第五章 第三話    自殺マンション (投稿者:大阪府 S.T.さん)

 これは私が小学生の頃に聞いた話ですが、妙にインパクトが強く、今もはっきりと
 覚えています。 ただ、嘘か本当かは分かりません。
 読んでみて、あなた自身が判断して下さい。

 とある、マンションの8階の802号室で奇妙な事件が相次いでいたのです。
 それは、ここ数年間に入居した全ての人が1週間以内に自殺しているのです。
 ある者は飛びおり自殺をし、また、ある者は手首を切り・・・自殺の仕方は、
 さまざまなのですが、その人達に遺書はなく、肉身、知人に聞いても、
 動機は全くの謎だったのです。
 警察は不振に思い、調査をするために、ある婦警を入居させたのです。
 その婦警は、部屋に入り、隅々まで調べましたが別に変わったところもなく、
 部屋も綺麗で居心地もよく、自殺をするなんて考えられなかったのです。
 とりあえず、お風呂に入り、髪を拭きながら、窓の外を見ると調度、向かいの
 マンションに住んでいる男性が窓の所に立っていました。
 距離は数十メートルといったところでしょうか、そんなに離れている
 わけではなく、男性の顔もはっきりと見えます。 こちらを見て
 いるのかなと気にはなったのですが、私はそのまま、カーテンを閉め、
 その日は眠りにつきました。
 次の日、仕事が終わり、部屋に戻って、食事を済ませ、お風呂に入り、
 ゆっくりとくつろいでいましたがそろそろ、寝る時間になり、私は、
 なんとなく、カーテンを開け、外を見たのです。 すると、昨日の
 男性もまた、窓のところに立っているのです。 視線はこちらを見ている
 ようなのですが、一向に動く気配もなく、私を見ているのか気になって、
 しょうがなく、男性に向かって手を振ってみました。
 すると男性も、すぐに手を振ってくれましたが、私が手を振るのを、
 止めると男性もまた、手を止めます。
 「あ、私のマネをしているのかなぁ?」と思い、ためしに、もう一度、
 手を振ってみると、男性もまた、手を振ります。 私はなんだか、
 楽しくなって、右手を上げたり、左手を横にしたりと、色々して
 みたのですが、その男性は、まるで鏡でも見ているかのように、私が、
 どんなポーズをとっても、ほぼ同時にマネするのです・・・。

 私がこの部屋に住む期間は2週間と言われていたので、生活に必要な
 ものしか、持ってきておらず、私にとっては、その男性は絶好の
 遊び相手になり、私は仕事の暇な時は、「今日は絶対に、あの男性に
 マネの出来ないポーズを作ってやろう!」と考えるようになったのです。
 そんな、ある日の夜、「これなら、絶対にマネ、出来ない!」と
 複雑なポーズを考え、いつものように、夜、窓の所に立ったのです。
 男性もまた、窓の所に立っています。 私は最初、右手を上げたりして
 いたのですが、除所にスピードを上げ、今日、考えた複雑なポーズを
 始めたのですが、その男性は完璧に私のマネをするのです・・・。
 今日、初めて見せるものなのに・・・私は信じられず、ハッとなりました。
 男性を、よく見てみると、私が動作する前に男性はその動作をして
 いるのです。 「もしかして、マネをしているのは・・・私?
 操られてる?」とそう思った時には遅く、もう手は止まりません。
 男性はニヤリと笑い、ゆっくりと歩き、机の上に置いてある拳銃を
 取ったのです。 私も自分の意志とは無関係に拳銃を手に取って
 しまいました。 その男性は頭に拳銃を当て、引き金を引きました・・・。

 警察が捜査したところ、机の上に彼女がつけていた日記を発見しました。
 それは、ここに来てからの事が明確に細かく、書かれており、その日記を
 見ていた刑事が、窓の外を見て、唖然となりました。
 日記に書かれているはずのマンションはどこにもないのです・・・。