼食をとると、
 皆、水着に着替え、川の中へ入ったり、釣りをしたりと、自由に過ごしていました。 
 私は川に入って、泳いだりしていたのですが、前日、雨が降っていたせいか、水の流れも早く、
 川幅が狭い割には身長よりも深い所もあったので流されたりすると、危ないなと浅瀬で女の子と
 水を掛け合ったりして遊んでいたのです。 ふと、上流の方を見ると、いつの間にか、若くて
 すらっとした女性が、立っていて、こちらをじっと、見ているのです。
 「他に人もいるようだな・・・」と思いながら、気にもしていませんでした。 夕方からは、
 皆でバーベキューをしたりと、楽しい時間を満喫していましたが、夜も更けてきて、それぞれ、
 男性と女性に別れてテントで眠る事にしました。 どれくらい時間が立ったのか、カサッカサッと
 いう足音に目を覚まし、何の音だろうと、気になり、体を起こそうとしたのですが、
 動かないのです。 カサッカサッという音は、テントの外から聞こえているようなのですが、
 足下から聞こえてきたり、頭の上から聞こえてきたりと、テントの周りを回っているようなのです。
 私は得体の知れないものに、怖くなり、体全体から、汗が吹き出しているのが、分かりました。 
 私はテントの中に異様な気配を感じ、ふと視線を友達の方に向けると、昼間、見た女性が
 恐ろしい形相で友達の首を締めているのです。 私は、恐ろしくなり、必死に声を出そうと
 するのですが、声も出ません。 友達が苦しそうにしているのを見ると、何とかしなければと
 思いながらも、どうする事も出来ないでいました。 と、その時、外から女の子の声が
 聞こえてきたと思うと、すぅーと女性は消え、私も金縛りが解け、すぐに、友達の様子を見に
 行きました。 友達は息を切らせながら、青い顔をしています。 私は怖くて、どうしようもなく、
 皆を起こし、今、起こった事を説明しましたが、何も知らず眠っていた友人は信じもせず、
 悪い冗談だと怒りました。 私は首を締められていた友人の首を指差し、「この締められた後、
 見ろよ!!」と必死で説得しました。 やっと、事態を把握したのか、皆、黙っています。
 その時、テントの周りをカサッカサッと歩く足音がまた、聞こえてきて、皆、
 ガタガタ、震え・・・その音は朝まで続き私達は一睡も出来ず、ただ、恐怖に震えながら、
 朝になるのをひたすら待つ事しか出来なかったのです。
 あの女性は、いったい、何だったのか・・・今でも、わかりません。
 どうして、私達の前に現れたのか・・・。 あの時、女の子がトイレに外に出なければ、
 どうなっていたのでしょうか・・・。