第六章 第一話 十和田湖に現れた女性の霊 (投稿者:東京都 S.S.さん)

 私を含め友人3人で青森県の十和田湖に旅行へ行った時の話です。
 その日は青空が広がっていて、湖はとても美しく、空気がおいしく、
 都会で生活している私にとっては、見るもの全てが新鮮でした。
 「ほんと、綺麗なとこだよねぇ〜」と私は十和田湖の景色を見て、
 感動していました。 ふと、友達の琴美(仮名)を見るとじーっと
 湖面の一点を見つめています。 「どうしたの?」と私は琴美に聞くと、
 「え? ううん。 何でもないよ。」と言って、どことなく寂し気に
 微笑むのです。 「なぁに? 幽霊でも見えるぅ?」と私は琴美を
 からかいながら、言うと、琴美は真面目な顔で「うん。 あそこの
 湖面・・・びしょ濡れの女の人がいるの・・・ そろそろ、行った方が
 いいよ。」と言うのです。 琴美は霊感が強く、私達に見えないものが、
 日常的に見えるらしいのです。 私達は琴美の言うことを素直に聞き、
 予約を入れてある旅館に向かう事にしたのです。
 旅館に着いて、部屋に通され、暫く、寛いでいたのですが、私は、
 琴美がさっきから、黙っている事に気付き、「どうしたの?」と声を
 掛けるると、「連れてきたみたいなの・・・」と言うのです。
 「え? 何が?」と聞き返すと、「さっきのびしょ濡れの女の人、
 由香(仮名)の後ろにいるのよね。 連れて帰ってきたみたい・・・」
 「私の後ろ?」、私は恐る恐る、後ろを振り返ったのですが、
 私には、何も見えません。 ただ、怖くなって泣きそうでいると、
 琴美は「今日はもう遅いから明日、神社に行って、御祓いしてもらお。
 一晩くらい、平気だからさ。 ね?」と慰められ、どうにか、落ちつきを
 取り戻しましたが、その日は私を真ん中にして、電気を付けたまま、
 眠る事にしました。 いつの間に眠ってしまったのか、夜中、ふと、
 目が覚めると電気が消えています。 私は急に怖くなり、電気を
 つけようと体を起こそうとしたのですが、体が動きません・・・声も
 出ないのです。 辺りはシーンと静まり帰っていて、心臓の音だけが、
 異常に大きく聞こえてきました。 私は怖くて、ひたすら目を閉じて
 いましたが、急に胸の上が重くなったかと思うと首筋に手が伸びてきている
 ような感触がします。 その手はいきなり、首をギュと締めて、
 私は苦しくて苦しくて、目を開けると、びしょ濡れの青白い顔の女性が
 すごい形相で私の首を締めているのです。 私は、「もう駄目・・・琴美
 ・・・助けて・・・」と心の中で言った途端、びしょ濡れの女性は、
 すぅーと消えていき、電気もつき明るくなりました。 私は気力を振り絞り、
 起き上がって、ふと横を見ると、琴美が、手を合わせて、呪文のようなものを
 唱えていました・・・。

 次の日、神社で御祓いをしてもらい、それ以後は見ていませんが・・・
 あの日の恐怖は、今もはっきり、覚えています。