婚の日の大き花丸初暦
一月の婚や仕付けの糸を抜く
帰郷して子は子の顔に三が日

ときめきをひとつ残して冬薔薇
生きていくこの身一つや息白し
さみしさの凍星一つ拾ひけり
紺碧の空ひきよせて大雪像
昨日今日厨明るき四温晴

恋の矢のバレンタインデー的いくつ
日の色の雫しきりや春の声
桃の花いのちいとしむ齢かな
少年の銀輪光り三月来
風不死岳を映して水のぬるみけり
客一人亭主一人や利休の忌
佐保姫の手鏡ゆれて石狩野
境内の鈴にも降れり花の雨

火の色に夕日落ち行く春岬
立待の岬に揺るる草若葉
百万の薔薇の約束ゆるぎなし
少年の日を吹きやまず草の笛
浜茄子やこの一色を風に抱き
盤渓の風の抜け道花さびた
チューリップツリーの空へ命張る

絵団扇の提灯ともる夕ごころ
掌につつむ小さき山鉾囃子の音

友逝きて二年の月日青林檎
立ち止まる風むらさきに花菖蒲
藍浴衣昭和の風を懐かしむ
綿すげの風駈けのぼる大雪山
夏雲の群れてどっかと十勝岳
蜘蛛の子に空を褥のハンモック
新涼や厨につかふ水の音
秋蝉となりて一日を鳴きとほす
生涯に志あり鳥渡る
一庵のもてなしにけふ貴船菊
鳥渡る声の残りし峡の空
もう声の届かぬ母へ鳥渡る
秋茜空のわたつみほしいまま
団栗の温もりひとつ愛しめり
愛されて子はすくすくと菊日和
星月夜生国遠くなるばかり
宴果て名月ひとつ残りけり
秋寒し別れを惜しむものばかり
紅をふたつに裁てり秋の滝
深秋の一山迫るロープウェイ
胸中も濡らして戻る雪しぐれ
初恋の七色揃へ冬の虹
冬服を重ねて齢あたたむる
結論は先に延ばして鮟鱇鍋
ポインセチアいのちの赤を燃やしけり
約束の星吊しけりクリスマス
熱燗や言葉しだいにほぐれゆく

あきこの俳句
2002年 1月〜
NO:2