1 桑名駅・八間通

桑名駅前ロータリー
現在の桑名駅は仮駅舎のため、駅舎らしい
建物は見られません

 関西鉄道(現JR関西線)の桑名駅は明治27年(1894)に仮駅として馬道付近に開業しましたが、翌明治28年に現在地に移転しました。当時は全く田の中の新駅でした。

 大正8年(1929)養老鉄道(現近鉄養老線)が、昭和4年には伊勢電鉄(現近鉄名古屋線)が乗り入れました。また大正14年(1925)には駅と町を結ぶ幹線道路が完成しています。この道路は道幅が8間(約14.4m)あったため、八間通りと呼ばれました。そしてこの道路には昭和2年(1927)に市街地までの約1qの区間に市電(桑名電気軌道)が開通し、日本一短い距離の市電として親しまれていました。しかし戦局急を告げる昭和19年鉄材供出で撤去されてしまいました。

 戦災で駅舎は焼失し大きな被害を受けました。昭和50年、駅前再開発事業により駅舎は元の場所よりやや南に移転、八間通りの正面は駐輪場となってしまいました。しかし八間通りは近年、電線の地中化と街路樹の育成により、桑名のシンボルロードとして、また九華公園や六華苑などの史跡へ向かう観光道路として、美しいたたずまいを持った街に変貌しつつあります。


昭和10年頃の桑名駅前
(ふるさとの思い出写真集 明治大正昭和 桑名 国書刊行会より)
正面が桑名駅、市電の姿が見える中原中也が通ったのはちょうどこの頃です
中原中也詩碑
昭和10年8月、中也が山口県から妻子を連れて上京中、東海道線が風水害で不通になり関西線回りとなりました。途中停車の際に「桑名の夜は暗かった 蛙がコロコロ鳴いていた ・・・」と当時の桑名駅の様子を詠みました。この碑は駅開業100周年の平成6年に建てられました。(下り1番ホームの名古屋寄りにあります)
現在の桑名駅前
上の古写真と同じ角度から撮影。駅舎のあった場所は駐輪場に
なっています
八間通
電線の地中化、街路樹の育成など桑名のシンボルロードとして景観に配慮した整備がされてきています