第六章 第二話 同窓会に来た住職の霊 (投稿者:大阪府 T.U.さん)

 私達、家族4人で父の同窓会を兼ねて、夫の田舎である和歌山県に
 旅行に行った時の話です。 夫の実家は古くから旅館をしており、
 同窓会をするには、もってこいの環境でした。
 夫は久しぶりの実家と言う事もあり、酒も進み、御機嫌のようでしたが、
 夜も11時を回り、私達は先に休ませてもらう事にし、部屋に戻りました。
 どれだけ時間が立ったのか分かりませんが、お経らしき声で目が覚めました。
 その声は力強く、はっきりと耳に聞こえてくるのですが、声の出所は
 全く、見当もつかなかったのです。 私は気味が悪くなり、夫を
 探したのですが、まだ戻ってきてはいない様子で、呼びに行こうと体を
 起こそうとした時、ピシッという音がして、全く、体が動かなくなりました。
 私は恐怖の余り、ガタガタ震え、目を閉じていましたが、ドアの開く気配がし、
 夫だと思い、目を開けると、そこには、夫ではなく、見た事もない住職らしき
 人が立って、ひたすら、力強い声でお経を唱えています。 ただ、表情は、
 どことなく悲し気なのです。 その住職は、お経を唱えながら、私達の布団の
 周りを何回か周って、また、ピシッという音がしたかと思うと、住職は
 壁の中へすぅーと消えて行きました。
 体も動くように、起き上がって、何が何だか分からず、とりあえず、夫を
 呼びに行きましたが、夫は、酔っていて、全く、取り合ってもらえません。
 仕方なく、子供達を放っておく事もできず、部屋に戻り、我慢をして、
 布団を頭からかぶり、眠る事にしました。
 どうにか、朝を迎えましたが、昨晩の事が気にかかり、気の重い目覚めです。
 でも、今日は同窓会の準備で、そんな事も言ってられず、
 朝からバタバタしていて、いつの間にか、昨晩の事はすっかり、忘れていました。
 夕方くらいから、夫の友達が、ゾロゾロ、集まるようになり、私は、料理等を
 運んでいたのですが、調度、玄関の前を通った時、ガラガラッと開いて、
 二人が「こんにちわぁ〜」と入ってきたのですが、その後ろに、昨晩の住職が
 立っていたのです・・・。 私は驚きの余り、固まっていたのですが、
 夫が2人に気付き、話し掛けてきたので、私は、その場から逃げ出す事に
 したのです。 
 同窓会も始まり、私はお酌をしておりましたが、ある遺影に気付きました。
 昨晩の住職なのです。 私は、「この方は?」と聞くと、「ああ、一週間前に
 交通事故で亡くなったんだ。 同窓会、楽しみにしてたのに、残念な話だよ。」